善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

見つめ合うカワセミ

日曜日朝の善福寺公園は晴れたり曇ったり。寒さはますますゆるむ。

 

公園に到着すると、モズがお出迎え。

メスのようだが、いつにも増してカワイイ感じ。f:id:macchi105:20210214095828j:plain

ひょっとしてまだ子どもなのか。

 

まずは上池をめぐっていると、池の真ん中あたりでカワセミが2羽、至近距離でいる。

さてはお見合い開始か?f:id:macchi105:20210214095952j:plain

左がオスで右がメス。オスが背伸びして、男らしさ?をアピールしてるところか。

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やがて2羽は飛んで行って、対岸で再びお見合い。

今度はメスのほうが積極的のようだ。f:id:macchi105:20210214100117j:plain

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さらに接近していって、見つめ合うふたり。f:id:macchi105:20210214100209j:plain

恋の行方は?と期待して見ていると、人が近寄ったためか、2羽は結局離れてしまった。

 

こちらはオオバンカップル。珍しく陸に上がってエサ探し。f:id:macchi105:20210214100241j:plain

上池と下池を結ぶ小川(遅野井川)ではキセキレイハクセキレイf:id:macchi105:20210214100317j:plain

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コゲラが枝をつついていた。f:id:macchi105:20210214100411j:plain

ジョウビタキのオスが体をまん丸にしていた。f:id:macchi105:20210214100451j:plain

テニスボールにも使える丸さだと思うんだが。f:id:macchi105:20210214100513j:plain

下池をめぐって再び上池に戻ると、さっきのメスのカワセミらしいのがひとり寂しく?たたずんでいた。f:id:macchi105:20210214100538j:plain

ヒヨドリがセンダンの実を飲み込もうとしている。

実が大きすぎたのか、なかなか飲み込めず悪戦苦闘中。f:id:macchi105:20210214100604j:plain

実の下から伸びているのは舌だろうか。

センダンの実はサポニンを多く含んでいて、これには毒性があるため人や犬が食べると食中毒を起こし、摂取量が多いと死に至ることもあるという。ヒヨドリが食べる光景をよく見るから、何らかの解毒作用によって食べても大丈夫なんだろう。

きのうのワイン+映画「アリー/スター誕生」

チリの赤ワイン「モンテス・アルファ・シラー(MONTES ALPHA SYRAH)2018」

(写真はこのあと料理が続々登場)f:id:macchi105:20210213145927j:plain

モンテスは1988年11月、「チリ発、チリ人だけのチリワインカンパニー」として設立されたワイナリー。チリの豊穣な大地にヨーロッパ式の醸造技術を持ち込み、「世界最高峰のチリワインを造る」という信念のもとワインづくりをスタートさせたという。

ブドウ品種はシラー(90%)、カベルネ・ソーヴィニヨン(7%)、ヴィオニエ(3%)。

チリ最高の畑といわれる単一畑「ラ・フィンカ・デ・アパルタ」と呼ばれる畑から収穫されたブドウを使用。

 

ワインの友で観たのはNHKBSで放送していたアメリカ映画「アリー/スター誕生」。

2018年の作品。原題「A STAR IS BORN」

 

製作・監督・脚本ブラッドリー・クーパー、出演レディー・ガガブラッドリー・クーパーサム・エリオットほか。

1937年の同名映画の3度目のリメイク。

最初の作品はハリウッドの栄光と悲劇を描いたもので、映画スターに憧れハリウッドへやってきた女性が大スターの男性との出会いをきっかけに女優として成長していくが、逆に男の方は落ち目になり、酒におぼれていくが・・・という話だった。

その後、1954年(ジュディ・ガーランド主演)、1976年(バーブラ・ストライサンド主演)にもリメイクされ、2018年のレディー・ガガ主演の今回は歌の世界を描いている。

 

有名ロックミュージシャンのジャック(ブラッドリー・クーパー)はある日、歌手を目指すアリー(レディー・ガガ)と出会い、その歌に心動かされる。2人は恋に落ち、アリーは次第に才能が花開いていくが・・・。

 

レディー・ガガは今年1月のバイデン大統領就任式でアメリカ国歌を独唱したように現代のアメリカを代表する歌姫。

レディー・ガガという名前の由来は、本名が長すぎる(ステファニー・ジョアン・アンジェリーナ・ジャーマノッタ)という理由ではなくて、いや、それも多少はあるかもしれないが、彼女がいつも口ずさんでいたQUEENの「Radio Ga Ga」という曲にちなんでいるという。

「Radio Ga Ga」をもじって「Lady Ga Ga」というわけだ。「gaga」には「夢中になる」という意味があるらしい。

 

映画の中でレディー・ガガブラッドリー・クーパーが歌った「Shallow」はアカデミー歌曲賞を始めさまざまな賞を合計33回受賞し、史上最も受賞された曲となったんだそうだ。

「Shallow」は直訳すれば「浅い」とか「浅瀬」という意味。何が浅いかといえば「2人の関係」であり、「今は浅いところにいるけれど、やがて深くなっていく。お互いがお互いを必要としているから・・・」

光の春待つ野鳥たち

土曜日朝の善福寺公園は曇り快晴。光の春が少しずつ近づいている。

 

上池のボート乗り場付近の杭の上にカワセミf:id:macchi105:20210213091705j:plain

どうやらメスのようだが、と観察していると、足元で「チャッチャッ」とウグイスの地鳴きが聞こえる。

すぐ足元の藪の中をウグイスが移動中だった。f:id:macchi105:20210213091729j:plain

上池を半周して下池へ。

ハクセキレイがみんなが散歩している広場を横切っていく。f:id:macchi105:20210213091755j:plain

下池でスックと立っているアオサギf:id:macchi105:20210213091817j:plain

やがて羽ばたいて、どこへ行くかと思ったら高い木の上にとまった。f:id:macchi105:20210213091846j:plain

脚を広げ、風に吹かれて木枯らし紋次郎ふう。

 

2羽のツグミがじゃれ合っていて、やがて1羽は少し離れたところにとまった。

オスとメスかな?

1羽は散歩してるわれわれのすぐ目と鼻の先。f:id:macchi105:20210213091924j:plain

よーく見るとはなかなか凛々しい感じ。f:id:macchi105:20210213091943j:plain

もう1羽も近くにとまっていた。f:id:macchi105:20210213092055j:plain

 

歩いていると再びウグイス地鳴き。

けさはよくウグイスと遭遇する。

しかも、左と右でステレオで聞こえる。 

どちらも藪の中を移動中で、一瞬、顔を出したところ。f:id:macchi105:20210213092008j:plain

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再び上池に戻ると、さきほどのメスのカワセミか。

杭の上にとまって、しきりに鳴いていた。f:id:macchi105:20210213092233j:plain

オスを探して、「私はここよー」とでもいってるのだろうか。

野鳥たちも春を待ってるようだった。

サンシュユの花ほころぶ

金曜日朝の善福寺公園は曇り。引き続き寒さゆるむ。

 

公園に着くなり、目の前でカワセミのオスらしいのがちょうどエサをゲットしたところに遭遇!

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しかも、捕まえた魚の頭を上にしている。

カワセミのオスは繁殖期になると、求愛行動として捕らえた魚をメスにプレゼントするが、相手が飲み込みやすいように頭を上にしてプレゼントする。

さては求愛のプレゼンか?と思ったら、やがて頭を逆にして・・・。f:id:macchi105:20210212095206j:plain

飲み込んじゃった。f:id:macchi105:20210212095257j:plain

愛よりも食欲か。

食べたあと片脚立ちのヘンなポーズ。f:id:macchi105:20210212095321j:plain

 

先日見たあたりにモズはいないかと探すと、けさもいました。f:id:macchi105:20210212095353j:plain

かわいい顔をしている。どうやらメスのようだ。f:id:macchi105:20210212095419j:plain

オスも見たいんだが。

 

すぐ目の前の木の枝をのぼっているのはコゲラf:id:macchi105:20210212095459j:plain

枝にできたコブみたいなのを盛んにつついていた。f:id:macchi105:20210212095523j:plain

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下池で久しぶりに見たのが、バンの特徴であるクチバシが鮮やかな赤い色をしているバン。先っちょは黄色い。f:id:macchi105:20210212095610j:plain

このところ毎日のように見るバンはそこまで赤くない。f:id:macchi105:20210212095632j:plain

成熟度の違いなんだろうか。

 

川べりにはキセキレイ。葉っぱを見て思案顔?f:id:macchi105:20210212095700j:plain

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ジョウビタキのオスが柵の上にとまっていた。f:id:macchi105:20210212095743j:plain

けさはしきりに尻尾をブルブルさせていた。f:id:macchi105:20210212095816j:plain

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鳴くときはよく尻尾を上下に震わせるが、けさは横にブルブル。虫でもいたのか?

 

春を呼ぶ花、サンシュユ(山茱萸)の花がほころび始めた。f:id:macchi105:20210212095858j:plain

実がグミに見えることからその名がついたとか。

早春、葉がつく前に黄色の花をつけ、木全体がまるで黄金のように輝くことから「春黄金花(ハルコガネバナ)」とも呼ばれる。

サンシュユはヨーグルトの原料にもなるという。ブルガリアの伝統的なヨーグルトのつくり方としてサンシュユの親戚にあたる木の葉っぱを牛乳に浸してヨーグルトをつくる方法があるという。おそらく葉っぱに乳酸菌が潜んでいるのだろう。

 

ウメの開花も進んでいる。f:id:macchi105:20210212095944j:plain

 

池をめぐっていると、さっきエサをゲットしたオスのカワセミか、ドテッとした格好でいた。f:id:macchi105:20210212100011j:plain

木陰にはゴイサギf:id:macchi105:20210212100041j:plain

シロハラが薄日を浴びていた。f:id:macchi105:20210212100106j:plain

こうしてみるとなかなか凛々しい。

きのうのワイン+映画「守護神」

イタリアの赤ワイン「ネプリカ・プリミティーヴォ(NEPRICA PRIMITIVO)2018」

(写真はこのあとメインの肉料理)f:id:macchi105:20210211161959j:plain

600年以上の歴史を持つというアンティノリが、プーリア州で立ち上げたワイナリー、トルマレスカの赤ワイン。

プーリア州で栽培されるプリミティーヴォ100%。

プーリア州はイタリアの形を靴に例えるとちょうどかかとの部分に位置し、世界遺産アルベロベッロがあることでも有名。以前、この地を旅行で訪れたことを思い出しながら飲む。

 

ワインの友で観たのは民放テレビで放送していたアメリカ映画「守護神」。

2006年の作品。

原題は「THE GUARDIAN」

直訳すれば「保護者」「守護者」という意味か。イギリスの新聞「THE GUARDIAN」も同じ意味だろう。ただし、邦題の「守護神」はいかがなものか。

監督アンドリュー・デイヴィス、出演ケビン・コスナーアシュトン・カッチャーほか。

 

アメリカ沿岸警備隊の救難士の活躍を描いた映画。さしずめアメリカ版「海猿」だろうか。

任務中の事故で心に傷を持つ伝説のレスキュースイマー、ベン・ランドール(ケビン・コスナー)は養成学校の教官になるが、訓練生としてやってきたのは天才スイマーでありながら常に不遜な態度をとるジェイク・フィッシャー(アシュトン・カッチャー)で、彼にも忘れられない暗い過去があった・・・。

 

圧巻は荒れる海での人命救助の場面。どうせCGで処理してるんだろうと思いながら見ていくが、そうとわかっていても手に汗を握る。

特設プールでの特撮とCGを併用しているらしいが、中でも大荒れの海の描写が真に迫っている。2000年公開の「パーフェクト・ストーム」(ジョージ・クルーニー主演)の大波の描写もすごかったが、世界で最初に海面の流体力学シュミレーションによるCG応用を実現したのがこの映画だといわれている。

今では流体力学シュミレーションを使って、水や煙、炎、火災、雲、台風、火山の噴火や爆発など、流体の動きが自由自在に表現できるようになっているというから、映画づくりの進歩はすさまじい。

濃い顔のアオジ

木曜日朝の善福寺公園は快晴。けさも寒さはゆるんでる感じ。

 

シダレザクラの木にアオジが2羽。

1羽は枝に隠れているが、左側は濃い顔しているからオスかな。f:id:macchi105:20210211094611j:plain

池のほとりをバンがお散歩中。f:id:macchi105:20210211094705j:plain

けさは公園のあちこちでエナガを見るが、何しろすばしっこくて・・・。f:id:macchi105:20210211094730j:plain

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シジュウカラが地面に降りていた。こっち向いて「何か?」。f:id:macchi105:20210211094833j:plain

メジロも地面に降りてのエサ探し。f:id:macchi105:20210211094916j:plain

木の上では好物が少なくなったんだろうか。やや、黒い実をゲット。f:id:macchi105:20210211094939j:plain

たちまち飲み込んだ。f:id:macchi105:20210211095010j:plain

コゲラが幹をのぼっていって、さらに細い枝の先までいって・・・。f:id:macchi105:20210211095032j:plain

サテ次はどこ行こうか。f:id:macchi105:20210211095100j:plain

けさのカワセミは上池に2羽。

こちらはメスのよう。f:id:macchi105:20210211095126j:plain

もう1羽はオスのようだが、何かよそよそしくて、あんまり恋してる感じはしないんだけど。f:id:macchi105:20210211095151j:plain

 

仁左×玉コンビの「於染久松色読販」

歌舞伎座「二月大歌舞伎」第2部を観る。f:id:macchi105:20210210132330j:plain

演目は四世鶴屋南北作「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)土手のお六 鬼門の喜兵衛」と、舞踊と清元の「神田祭」。f:id:macchi105:20210210132352j:plain

「於染久松色読販」では土手のお六を坂東玉三郎、鬼門の喜兵衛を片岡仁左衛門、ほかに河原崎権十郎坂東彦三郎など。続く「神田祭」では鳶頭の仁左衛門と芸者の玉三郎の共演で、まるで錦絵を見るような美しさ。

両演目とも3年前の歌舞伎座公演で観てるのだが、仁左衛門出演とあっては何度だって観たい。

 

「於染久松色読販」は大坂・油屋の娘お染と丁稚の久松が心中した事件をヒントにつくられた“お染久松もの”の1つ。物語の舞台を江戸に移して1813年(文化10年)江戸・森田座で初演された。

お染を演じる役者が早替わりで七役を演じ分けるというので通称「お染の七役」と呼ばれるが、きのう観たのは土手のお六、鬼門の喜兵衛の“悪党夫婦”が活躍する強請場(ゆすりば)だけを抜き出て、序幕の「柳島妙見の場」と「小梅莨屋(たばこや)の場」「瓦町油屋の場」。

 

お染久松は出てこなくて、ここでの主役は夫婦で暮している土手のお六(玉三郎)と鬼門の喜兵衛(仁左衛門)。惚れた男のためには悪事も厭わないお六と、いかにも強悪という感じの喜兵衛。2人は江戸の最底辺に暮らす悪党であり、自らの欲望のおもむくままに行動する“悪の美学”を鶴屋南北が生き生きと描き出していて、息のあった仁左衛門玉三郎という現在の歌舞伎界きっての黄金コンビが、歌舞伎の醍醐味のひとつである“悪党の魅力”をたっぷりと演じていた。

中でも死人を強請のタネに細工するところでは、早桶から出して細工をする場面ごとに仁左衛門の見得が入り、見ていてゾクゾクしてくる。客席からは拍手がわき起こる。本来なら大向こうからの声もかかるところなんだが(コロナの影響で自粛中)。

 

ただ、本来は長い話を土手のお六と鬼門の喜兵衛の名場面だけ抜き出しているから初めての人にはわかりにくいだろう。どんな話かというと――。

この物語で久松は、大名千葉家の家臣・石津久之進の息子として登場する。

父親の久之進は千葉家の家宝である「牛王吉光(ごおうよしみつ)」という名刀を紛失した責を負わされて切腹、お家は断絶。子の久松は百姓久作に引取られ、父の無念を晴らして御家再興を図ろうと浅草瓦町の質店、油屋の丁稚となって刀を探すが、油屋の娘お染と出会い、相思相愛の仲となる。

 

一方、刀は鬼門の喜兵衛が盗んだもので、喜兵衛は刀と折紙(刀の保証書)を油屋に質入し、その金を着服した上、使い込んでしまっている。

向島・小梅で莨屋を営む土手のお六のもとへ、千葉家の奥女中の竹川から手紙が届く。お六はその昔、竹川に仕えていて、亭主の喜兵衛も同家中の武士に中間奉公していて2人は駆け落ちした仲。そして、竹川は久之進の娘で、久松の姉だった。

手紙には、紛失していた刀と折紙が油屋にあることがわかったので、とり戻すために必要な百両の金を工面してほしいとある。昔の恩を返したいとお六が思案しているところへ、風呂上がりの喜兵衛が帰ってくる。それぞれ違う思惑からお金が欲しいお六と喜兵衛の夫婦は、たまたま莨屋に運び入れられた男の死体に細工をし、「お前の店の者とケンカして弟が死んでしまった」と言いがかりをつけて油屋から金を強請りとることを思いつき、乗り込んでいくが・・・。

しかし、夫婦共謀の強請も結局はあえなく失敗するというのが話のオチで、陰湿な“悪”一色ではなく、笑いを誘う喜劇っぽさも出しているところが南北のうまさだろうか。

 

この芝居に登場する名刀「牛王吉光」は実在する刀だ。

歌舞伎にはいろんな名刀が登場していて、江戸時代享保年間に実際に起きた事件「吉原百人斬り」をもとにして作られた「籠釣瓶花街酔醒」に登場するのが伊勢の名工村正(むらまさ)が鍛えたという「籠釣瓶」という名刀、というよりこちらは妖刀か。

「伊勢音頭恋寝刃」で、メンツをつぶされたうえに名刀をすり替えられたと思い込んだ主人公が大勢の人を斬りつける刀が「青江下坂」。

 

牛王吉光は脇差しで、伊達騒動で知られる原田甲斐が所持していたものとされ、寛文11年(1671年)3月27日、大老の酒井雅楽頭邸で騒動解決のための審問中、原田甲斐が同じ伊達藩の伊達安芸らに刃傷に及んだときに使用したのがこの牛王吉光だったという。

吉光は鎌倉時代の名刀工の一人。牛王は「牛の中の最上のもの」を意味し、吉光が鍛えた刀の中で最上のものということで名づけられたという。

 

玉三郎のお六と仁左衛門の喜兵衛のこの芝居、2018年の歌舞伎座「三月大歌舞伎」で観ていて、このときは1977年以来41年ぶりの2人の共演というので話題となった。

玉三郎がお六を初演したのが1971年6月、新橋演舞場の若手歌舞伎の舞台。玉三郎が21歳のときで、玉三郎はお六だけでなくお染も含め七役を演じた。このときの喜兵衛役が片岡孝夫(今の仁左衛門)で、27歳。2人とも若い!

もともとこの芝居の上演は明治以後は絶えていて、昭和初期に前進河原崎国太郎が復活上演。その後も「お染の七役」を得意としていて、玉三郎が初演するときも国太郎から教えを受けたという。

前進座は今から90年ほど前に松竹の封建的運営、門閥制度に反発した若手歌舞伎役者らによって結成された劇団。今も前進座と松竹はあまり接点はないみたいだが、玉三郎梨園の出身でないだけに、わだかまりはないのだろう。

戦後、松竹系の劇場で「於染久松色読販」が上演されたのは1958年10月の道頓堀文楽座が最初だった。このとき「お染の七役」を演じたのは七代目の大谷友右衛門(のちの四代目中村雀右衛門)。この人も名優だったが(何しろ文化勲章受賞者)、その後、何度も「お染の七役」を演じている。

しかし、玉三郎は埋もれていた演目を復活上演した前進座の国太郎に敬意を表したかったのだろう。

玉三郎は翌年の72年にも中日劇場と京都・南座で2回にわたり「お染の七役」を演じていて、このときの喜兵衛も片岡孝夫だった。

 

一昨年に続いて今年もこの演目を取り上げたということは、七役ではなくお六の一役だったとしても、玉三郎にとって、もちろん仁左衛門にとっても、思い入れのある作品のひとつなのだろう。