善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

監禁面接

ピエール・ルメートル「監禁面接」(橘明美訳・文藝春秋
最新作とかいってるけど、2011年の「その女アレックス」のヒット以来それまで日本ではあまり知られてなかったルメートルの発掘?出版が続いていて、本書も2010年の作品。

原題は「Cadres coirs」
「黒い経営者」という意味だろうか。「監禁面接」という邦題に最初、何のコッチャ?と思ったが、読み進めるうちにナットク。

失業4年目、57歳の失業者の一発逆転の物語。
リストラで職を追われたアランは再就職のエントリーをくりかえすも年齢がネックとなり、今は倉庫でのアルバイトで糊口をしのいでいた。
だが遂に朗報が届く。一流企業の最終試験に残ったというのだが、最終試験の内容は異様なものだった。
「就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ」

ブラックユーモア満載で一気読み。
特に後半の方で、守衛と組んずほぐれつのパンチ合戦をするアランと、遠くにいて監禁されている妻のニコルの話が同時進行というか、まぜこぜに進んでいって、よけいに緊迫感を持たせる。さすがルメートル

いざなぎ景気以来」とかいってるけど、一向に好景気なるものを実感できない日本もフランスも同じなんだなと感じさせる、中高年庶民にとっての痛快小説。

就職試験に向かうアランに娘が日本のお守りを持たせるシーンがあった。
オレンジ色の柄物の布でできた小さな玉で、赤い紐がついていて、その根元に小さい鈴もついている。
フランス人の日本趣味はお守りにまで及んでいるのか?