善福寺公園めぐり

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アイルランド旅行記 その5 巨人のテーブルは“太陽の門”

アイルランドに来て4日目の7月15日(火)は、朝食後ロスコモンのホテルを出発。
まず、映画『静かなる男』(ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演、1952年)の舞台となったコリブ湖畔の村コングを訪れる。
映画の一場面、モーリン・オハラを抱き上げるジョン・ウェインの像があった。
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コングの町を散策のあとはコリブ湖クルーズ。今年84歳になるというアコーディオン弾きのオジイサンが乗っていて、アコーディオンに合わせて歌ってくれた。歌は『アイリッシュアイズ・スマイル』『マリー・アローン』。
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「わしゃ、若いとき『静かなる男』に出たんじゃよ。立っているだけの役だったけどな」といっていた。今度見てみよう。

ところでアイルランドでは、上空に飛行機雲をよく見た。
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何でこんなに多いのだろう? アイルランドの空は飛行機雲ができやすい気象条件なのか? とガイドさんに聞いたら、アイルランドに限らずヨーロッパの空は飛行機雲ができやすい、とのことだった。

次に行ったのが「モハーの断崖」。
大西洋に突き出ている断崖絶壁で、海面からの高さは200m。断崖は8㎞にわたって続いている。
「モハー」とは「廃墟になった崖」の意味という。
古代の人々はここに来たとき、「世界の果て」を感じたに違いない。
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断崖絶壁が延々と続き、柵もないから危険このうえない。だからこそスリルを味わえるのだろうが、ここから落ちて亡くなった人を悼む碑があった。あーコワ。
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続いて訪れたのが石灰岩の丘陵が続くバレン。
アイルランド西部のクレア州というところに広がる石灰岩(カルスト)台地で、規模としてはヨーロッパ最大という。
アイルランドの東の方はけっこう緑が豊富で、牧草地が広がっていたが、西の方にいくとゴロゴロとした岩とか石ばかりで、荒涼とした風景が広がっている。
巨石文化が生まれた理由もそこにあるのだろう。

バレンはケルト語で「岩の多い場所」という意味だとか。
この地域は約3億5900万年前から2億9900万年前の石炭紀に築かれた石炭岩を基盤として泥板岩と石灰岩の堆積岩層を形成。 その後、約2億6000万年前の地殻変動により海底が隆起し、バレンや、対岸のアラン諸島の島々が生まれたという。

そのバレンの丘陵に立つのが「巨人のテーブル」と呼ばれる遺跡。
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どんなドでかいものだろうと期待を膨らませて近づいていくと、意外と小さい。「マーライオン」のような“3大ガッカリ”ほどではないにしても、わりとコジンマリしている。
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それでも、上に乗っかった石は1・5トンの重さというから相当なもの。5800年から5200年前の新石器時代の古墳という。日本でいえば縄文時代
古代の人はいったいどうやって重さ1・5トンもの重いものを上に乗っけたのか、想像が膨らむ。

それにしても変わった形だ。
このような形の遺跡を「ドルメン」という。ケルト系の言葉で、「ドル」はテーブル、「メン」は石を意味するのだとか。大きく平らな1枚板を数個の石で支えた形がテーブルのようにみえるのでこう呼ばれ、ヨーロッパ各地、だけでなく、日本にも長崎県の原山支石墓群(国指定の史跡で日本最大最古のドルメンといわれる)、天草の矢岳巨石群遺跡のドルメン、沖縄の宮古島でも見つかっているという。
一方、巨大な石をただ垂直に立てただけのものもあり、「メンヒル」と呼ばれ、これもヨーロッパ各地、そして日本にもある。

巨人のテーブルの下からは人骨が見つかっている。16~22人の大人と、生まれたばかりの赤ん坊を含む子ども6人の骨で、推定年代は紀元前3800年~3200年ごろといわれる。
そこで、巨人のテーブルは昔の人の墓ではないかといわれるが、あるいは何かの儀式に使われた神聖な場所であるかもしれない。

1815年に一度倒壊して、オリジナルとはかなり違った形に建て直されたといわれる。

ドルメンは「扉」でもあるという。何を迎え入れる扉だろうか。
太陽信仰との関係はないのか。

扉といえば、日本の「鳥居」も扉といえば扉であるが、本来、鳥居とは、太陽遥拝の聖地(神域)に日光が入ってくる門なのだという。むろん、差し込む光はただの日光ではなく、ある特定の日、つまり冬至夏至などの朝日・夕日に限られる。

アイルランドも、もともとの原始宗教は太陽信仰であっただろう。特に崇められたのは冬至の日の朝日だったという。冬至の日とは、太陽が最も衰える日であり、同時に、この日を境に太陽が日ごとに強くなる日であるから、太陽の死と再生の日である。
そこから人々は、人は死んでもまた生まれ変わる、輪廻転生の宗教観を醸成していった。

巨人のテーブルをじっくり眺めると、たしかに、日の光を受け入れる扉のような形をしている。太陽信仰の何かの儀式がここで行われたのではないだろうか。

近くの表示板を見ると、巨人のテーブルの開口部は東に向かって開かれている。冬至夏至、あるいは春分秋分の日の朝日を迎え入れる“太陽の門”だったのではないか。
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途中に見た、スゴイ色の店。日本人(少なくとも私)とは色彩感覚がかなり違う感じ。
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この日の宿泊地は西海岸の港町ゴールウェイ郊外にある「コネマラ・コースト」というホテル。
海に面していて、部屋からもちょっぴり海が見えたが、ホテルのすぐ外はビーチになっている。