仕事で大阪へ。せっかくだからと1泊する。
仕事のあと、夕食のため予約した心斎橋にある季節料理の店「ままごとや」へ向かう途中、心斎橋筋にあるルイ・ヴィトンのビル5階「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」で開催中のアルベルト・ジャコメッティ展を観る。
ジャコメッティは主に彫刻家として知られるが、絵画や版画の作品も多い。1901年スイスに生まれ、1922年にパリへ移ってからは主にフランスで活動。1966年没。
日本での個展は2017年以来という。その6年前の個展は東京・六本木の国立新美術館で開催され、観に行っている。
今回の個展にはルイ・ヴィトンのコレクション7点を展示。会場ではドキュメンタリー映像も流されていたが、彼の生い立ちに始まり葬儀の様子までおさめられていて、とても貴重な映像だった。
ドキュメンタリーを見て思ったのは、ジャコメッティといえば極端にまで細長く伸びた人間のブロンズ像が特徴で、シュールを求めてあのような形に行き着いたのかと思っていたが、あれはあくまでリアルさを追及したもので、若いころはもっとシュールな作品をつくっていたということだった。
初期の作品はかなり抽象的なものが多く、針のように細長く伸びた人間のブロンズ像はむしろ晩年の作品。「見えるものを見えるままに」表現しようとしたといわれる。
作品をつくるときはモデルにポーズをとらせ、時間をかけて制作に取り組んでいたという。モデルをじっくりと観察し、人間の本質をとらえようとした結果、うつろいやすい外観を越えてあのような不思議な造形に行き着いたのだろうか。
高さ2・7mにもおよぶ「大きな女性立像 II」(1960年)。
この作品は、アメリカ人建築家ゴードン・バンシャフトの依頼を受け、ニューヨークのチェース・マンハッタン銀行ビルの広場に設置するために構想された。女性の裸体を扱ったジャコメッティ最後の作品でもあるという。
3体の胸像(1964-1965年)。
ルーマニアの写真家エリ・ロタールがモデル。
後ろは制作中のジャコメッティの写真。
「3人の歩く男たち」(1948年)。
戦後の復興期、1つの都市空間で3人の人物がお互いを認識することなくそれぞれの方向へ向かう姿が捉えられているのだとか。
「ヴェネツィアの女」(1956年)。
ヴェネチア・ビエンナーレで発表された6作品からなる作品群の1つ。
「棒に支えられた頭部」(1947年)
1階ファサードのショーウインドーディスプレーはルイ・ヴィトンと草間彌生のコラボレーション。
植物に水やりする草間彌生。
むろんご本人ではなく、そっくりの形をしたヒューマノイドロボット。
ルイ・ヴィトンビルから少し歩いたところにある「ままごとや」。
「ままごとや」は、子どもの遊びの「ままごと」ではなく、「ご飯(まま)事(こと)をする家(や)」の意味。旬を生かした板前料理の店。カウンター12席、小座敷(4席と6席)のちょうどいい広さで、今回で2回目。
まずは生ビール。
お酒は福島・会津若松の「飛露喜」。
アンチョビとルッコラのソース。
明石鯛の造り。
穴子焼き霜造り。
黄ニラのソバの実和え。
毛ガニの土佐酢ジュレ。
酒は栃木の「惣誉 生酛仕込み 純米吟醸」
ホワイトアスパラガスの炭火焼。
原木シイタケとブルーチーズのクリームコロッケ鋳込み揚げ、トリュフ風味ハチミツ添え。
帆立と生ウニの包み揚げ。
酒は山形・天童の「山形正宗 雄町」。
山形牛の花山椒鍋。
〆はアサリの焼きおにぎり茶漬け。
いい心持ちで宿へ。
翌日は、先日から始まった牧野富太郎をモデルにしたNHKの朝ドラ「らんまん」に感化されて、植物見たさに大阪市東住吉区にある大阪市立長居植物園に行く。
ホテルから北浜駅に向かう途中に見つけた「パンカラト・ブーランジェリーカフェ」で朝食。
好きなパンを選んで、飲み物とプレートがセットになっている「農園直送野菜たっぷりモーニング」。
なかなか満足度の高い朝食だった。
1974年開園というから来年50周年を迎える。広さ約24.2haの園内には、バラ園、アジサイ園、ボタン園など11の専門園のほか、季節の花々が咲いている。
薄紅色のハナミズキが公園のあちこちで咲いていた。
ハンカチノキを発見。
いったいどんな花を咲かせるのだろうと前々から興味を持っていたが、ようやく出会えた。
花びらに見える白い大きな2枚の「苞葉」が垂れ下がってハンカチみたいに見えるところからハンカチノキ。
たしかにハンカチみたいに見える。
アオジがお散歩中だった。
春ぐらいまでは善福寺公園でもよく見る
ネモフィラがちょうど見ごろを迎えていた。
フジとネモフィラ。
公園内の池ではカワウが集団でエサ獲りしていた。
カワウが帯状になって一方向へバシャバシャと泳ぎ進んでいく。
一種の“追い込み漁”だろうか。
牧野富太郎展も開催中で、大阪市立自然史博物館が所蔵する牧野富太郎に関する資料が展示されていた。
おもしろかったのが、大阪の植物の調査研究に尽力した一人である竹下英一氏(東大阪市にある樟蔭高等女学校で博物学の教諭を務めていた人で、牧野と親交があった)にあてた年賀状。
その時代の空気が年賀状の文面に反映していて、「新年めでたし、芽出度し」などと牧野のユーモアが垣間見えるものも。
夕方の飛行機で東京へ。
西荻窪駅南口から歩いて数分のビストロ「山下食堂」で夕食。
ハートランドビールのあと、スペインの赤ワイン「Caballero Hidalgo Reserva」をボトルで。
大阪の旅を思い出しながらの料理は――。
鰯とフルーツトマトのマリネ。
イエロートマトのソース、ミントの香り。
海老の辛いトマトソースパスタ。
豚のロースト。
ふきのとうのバーニャカウダソース。
何だかんだいってグルメ旅の2日間だった。