善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

心に残る料理とお酒 分とく山

日本料理の名店「分とく山」へ行く。

前々から是非とも行きたいと思っていた店。

もともと総料理長をつとめる野崎洋光さんのファンで、彼が書いた料理本を何冊か持っているが、日本料理に新風を吹き込む野崎さんの料理づくりのポリシーに共感していた。新風を吹き込むといっても、奇をてらった料理をつくるわけではない。伝統を踏まえつつ、素材本来の味を大切にした料理づくりを行っているのが野崎さんだ。

しかし、やっぱり料理はポリシーだけではだめで、味わうことこそ大事と、ようやく訪問が叶った。

 

地下鉄広尾駅から徒歩5分ほど、にぎやかな大通りに面したところにある、純和風の店構え。ここだけが別世界という感じ。f:id:macchi105:20210225110409j:plain

総料理長の野崎さんは、27歳の若さで日本料理の名店「とく山」の料理長となり、36歳で独立したが、「とく山」で学んだ恩義を忘れまいと、つけた店名が「分とく山」。

2人で行ったが、通されたのは2階の部屋。カウンターに4人が並ぶ席で、向かいに大きなまな板があり、目の前で板前さんが調理してくれる。

席に着くと、さりげなく置かれていたボケの小枝。早春に咲く花だ。花芽が出ていて、帰ってから咲かせようともらって帰った。f:id:macchi105:20210225110503j:plain

2人で行ったが、たまたま客は4人席にわれわれ2人だけで、板前さんがつきっきりで料理をつくり、供してくれた。何て贅沢(1人7万円ものタダ飯を食べた某内閣広報官には及ばないが)。

目の前で料理をつくってくれたのは阿南優貴さん。あとで知ったが、分とく山ナンバー2の本店料理長だった。

 

生ビールのあと、日本酒は、野崎さんの出身地・福島に敬意を表して福島県古殿町の「一歩己(いぶき)」。

 

料理はうろ覚えだが、まずは海老しんじょとメカブf:id:macchi105:20210225110445j:plain

メカブの食感が何ともいえない。

 

皿の上に載っているのは、赤貝とイカ、ウド。ウニとアオサ、もち米。フグの煮こごり。菜の花の生ハムまき、酒粕。タケノコの土佐風味、だったかな。f:id:macchi105:20210225110613j:plain

どれも違った味が楽しめて、酒が進む。

 

甘鯛とコゴミの吸い物。f:id:macchi105:20210225110925j:plain

何とも癒される味。散らされたネギが鮮やかで目で見ても楽しめる。

 

このあたりから酒は山形県米沢市の「日本響」。

フグの刺身白子のせ。サヨリとマグロ赤身の刺身。f:id:macchi105:20210225110954j:plain

どれも絶品の味。

 

この店の名物というアワビの料理。

アワビとフキノトウの揚げ物。このままでもおいしいが、アワビのワタ+わかめのタレにつけるとまた違った味わい。このタレだけでもおいしい。f:id:macchi105:20210225111023j:plain

酒は宮城県仙台市の「勝山」。

タケノコと牛肉のしゃぶしゃぶ。お好みでエゴマソース。f:id:macchi105:20210225111048j:plain

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サワラとフキ炊き込みご飯。f:id:macchi105:20210225111128j:plain

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とても全部は食べきれず、おみやげに持たせてもらった。

 

デザート。f:id:macchi105:20210225111204j:plain


ヒョイと見上げると、店の壁にかかっていた掛け軸に「看脚下」とある。f:id:macchi105:20210225111230j:plain

足元を見よ、ということか。描かれているのはゴボウ(牛蒡)という。

なるほど、ゴボウは地中に深く埋まっている根を食べる。「足元を見よ」は「足元の食を忘れるな」ということかもしれない。

 

どれもおいしく、春の気分を味わえて、心に残る料理の数々。

帰りには玄関までみなさんに送っていただき、うれしい気分で店を出るが、表に出たとたん「また行きたいな」と思ってしまったのはなぜ?

この店も夜は8時までという。

コロナ禍できっと大変だろうが、「分とく山」ならではの味を守っていってほしいものだ。