善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

死のドレスを花婿に

フランスのミステリー作家、ピエール・ルメートル『死のドレスを花婿に』(文春文庫)を読む。

昨年のミステリーランキングの話題をさらった『その女アレックス』の作者の小説というので手にとる(日本でこの人の本はまだ2冊しか出ていない。フランス本国でもまだ5、6作というが)。
読み始めるとイッキ読み。その手法というか小説づくりの発想は『その女アレックス』と同じで、見事に既成概念を打ち砕いてくれる。

順風満帆な人生を送っていたはずのソフィー・デュゲは、いつしか記憶障害に悩まされるようになる。かつてはオークション会社の有能広報担当者だった彼女がようやくありついたのがベビーシッターの仕事。次期閣僚候補と目される有力者のアパルトマンに通い、6歳になる息子の面倒をみることになる。
ところがある日、疲れ果てて眠りに落ちた彼女が目を覚ますと、そこには他殺死体があった。死んでいたのはその家の息子。だれも出入りした形跡がない以上、犯人はソフィーしかありえない。しかも凶器は彼女の靴紐。無意識のうちに自分は人を殺してしまったのだろうか・・・。

言い逃れ不能の窮地に陥った彼女の逃亡生活が始まる。
しかし、その後、『その女アレックス』同様、とんでもない展開が待っている。

本書は2009年に柏書房から単行本として出版されている。
しかし、さほど人気がなかったのか? 話題にはなった形跡はない。
『その女アレックス』がベストセラーとなってにわかに注目され、今年4月に文庫化された。

しかし、そもそも『その女アレックス』が文春文庫で邦訳されたのは、担当編集者が『死のドレスを花婿に』を読んで衝撃を受け、読んだ翌日からルメートルの新作はないかと探し始めたのがきっかけという。

本は読まなきゃわからない。