新宿ピカデリーで上映中の中国映画「崖上のスパイ」を観る。
2021年の作品。
原題「懸崖之上/CLIFF WALKERS」
監督チャン・イーモウ、出演チャン・イー、ユー・ホーウェイ、チン・ハイルー、リウ・ハオツン、チュー・ヤーウェンほか。
中国を代表する映画監督チャン・イーモウが1930年代の満州を舞台に描いたスパイサスペンス。
1931年の満州事変の後、日本軍は中国東北地方を占領し、翌32年、傀儡国家「満州国」を樹立。さらに中国全土の支配をねらっていた。
そのさなかの1934年冬、ソ連で特殊訓練を受けた中国共産党スパイ・チームの4人(男女各2人)が、極秘作戦「ウートラ計画」を実行するため雪深い森の中をパラシュートで降下。2組に分かれてハルビンに潜入しようとしていた。
「ウートラ計画」の「ウートラ」とは、ロシア語で「夜明け」を意味し、背蔭河(現在の黒龍江省五常市の背蔭河鎮)にある秘密施設からただ一人逃れた同胞を国外に脱出させ、日本軍の蛮行を世界に知らしめるのが目的だった。
だが、仲間の裏切りによって、そのミッションは「満州国」のハルビン特別警察庁特務科に察知されていた・・・。
背蔭河にある秘密施設とは、捕虜となった中国人に人体実験を行なっていた731部隊のことだった。1933年に設置された「関東軍防疫部」(隊長が石井四郎であったことから別名「石井部隊」)のことで、のちにハルビン市に移転し「関東軍防疫給水部」と改称し、「関東軍満洲第731部隊」とも別称されるようになった。
背蔭河は731部隊の最初の根拠地となったところで、ここには3千人ともいわれる「マルタ」とされた人体実験の被験者が集められ、731部隊によってことごとく抹殺され、脱出できたのはごくわずかな人たちだったという。
映画では、「一度入ると二度と生きて出られない」といわれた生物兵器の実験場から唯一逃亡し、潜伏している人物を救助しようとする4人の男女の決死の行動が描かれている。
中国に侵略してきた日本軍との戦いが描かれているが、映画には日本人は一人も出てこない。日本軍の手先となって働く「満州国」特務警察と、中国共産党工作員とが騙し騙される虚々実々の暗闘、つまり中国人同士の戦いが描かれている。
走る列車内での息詰まる攻防、ハルビン市街地の迷路のような路地での銃撃戦、雪の市街地でのカーチェイスなど、サスペンスにプラスしてアクションも。
中でも注目は、可憐で芯の強いチーム最年少スパイの小蘭(シャオラン)を演じるリウ・ハオツン。
「初恋のきた道」でチャン・ツィイーを見出したチャン・イーモウ監督に発掘されたという新星で、22歳の中国映画界の若手ホープという。
そういえばどこか「初恋のきた道」で映画デビューしたときのチャン・ツィイーに似ている気がする。
本作で演じる小蘭は、少女のようなあどけなさを残すが知性と直観力で常に的確な判断を下す聡明さと、愛する人や仲間への忠誠心を併せ持った女性スパイだとか。
可憐でか弱すぎて大丈夫かなと心配して見ていたら、精一杯のアクションがむしろリアルさを生んでいた。
1934年当時のハルビンの街並みを再現した野外セットでの撮影がよくできていて、あの時代にタイムスリップしたような気分になった。
映画のあとは、地階にある「Café&Meal_MUJI新宿」で昼食。
平日で、午後1時をとっくにすぎているのに賑わっていて、満席に近い混みよう。
無印良品のカフェ・レストランで、メインとデリを1品選ぶセット(ごはん、サラダ、味噌汁付き)で1100円。
ごはんは十穀米をチョイス。