日曜日の午後は、JR恵比寿駅近くにある「酒 秀治郎」へ。
恵比寿駅西口から歩いて5分ほど、閑静な住宅街の一角にあり、「日本酒好きの、日本酒好きによる、日本酒好きのための店」として4年前にオープンした店だ。
店をプロデュースしたのは直野秀治郎氏という人で、本業はWEB制作会社の代表取締役をしていて、飲食業の経験は皆無だったという。しかし、日本酒が大好きで、日本酒に関するセミナーに参加したり、蔵元を訪ねたりするほか、蔵元を招いて日本酒を試飲するイベントを開催するなどしているうちに、とうとう自身がプロデュースする酒場をオープンさせた。
予約制だが、電話番号は非公開でフェイスブックによるアクセスのみ。しかも基本的に完全紹介・予約制なので“一見さんお断り”らしいが、初めてで紹介者がいない場合でも、月に数日だけ設定される一般予約可能日か、2週間先までで空きのある日であれば予約が可能という。
そこで、一般予約可能日に何とか予約ができ、出かけていった。
コンクリート打ちっぱなしのビルの1階にある店のドアを開けると、左手は厨房で右手にカウンター席。カウンターは8席で、奥に4人が座れるテーブル席が3つある。合計20席。
昼の時間は午後1時からと決まっていて、そこから一斉スタートで酒とコース料理が供される。
家庭料理ふうの和食割烹+日本酒代込みで9000円(税込み)なのだが、驚いたのはメインとなるのは料理ではなく、日本酒が主役ということ。もちろん料理はどれもおいしかったが、料理とのマリアージュで出されるお酒の種類がハンパなく、コース料理が終わるまでに14種類ものお酒を楽しむことができた。日本酒好きにとって、こんなうれしい店はない。
席に座ると、ガラス、白磁、陶器の3種類の盃がセットで出てくる。
「料理とのマリアージュといっても、この料理にはこの酒と押しつけたり、1杯飲み終わったら次の1杯となるのではなく、一度にいろんな種類の酒をテーブルに置き、好きなタイミングで好きなように楽しんでほしい」という直野氏の思いからだという。
お客目線の酒の供し方が、これまたうれしい。
お酒を担当している女将さんも、客の飲み方を見て、顔を見て酒を出してくれるから、その心尽くしがうれしい。
きのう飲んで食べたもの。
まずは3つの器に奈良の酒「風の森」を注ぎ、飲み心地を確かめる。
最初の料理はいわば「お通し」、鞍掛豆とたまふくら大豆、ホタルイカの炊き込みご飯、青のり味噌汁、ヒジキ、昆布佃煮+大根浅漬けが少しずつ。
酒は群馬の「流輝(るか)」(純米吟醸・無ろ過・生・山田別誂)
奈良の「篠峯 伊勢錦」(純米・中取り・無ろ過生原酒)
続く料理は、胡椒タイ、金華鯖とホタルイカの燻製、静岡のフルーツトマト、長芋揚げ浸し、鶏のハム、桜海老、スルメイカのヒモ醤油漬け、フキ。
酒は、山口の「わかむすめ 萌木」(純米吟醸・無ろ過生原酒)。
佐賀の「光栄菊 Harujionハルジオン」(無ろ過生原酒)。
千葉の「月暈(つきかさ) MOON HALO」。
新牛蒡のメンチカツ。
酒は、山形の「米鶴」(本醸造)をぬる燗で。
茨城の「富士大観」(純米吟醸生)。
石川の「寧音(ねね)」(純米酒)。
桜海老のフォカッチャ。
酒は佐賀の「鍋島」(特別純米酒)。
美桜鶏の照り焼。
奈良の「鷹長」(菩提酛・純米酒)。
山口の「CHOYO FUKU MUSUME(長陽福娘)」(純米にごり酒・生・微発砲)
海老と湯葉の茶碗蒸し・新生姜のかおり。
栃木の「旭興」(辛口・純米吟醸・山卸廃止酛)
〆は蕎麦。
〆酒は新潟の「荷札酒」(無ろ過生原酒・純米大吟醸)。
全部で14種の酒。1種あたり1合弱ぐらいで、2人で行って1升は飲んだか。料理も18種。
飲んだ酒はすべて初めての酒。どれもおいしく、日本酒の世界の奥の深さを知る。
幸せな気分で帰宅。