イタリアの赤ワイン「ヴィラ・アンティノリ・キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ(VILLA ANTINORI CHIANTI CLASSICO RISERVA)2020」
メインの料理は牛のサーロインステーキ。
1385年より歴史を持つトスカーナワインの牽引者、アンティノリのワイン。
サンジョヴェーゼ90%で、残る10%はシラーとメルロをブレンド。
発酵を終えたワインは品種ごとに分け、2年後の春にブレンドするまで木の樽で熟成するが、樽の種類も、60%は大樽、残りはフレンチオークとハンガリアンオークの小樽を使用している。
しっかりとした果実味に木樽由来のスパイシーな風味が綺麗に溶け込む、重厚かつリッチな味わい。
ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していたアメリカ映画「ザ・コンテンダー」。
2000年の作品。
原題「THE CONTENDER」
監督・脚本ロッド・ルーリー、出演ゲイリー・オールドマン、ジョアン・アレン、ジェフ・ブリッジス、クリスチャン・スレーター、サム・エリオットほか。
副大統領の急死に伴いアメリカ史上初の女性副大統領候補の指名を受けた議員と、それを阻止しようとスキャンダルを持ち出して攻撃する政敵たちとの息詰まる攻防を描いた政治ドラマ。
副大統領が死亡し、当初、そのポストに最も近いと思われていたのはヴァージニア州知事だったが、大統領(ジェフ・ブリッジス)は「自分の最後の仕事」としてアメリカ史上初の女性副大統領を実現させようと上院議員レイン(ジョーン・アレン)を指名する。
彼女は共和党から民主党に鞍替えした人物であり、共和党の議員たちは不快感を示す。議会承認で委員長を務める下院議員のラニヨン(ゲイリー・オールドマン)は、女性蔑視に凝り固まっていて、レインの副大統領就任を阻止すべく、彼女の大学時代のセックス・スキャンダルを暴き、レインを追い詰めていく。だが、レインは、プライバシーの問題を語るつもりない、とスキャンダルついては黙して語らず、毅然として危機に立ち向かっていく・・・。
2001年アカデミーション賞でジョアン・アレンが主演女優賞、ジェフ・ブリッジスが助演男優賞にノミネート。
タイトルの「THE CONTENDER」とは、「競争者」とか「挑戦者」を意味しているらしい。「ガラスの天井」を打ち破るべく女性副大統領をめざした議員のことをいっているのか、あるいはそれを阻止しようとする保守派議員たちも含めた、政治家たちの丁々発止を意味しているのかもしれない。
アメリカの副大統領は、大統領選挙で大統領とともに選ばれるが、在職中に死亡したりして欠員のときは、合衆国憲法修正第25条により、大統領が指名し、指名された者は連邦議会両院の過半数の承認を経なければならない。
そこで下院の聴聞会で議長をつとめる共和党の大物議員ラニヨンの役割が重要になってくるわけで、ラニヨン役のゲーリー・オールドマンは、ハゲ頭の特殊メイクで悪役ぶりを熱演していた。
副大統領としての資質を問うなら、彼女の政治的姿勢とか政策とか、役職と関係のある点を質問すべきなのに、ラニヨンがヤリ玉にあげるのは、大学1年のときの男子大学生とのセックスがどうしたかとか、不倫の経験はないのかとか、政治に関係のないことばかり。女性蔑視に凝り固まっているゆえに、偏見でしか女性を見てないのだろう。
しかし、彼女は反論する。独身の男性が複数の女性とセックスしても何も問題にされないのに、なぜ女性だけはスキャンダルになるのか、独身女性が既婚の男性と深い仲になったとして、なぜそれを不倫だとして女性を攻撃するのか?
いわれなき中傷めいた攻撃により失脚させようとするやり方は、第二次世界大戦後の冷戦時代に吹き荒れた“赤狩り”と同じではないか、とのセリフもあり、“赤狩り”の被害にあった先輩映画人へのオマージュのようなシーンもあった。
ホワイトハウスや議会を舞台に、いかに共和党議員たちが女性を男性と同等に扱わず、彼女らの権利を蹂躙しているかを描いているのが本作であり、ゲーリー・オールドマンが演じるラニヨン議員は陰険でニクニクしい敵役に徹している。
実はこの映画は、オールドマンが企画を気に入って出演とともに製作総指揮を兼任している。伝え聞くところによるとオールドマンは熱心な共和党支持者という。そんな人がよくぞ本作の出演・製作総指揮を兼任したなと思ったら、オールドマンは本作について違ったイメージを持っていて、完成後に公然と本作を批判して話題となったのだという。
脚本段階ではオールドマンが演じるラニヨンはもっと“いい人”に描かれていて、人間的なキャラクターとなっていたのが、編集段階でとても共感できないような敵役につくり替えられてしまったという。
折しも本作が完成して公開されたのはアメリカ大統領選挙と同じ年の2000年で、共和党のブッシュ・テキサス州知事と民主党のゴア副大統領による大接戦となった(結局、選挙はブッシュ氏が得票数では負けても選挙人の数で勝利した)。
オールドマンの主張によると、本作を製作したドリームワークスの経営者はスピルバーグ監督を始めとしてすべて民主党支持者であり、監督に圧力をかけて彼のキャラクターを大きく変えてしまったのだという。
ドリームワークス側はこれを否定しているらしいが、本作は、1998年に発覚した民主党のクリントン大統領の不倫スキャンダルを意識してつくられたともいわれていて、クリントン大統領の事件もプライバシーの問題なんだから大統領選挙とは関係ないよ、といいたかったのだろうか?