善福寺公園めぐり

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アイルランド旅行記 その6 岩盤の島アラン諸島

アイルランド滞在5日目の7月16日(水)、もう日程の半分まできた。
ここまで天気は上々。最初にベルファスト市内を観光したときは雨だったが、それ以降は朝晩は降っても日中は晴天が続く。運がいい。

泊まったホテルの前に咲いていた見事なアジサイ。日本のに比べてド派手。
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朝食後、バスでゴールウェイの港へ。

途中、屋根を葺き替えている最中の家があった。
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このあたりの民家の屋根は多くがスレートだが、まれに草葺の屋根があり、遠くから見ると茅葺き屋根かな? と思ったが、近づくと葦(ヨシ・アシ)葺きの屋根だった。
20~25年に1回葺き替えるといっていたから、日本とあまり変わらない。
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ただ、日本では草葺きの屋根といえば藁葺きか茅葺きだろう。藁葺きの原料は稲や麦であり、茅葺きは山林原野に生えているススキなんかが使われるが、このあたりで採れるのは海の近くや川に生えている葦なのだろう。

ゴールウェイの港から、フェリーに乗ってアラン諸島イニシュモア島に向かう。乗っている時間は45分ほど。
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アラン諸島はゴールウェイから距離にして50㎞弱、3つの島からなっていて、島の名前はそれぞれ「大きな」「真ん中」「東」と、かなり大雑把な命名
イニシュモアは「大きな」という意味で、アラン諸島で一番大きい島。
島の中心部に大きなケルト十字。
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アイルランドの中でも最もアイルランドらしいところ、といわれる。なぜか?

イニシュモア島もそうだが、3つの島ともに一枚の岩盤でできていて、もともとここに土壌はなかったという。司馬遼太郎の『街道をゆく 愛蘭土紀行Ⅱ』に詳しく描かれているが、次の文章が引用されている。

「アラン島には、実のところ、土となづくべきものはない。岩盤の上に『土地』を作るのだ。岩路の砂ほこりや、道の両わきへ踏み弾かれて集まる砂利をあつめ、それに海藻を混えて畑を作る」(尾島庄太郎『原題アイルランド文学研究』1956)

土を作って畑にしても、土の厚さはわずか5㎝程度しかないという。
それでも人々はここに住み続けている。その生命力。
島の人口は約900人。スーパー1軒、郵便局が1つ、銀行1つ(週に2日だけオープン)、しかし、パブは5軒。

そんな過酷な島だからこそ、そうなのかもしれないが、ヨーロッパの近代文明はなかなかここまではたどり着けず、昔ながらのケルト文化が色濃く残っているという。
今ではアイルランド人もあまり使わないゲール語が日常語となっているし、古い伝統がいまだに生きている。
そこで、夏休みになると高校生たちがどっとこの島にやってくるという。島の人々からゲール語を教えてもらうためだ。

ゲール語アイルランドの第一公用語(英語は第二公用語)。ところが日常生活で使われるのは英語であり、ほぼ100%の人が英語を話せるのに対し、ゲール語をしゃべるのはわずか2~3%にすぎないという。このままではゲール語は消えてなくなってしまう、何とか母国語を復興させようとさまざまな努力をしているが、うまくいってない。
ただし、大学入試や公務員試験の必修科目にはゲール語が入っている。つまりは、今やアイルランド人にとってゲール語習得はエリートになるための条件になっているわけで、それで高校生たちが押し寄せてくるのである。何だかヘンな話。

道路標識もゲール語と英語の併記。
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