フランス・ラングドックの赤ワイン「モメサン・メルロー・パレ・ドール(Mommessin Merlot Palet d'Or)2019」
1865年創業のモメサン社のワイン。
メルロー100%。メルローの味わいの特徴のひとつチョコレートをラベルにデザイン。なめらかでまろやかな口当たり。
ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたオランダ・ドイツ・イギリス・ベルギー合作の映画「ブラック・ブック」。
2006年の作品。
原題「ZWARTBOOK」
監督ポール・バーホーベン、出演カリス・ファン・ハウテン、セバスチャン・コッホほか。
「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督が23年ぶりに故郷のオランダでメガホンを取ったサスペンス・ドラマ。
1944年、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。ユダヤ人の女性歌手ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、オランダ南部への逃亡中に何者かの裏切りによって家族をドイツ兵に殺されてしまう。復讐を胸に誓った彼女は、名前をエリスと変えてレジスタンスに身を投じる。彼女はスパイとしてドイツ軍諜報部のムンツェ大尉(セバスチャン・コッホ)に近づき、彼の愛人になるが・・・。
連合軍がヨーロッパを解放し、人々が自由を手にするまでの物語だが、アメリカ兵は1人も登場しない。活躍するのはオランダでナチに抵抗するレジスタンスのメンバー、そして隠れ潜むユダヤ人たち。兵士として登場するのは脇役としてヨーロッパ各国の兵士たちだ。
まるっきりの勧善懲悪の映画にしないころもヨーロッパの映画らしい。といっても監督はハリウッドの人なんだが。
ナチス・ドイツを全面悪として描くのではなく、ナチスのフランケン中尉は私欲のためにユダヤ人を殺し、金品を奪う悪党だが、その事実を知って犯罪を告発しようとするのが同じナチスの諜報部のムンツェ大尉。一方のレジスタンスの側にも、仲間を裏切ってナチスのスパイになったり、自分の私腹を肥やすためにユダヤ人を騙そうとする表向き善人の腹黒医者がいたりする。
戦争という混乱に乗じて、平気で人を騙す人間がいる一方で、良心に反することは断じて許さないと人にも自分にも誠実に生きようとする人もいる。
そこのところをしっかりと見分けることが、どんな時代にも大切なんだなと映画を見ながら思った。
ついでにその前に観た映画。
民放のBSで放送していたデンマーク・カナダ・スウェーデン・ドイツ・フランス合作の映画「ニューヨーク 親切なロシア料理店」。
2019年の作品。
原題「THE KINDNESS OF STRANGERS」
監督ロネ・シェルフィグ、出演ゾーイ・カザン、アンドレア・ライズボロー、タハール・ラヒムほか。
デンマーク出身の女性監督が、老舗料理店に集った人びとの交流を描いた人間ドラマ。
ニューヨーク・マンハッタンで創業100年を超える老舗ロシア料理店「ウィンター・パレス」。かつての名店も、今では料理もひどい、ただ古いだけの店になっていた。
さらに、店を立て直すためにマネジャーとして雇われた刑務所を出たばかりのマーク(タハール・ラヒム)、仕事ばかりで他人のためだけに生きる変わり者の常連客アリス(アンドレア・ライズボロー)と、店に集まるのはクセのある人びとばかり。
そんな店に2人の子どもを抱えたクララ(ゾーイ・カザン)が飛び込んでくる。無一文の彼女は警察官でありながら凶暴な夫からDV被害を受けて逃げてきたのだった・・・。
原題の「THE KINDNESS OF STRANGERS」とは、「見知らぬ人からの親切」といった意味だろうか。
テネシー・ウイリアムスの「欲望という名の電車」の最後のセリフからとられているようで、この芝居で、主人公のブランチはこう語る。
「Whoever you are ? I have always depended on the kindness of strangers」。
「どなたか存じませんが、私はいつも見知らぬ人の親切に頼って生きてきたのです」
「欲望という名の電車」は、ニューオーリンズを舞台に、落ちぶれた名家出身の女性が隠していた過去を暴かれ、破滅するまでを描いていて、タイトル通り、欲望という名の電車に乗っ、人の善意を利用しながらどこまでも堕ちていく悲しい物語だが、本作は、それとはまったく逆の、見知らぬ者同士が互いに助け合い、手を差しのべ合う、希望のある物語だった。
ちなみに「欲望という名の電車」はエリア・カザン監督によって映画化されているが、エリア・カザンの孫娘が本作のヒロインのゾーイ・カザンだった。