善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

数は少ないが種類多い今年のカモ

火曜日朝の善福寺公園は晴れ。風もなくすごしやすい。

 

今年、シベリアあたりから善福寺池にやってるカモは、数は少ないものの種類は多い気がする。

キンクロハジロのオス。

例年なら数十羽はやってくるが、今年は10羽もいないのではないかという感じ。

 

クチバシが平べったいハシビロガモだろうか。

羽の色はメスみたいに地味だが、目は金色。

たしかハシビロガモの目はオスは金色でメスは褐色のはず。

とするとハシビロガモのオスのエクリプスだろうか。

繁殖期でないときは、オスはメスにアピールする必要がないから、外敵に見つかりにくいように地味な羽の色になる。これをエクリプスというそうだが、ハデな色になっちゃってるオスのカモもいるので、まだ成熟前のウブな若造なのだろうか。

 

相変わらずひとりぼっちのカモ。

本来はもっと西の方へ行くはずが、迷って善福寺池にやってきたメジロガモのメスじゃないかと疑ってるのだが。

 

オナガガモのオス。

今年はオナガガモがやけに少ない。

 

上池の木陰の暗いところに三郎らしいオスのカワセミ

 

下池にまわると、何と、アオサギが地上を歩いている。

水の中のエサでは飽き足らなくなっちゃったのか?

 

ギーッという声に上を見上げると、コゲラがいた。

一瞬で飛び去って行ったので、後ろ向き。

こっち向いてほしかったなー。

きのうのワイン+映画「ある機関助士」

アルゼンチンの赤ワイン「カイケン・エステート・カベルネ・ソーヴィニヨン(KAIKEN ESTATE CABERNET SAUVIGNON)2020」

(写真はこのあと牛のサーロインステーキ)

チリのトップワイナリー、モンテス社がアルゼンチンで手がけるワイン。

生産地はアルゼンチンのメンドーサ。

カベルネ・ソーヴィニヨン100%。

やわらかなタンニンでバランスのとれた味わい。

 

ワインのあと観たのは、民放のBSで放送していたドキュメンタリー映画「ある機関助士」。

1963年の作品。

監督・脚本・土本典昭、撮影・根岸栄、録音・安田哲男、音楽・三木稔

(VHSのビデオにもなっている)

 

国鉄(今のJR)は1962年5月に死者160人を出す大惨事となった常磐線三河島駅構内での列車脱線多重衝突事故を起こし、安全性が大問題になっていた。そこで、安全への取り組みを頑張ってますよと国民にPRするため国鉄によって企画され、岩波映画製作所が製作した37分のドキュメンタリー映画

ドキュメンタリーとはいえ、いやだからこそ、その迫真力は凄まじく、短編ながら力動感あふれて劇映画以上に手に汗握るような映画だった。

 

監督はその後、社会派のドキュメンタリー映画を多くつくった土本典昭

国鉄としてはPR用につくったつもりでいたが、映画は鉄道員たちが働く現場のリアルな労働環境を克明に描き、安全第一をモットーに列車を動かすため懸命になっている姿とともに、その過酷な労働をもあぶり出すものとなった。

そこで、試写会で映画を見た国鉄当局の幹部は、本作品の一般公開に難色を示し公開を見送ることを考えたらしい。しかし、土本監督が事前に労働組合や各職場から撮影許可を得ていて、大半の組合員、職場側も公開を容認し、その年の教育映画祭最高賞を受賞するなど世間の評価も高かったことから、最終的に一般公開に踏み切ったといわれる。

 

ベテランの中島鷹雄機関士と若い小沼慶三機関助士の1日の勤務を追った内容になっていて、ナレーションは小沼機関助士が担当している。

2人は国内最大級のSL、 C62が牽引する急行「みちのく」に乗務していた。

この日は朝8時に尾久機関区に出勤し、上野‐水戸間の急行「みちのく」に乗務するのが仕事で、夜8時ごろに退勤する日勤乗務だった。

2人が乗った午前中の下り急行「みちのく」青森行き列車は、上野駅からダイヤ通り正確に走って定時に水戸駅に到着。列車はその後12時間かけて青森まで向かうが、2人はここで交代して夕方まで機関区内で休息する。

最初は回想シーンも交えながらノンビリした感じで1日の動きを追っているが、夕方の水戸駅17時27分発の上野駅行き上り急行「みちのく」が、水戸駅に3分遅れて到着すると緊張が一気に高まる。

ナレーションで小沼機関助士が語る。

「定時運行を行っていれば事故は起きない。列車が乱れたときに事故は起きる」

国鉄の規則にも「機関士は列車が遅れたときは許される速度の範囲内で遅れを回復させることにつとめなければならない」と規定されているという。

しかし、取手駅上野駅間の電車(国電区間は、夕方の帰宅ラッシュで過密ダイヤになっていて遅れを回復するのは難しいため、水戸駅を出発してから取手駅に到着する前までに列車の遅れを回復して、定時運行に戻さなくてはならない。

水戸駅上野駅間に許された最高速度は徐行区間を除いて95 km/hまでであり、信号機の数は150、踏切の数は300もある。

急行ゆえ、列車は通過する駅のホームを飛んでいくようにして通過していく。列車からとらえたスピード感あふれる映像が緊迫感を増す。

緊張の1時間40分、1つのミスや誤りも許されない中、機関士と機関助士は互いに連呼し合い、機関助士は火の具合を見て石炭をくべていく。2人の息の合った正確な作業で、少しずつ遅れを取り戻していく。

上野駅到着。

「定時到着、異常ありません」

別に胸を張っているわけでもなく、彼らにとっては日常の一コマにすぎないのだろうが、人々を安全に運んでいく鉄道員の誇らしい姿がそこにあった。

今でこそ車が鉄道に取って代わり、各地のローカル線は危機的状況だが、本来、鉄道は日本の動脈であり、隅々にまで張り巡らされた毛細血管でもあった。

今だって交通ネットワークとして十分に働けるはずだと思うのだが・・・。

サネカズラの赤い実

日曜日朝の善福寺公園は曇り。けさはそれほど寒さを感じない。

 

上池で仲良くエサをついばんでいるのはヒドリガモカップルか。

 

下池にまわると、3羽のカワセミ

まず出会ったのはメスのサクラのようだ。

ジッと池に目を凝らす。

 

少し離れたところにいたのは、小四郎か六兵衛か。

 

さらに池をめぐっていると、またまたオスのカワセミ

 

オオバンはひとりぼっち。

 

再び上池に戻る。

公園隣の屋敷林から枝が伸びていて、サネカズラのつるが巻きついて赤い実がなっていた。

サネカズラの学名はKadsura japonicaで、「日本の葛(かずら)」という意味だが、日本の主に関東より西の地方のほか、朝鮮半島南部、台湾、中国といった東アジア照葉樹林帯に自生する。

「実葛」「真葛」と書き、「実(さね)が美しいカズラ」の意味らしい。

だが、「サネ」にはどこか妖しい響きがあり、思いつくのは百人一首の次の歌。

 

名にし負(お)はば逢坂山(あふさかやま)のさねかづら人に知られでくるよしもがな

 

三条右大臣、藤原定方の歌だが、恋しい人に逢えるという逢坂山に生えるのが、あなたと一夜をすごせるサネカズラ。誰にも知られずにそこへあなたを連れ出せればいいのに・・・。

 

ここでいうサネカズラのサネとは「さ寝」のことで、「さ」は接頭語。「ね」は寝ること、特に男女が一緒に寝ることを意味する。

 

万葉集にも次の歌。

 

あしひきの山さな葛もみつまで妹に逢はずや我が恋ひ居らむ

 

山のサネカズラの実が赤く色づくまで、愛しいあの人に逢えないままずっと恋い焦がれていなければならないのでしょうか。

 

何とも悩ましい歌。

そういえば同じつる性の植物にテイカカズラ(定家葛)がある。

名前の由来は、式子内親王を愛した藤原定家が、死後も彼女を忘れられず、ついにカズラに生まれ変わって内親王の墓にからみついたという伝説をもとにした謡曲「定家」からきている。

つるを伸ばして巻きつくカズラは情念の炎でもあるのか。

それにしても昔の人は、自然を見ることで想像力を豊かにふくらませている。

 

サネカズラのつるの新しいのは、皮を剝ぐと粘り気が出るという。

そこでつるの皮をむしり、水で揉んで出てくる粘液を乱れた髪につけて整髪剤にしたので、「美男葛(ビナンカズラ)」の別名もあるとか。

ということは男性用の整髪剤だったのか?

しかし、平松隆円著の「黒髪と美女の日本史」(水曜社)によると、平安時代の洗髪には、灰汁(植物を焼いた灰を水に浸した上澄み液)や「泔(ゆする)」(米のとぎ汁)、「美男葛」などが用いられたとあるから、女性も使っていたようだ。

何しろ当時の宮さまはもちろん宮廷に仕える女性たちは髪が長かったから、洗うのもひと苦労だったろう。

源氏物語」に登場する浮舟の髪は「いと多くて、六尺ばかり」とあるから180㎝ぐらいもある。身長を越えるような丈に余る長さが理想的だったのだろうから、髪を洗うのは一日がかりの大仕事。

「宇津保物語」は「宮さまは朝早くから日が暮れるまで髪をお洗いになる」と書いている。このため、髪は今みたいにしょっちゅうは洗え出ず、月に何度と決められていたそうだ。

洗いすぎよりはいいと思うが、平安時代の女はつらいよ。

きのうのワイン+映画「ジャンゴ 繋がれざる者」ほか

イタリア・プーリアの赤ワイン「ネプリカ・ネグロアマーロ(NEPRICA NEGROAMARO)2020」

(写真はこのあと深谷ネギの豚肉巻き)

イタリアのワインメーカー・アンティノリがプーリア州で立ち上げたワイナリー・トルマレスカのワイン。

「ネプリカ・シリーズ」は、ネグロアマーロとプリミティーヴォ、カベルネ・ソーヴィニョンの頭文字を取って名づけられ、プーリア州の魅力を気軽に愉しめるシリーズという。

きのう飲んだのはネグロアマーロ100%。

果実味と柔らかなタンニンを感じるワイン。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「ジャンゴ 繋がれざる者」。

2012年の作品。

原題「DJANGO UNCHAINED」

監督クエンティン・タランティーノ、出演ジェイミー・フォックスクリストフ・ヴァルツレオナルド・ディカプリオサミュエル・L・ジャクソンほか。

 

南北戦争を前にした1858年、アメリカ南部。黒人奴隷として売りに出されたジャンゴ(ジェイミー・フォックス)は、元歯科医の賞金稼ぎでドイツ人のキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)に買われる。

差別を嫌うシュルツはジャンゴに自由を与え、賞金稼ぎとしての生き方を教える。

ジャンゴには奴隷市場で生き別れになった妻、ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)がいた。2人は賞金を稼ぎながら彼女の行方を追うが、やがて残忍な農園主として名高いカルビン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)のもとにブルームヒルダがいるということがわかり、妻奪回の熾烈な戦いに挑む・・・。

 

異才クエンティン・タランティーノ監督が放つバイオレンス西部劇。

ディカプリオが極悪人役で登場。

始めのほうにエンニオ・モリコーネっぽい音楽が流れマカロニ・ウェスタンふうの展開かと思ったら、途中は正統派?西部劇ふうとなり、結局はタランティーノならではのドバドバ血が吹き出るバイオレンスとなる。

父親がドイツ人、母親はオーストリア人でドイツ語が堪能なクリストフ・ヴァルツがドイツ人の賞金稼ぎシュルツを快演(この役でアカデミー賞助演男優賞を受賞)。サミュエル・L・ジャクソンが黒人でありながら黒人を蔑む農園主に忠実な黒人奴隷を“怪演”。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「10日間で男を上手にフル方法

2003年の作品。

原題「HOW TO LOSE A GUY IN 10 DAYS」

監督ドナルド・ペトリ、出演ケイト・ハドソンマシュー・マコノヒーほか。

 

ニューヨークにある女性ファッション誌の記者、アンディ(ケイト・ハドソン)は、政治ネタや社会派の記事を書く夢を持ちながらも、女性向けのハウツー記事しか書かせてもらえない日々を送っている。今回も編集長が用意したのは軽いハウツーもののコラム。なかなかテーマの決まらないアンディは、友だちが語る失敗談から、男と別れたい女性のための“10日間で男にフラれる方法”という企画を思いつく。

一方、広告代理店に勤めるベン(マシュー・マコノヒー)は、ダイヤモンドを扱う企業のCMをめぐって同僚と争っていて、「俺は女性の気持ちが分かる、どんな女でも落としてみせる」といい放つ彼の言葉を聞いた上司から、10日後のパーティーまでに指定された女性を落として連れてくれば仕事はお前のものといわれる。

そんなアンディとベンは、とあるパーティ会場で偶然出会うと、互いの下心からデートの約束を交わすのだったが・・・。

 

結末がミエミエの映画だったが、意外とおもしろかった。

ただし、結末には首をひねるところもあった。

ヒロインのアンディは政治記者になりたいという初志貫徹のため、ニューヨークのファッション誌をやめてワシントンに向かう。それをベンが引き止めて2人は結ばれ、ハッピーエンドになるのだが、彼女はワシントンには向かわず、ベンとともにニューヨークに戻っていく。なぜ彼女は政治記者をめざさないんだろう? 結局、女性は仕事より男なのだろうか?と思ってしまった。

ハシビロガモの“渦巻き採食”

金曜日朝の善福寺公園は晴れ。寒さはきのうほどではない。

 

けさはカワセミの姿を見なかった。

代わって、頭上の木々をエナガの群れがめぐっていて、目の前をウグイスが地鳴きしながら飛んでいった。

 

冬になると善福寺池にやっいくるハシビロガモ

数羽で仲良く採餌しているが、その様子がおもしろい。

くるくるとまわりながらエサを漁っているのだ。

ハシビロガモ(嘴広鴨)は、名前の通り幅広の大きなクチバシをしている。

クチバシの内側の側面は、クジラなどの口と同じようにブラシ状になっていて、水ごと吸い込んで水だけを吐き出す。

くるくるとまわるのは渦をつくるためで、そこに植物プランクトンなどエサになるものを効率よく集めて食べているようだ。

水面を泳ぐ脚の動きで水を撹拌するため、プランクトンが水面近くまで浮き上がり、それを狙って次々と水を吸い込んでいく。このため何十羽も集まるととても大きな渦になるのだとか。

こうしたハシビロガモの採餌を“渦巻き採食”というそうだ。

 

なるほど水に浮かぶカモにもいろんなエサの食べ方がある。

カモは採餌のやり方によって「水面採餌ガモ」と「潜水採餌ガモ」に大別され、ハシビロガモのほか、1年中、善福寺池にいるカルガモや、やはり冬鳥のオナガガモなんかも水面採餌ガモ。カルガモは水面だけでなく陸に上がって植物を食べたりもする。

カルガモはよく遊歩道でエサをついばんでいて、人が歩いていても平気で地面をつっついているが、あれは人が踏んづけてつぶれて食べやすくなったドングリなどの木の実をつっついているようだ。

何て頭がいいんだろ。

 

一方、水中にもぐってエサをとっているのがキンクロハジロなどの潜水採餌ガモ。

水面に浮いているものだけでなく、藻類とか貝、中には魚や甲殻類も食べたりしているようで、水面採餌ガモに比べて食べられるエサの種類が多いという。

ただし、潜水採餌ガモは潜りやすいように脚が体の後方にあるので、地上を歩くことはできない。

どっちがトクなのか?それはわからないが、同じカモでも、多様な生き方をしているのは確かだ。

晩秋のカワセミ

木曜日朝の善福寺公園は晴れ。きのうよりさらに気温が低い。今シーズンの最低気温を更新かな。

 

公園に着くと、上池ではコサギが身を縮めていた。

“羽毛布団”であったかいだろうに。

 

下池にまわると、けさもお気に入りの場所にオスのカワセミ

ドテ座りに近いから若造の六兵衛か。

 

公園の紅葉は一気に進んでいる。

池に向かって伸びるイチョウの葉も黄色くなっていた。

 

ムラサキシキブの実が鮮やかな紫色。

 

晩秋の公園。

二十四節気立冬から暦の上では冬になり、きょう17日からは七十二候の金盞香。

七十二候とは、二十四節気をさらに約5日ずつ3つに分けた期間のことで、金盞香(きんせんかさく)とは水仙の花が咲きはじめるころという意味だが、さすがにまだ公園では水仙は咲いてない。

 

枯れたアジサイの花びらに張りつくようにしているワカバグモ。

徘徊性のクモで、左右の前脚2本が長く、いつもピタリとくっつけて伸ばしている。
獲物を待ち伏せをする姿がカニに似ていることからカニグモ科。

前の2対の脚はむしろ腕の働きをすることが多いという。

 

上池に戻ると、ボート乗り場のあたりから下池方面に向かって飛んでいくカワセミを目撃。

さらに池をめぐっていると、またまたカワセミのオス。

飛んで行ったのは三郎とすると、この子は文二か。

さらに歩いていくと、またカワセミのオス。

朝日に照らされていて、肉眼で見るととても鮮やかなオレンジ色なんだが。

さっき見た文二が飛んできたのか、はたまた別の新参者か。

顔も体形もどれも同じようなので、まるでわからない。

きのうのワイン+映画「RENT/レント」ほか

チリの赤ワイン「モンテス・リミテッド・セレクション・ピノ・ノワール(MONTES LIMITED SELECTION PINOT NOIR)2020」

(写真左手前の料理は、新メニューの「ブラッターとあんぽ柿の柚子胡椒風味」)

モンテスは1988年、「チリ発、チリ人だけのチリワインカンパニー」としてスタートしたワイナリー。

ボトルに描かれているのは天使。創業者の一人が交通事故から奇跡的に助かった際、天使の存在を感じたことがきっかけとなり、以来、天使はモンテスのシンボルとなっているという。

生産地はチリのワイン産地の中で中部に位置するアコンカグア。南米最高峰のアコンカグア山の麓の河川流域にブドウ畑が広がっている。

やわらかで飲みやすいワイン。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「RENT/レント」。

2005年製作の作品。

監督クリス・コロンバス、出演ロザリオ・ドーソン、テイ・ディグス、ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア、ジェシー・L・マーティン、イディナ・メンゼル、アダム・パスカル、アンソニー・ラップほか。

 

ニューヨークのイーストビレッジ。ロフトの一室に共同で暮らすロジャー(アダム・パスカル)とマーク(アンソニー・ラップ)は、クリスマス・イヴというのに家賃(レント)滞納で電気も暖房も止められていた。

かつて人気ロックバンドの一員だったロジャーは、恋人がエイズを苦に自殺して以来ふさぎ込み、映像作家志望のマークは、バイセクシャルの恋人が女性の新しい恋人のもとへ去ったことに傷ついていた。

そんなある日、ロジャーは階下の部屋に住むダンサー、ミミ(ロザリオ・ドーソン)に心惹かれ・・・。

 

イースト・ヴィレッジに集うボヘミアンたちの愛と苦悩に満ちた1年間(56万5600分)を描くミュージカル。

プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」が原作で、1996年にオフブロードウェイ上演されると2カ月後にはブロードウェイに進出してロングランを記録。その舞台を映画化したのが本作で、ブロードウェイ・キャストのうちミミ役をのぞく主要キャストが同じ役で出演している。

貧困やドラッグ、セクシャルマイノリティHIVなど当時の若者のリアルな姿が映し出されている。

ラ・ボエーム」ではヒロインの命を奪う“不治の病”は結核だったが、本作ではエイズだった。

 

劇中で歌われるどの曲もすばらしく、歌っているどの声にもしびれる。

音楽(作詞・作曲)は、舞台の台本も手がけたジョナサン・ラーソン。

ニューヨーク生まれで、芝居好きの両親の影響を受けて子どものころから音楽や演劇の才能を発揮し、トランペット、チューバの演奏、学校の合唱団で歌唱、クラシックなピアノの演奏も行っていて、大学は演劇科に進んで演劇やミュージカルに出演するが、そのころから作曲も始める。

大学卒業後はダウンタウンの暖房のないロフトで仲間たちと暮らし(まさしく「レント」のボヘミアンみたいな暮らし)、約10年間、週末にダイナーでウエイターとして働き、平日はミュージカルの脚本を書いたり作曲したりしていたという。

ミュージカルの第1作目は共作だったが1981年冬の大学生時代の作品で、自分が通う大学で初演されている。この作品はのちにブレヒト風の作品に改訂してマンハッタンにある小さな劇場で上演され、米国作曲家作詞家出版者協会から賞を受賞している。

 

ミュージカル「レント」はラーソンの自伝的要素を加え、彼の作詩・作曲・脚本により、1996年1月にオフブロードウェイのニューヨーク・シアター・ワークショップでプレビュー初演、その2週間後に本演初日を迎える予定だった。ところがラーソンはプレビュー初演の前日、大動脈瘤の発作に襲われ、その日のうちに35歳の若さで急逝する。

ラーソンの死を受けて、一時は公演の中止が考えられたが、夜になると劇場には次々と人々が集まってきて満員となった。そうした観客たちに支えられてオフブロードウェイ公演は大成功をおさめ、同年4月からはブロードウェイのネダーランダー劇場で公演が始まり、以来12年4カ月、連続上演5140回というロングランとなった。

没後に彼は、ピューリッツァー賞戯曲部門最優秀作品賞、トニー賞ミュージカル部門の最優秀作品賞、最優秀脚本賞、最優秀オリジナル作曲賞などを受賞している。

 

ついでにその前に観た映画。

NHKBSで放送していたアメリカ映画「旅立ちの時」。

1988年の作品。

原題「RUNNING ON EMPTY」

監督シドニー・ルメット、出演リバー・フェニックス、クリスティーン・ラーチ、ジャド・ハーシュ、マーサ・プリンプトンほか。

 

大人へと成長していく少年をリバー・フェニックスが好演した青春映画。

 

家族とニュージャージーの小さな町に引っ越してきた高校生のダニー(リバー・フェニックス)。父親アーサー(ジャド・ハーシュ)と母親アニー(クリスティーン・ラーチ)は1960年代のベトナム戦争当時、反戦運動家として爆弾事件を起こしてFBIに指名手配されて以来、息子2人と各地を転々として逃亡生活を送っていた。

潜伏生活のため、名前を変え、髪の色を変え、引越しだらけの日々だったダニーも青春を迎えていた。新しい高校に転校したダニーは音楽教師のフィリップスにピアノの才能を認められ、ジュリアード音楽院への入学を勧められる。さらに、フィリップス先生の娘のローナ(マーサ・プリンプトン)と恋に落ちる。

これまでのように両親と逃亡の旅を続けるか、新たな道を踏み出すのか、悩んだあげくのダニーの人生の選択は・・・。

ピュアなダニーとローナの初恋模様が美しい。

葛藤し、成長する少年を演じたリバー・フェニックスは、本作でアカデミー助演男優賞にノミネートされるなど注目されるも、23歳の若さで亡くなっている。