善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

国立劇場 梅雨小袖昔八丈

国立劇場3月歌舞伎公演に行く。
「増補忠臣蔵(ぞうほちゅうしんぐら)」と「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)」の2本立て。
もちろんお目当ては菊之助が髪結新三を演じる「梅雨小袖昔八丈」。
なかなかいい題名。
まだ3月になったばかりだが、梅雨のころ、というか初鰹が出回るころの江戸が舞台だ。
劇場ロビーでもらったサイン入りブロマイド(ただしサインは印刷されたもの) 
イメージ 1

河竹黙阿弥作の世話物で、主人公の名前をから通称「髪結新三」と呼ばれている。
粋でいなせで“江戸前”の小悪党が主人公。五代目菊五郎の代表作の1つとなり、6代目、当代の菊五郎へと継承され、当代の菊五郎の監修のもと、菊之助が初役で新三を勤める。
となれば見に行かないわけにはいかない。

七五調の黙阿弥のセリフがいい。
にわか雨に見舞われた「永代橋川端の場」で、新三が忠七を足蹴にし、傘づくしの長ゼリフを言おうとすると、大向こうから「たっぷり」の声。
聴いてる方も気分がよくなる。

「ふだんは帳場を回りの髪結、
いわば得意のことだから、
うぬのような間抜け野郎にも、
ヤレ忠七さんとか番頭さんとか上手(じょうず)をつかって出入りをするも、
一銭職と昔から下がった稼業の世渡りに、
にこにこ笑った大黒の口をつぼめたからかさも、
並んでさして来たからは、
相合傘の五分と五分、
ろくろのような首をして、お熊が待っていようと思い、
雨の由縁(ゆかり)にしっぽりと、
濡るる心で帰るのを、
そっちが娘に振りつけられ弾きにされた悔しんぼに、
柄(え)のねえところへ柄をすえて、
油紙へ火のつくようにべらべら御託をぬかしゃアがると、
こっちも男の意地づくに、
覚えはねえと白張りのしらをきったる番傘で、
うぬがか細いそのからだへ、
べったり印(しるし)を付けてやらア」

ほかにも初鰹を買う場面とか、因業大家の老獪さなど、江戸の風俗がよくわかって、まるであの時代にタイムスリップした気分になった。

菊之助の長男の和史クンが丁稚の役で出ていたが、なかなか立派なセリフ回し。初お目見えのときには父親に抱っこされて甘えていただけだったが、さすがに梨園の子。
このときばかりは菊之助も父親の顔になってニコニコしていた。

「増補忠臣蔵」は成駒屋鴈治郎。ほかに梅枝、亀蔵権十郎、団蔵ほか。