善福寺公園めぐり

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石田泰尚スペシャル・熱狂の夜・第二章 第5夜:アンサンブル

「石田泰尚スペシャル・熱狂の夜・第二章」の第5夜「アンサンブル」をJR川崎駅前のミューザ川崎シンフォニーホールで聴く。

6月のソロから始まって毎月1回、デュオ、トリオ、カルテットと共演の輪を広げていって、第5夜の「アンサンブル」は石田が率いる結成10周年を迎えた「石田組」の出演(最後の第6夜「コンチェルト」は11月22日)。

石田は神奈川フィルハーモニー管弦楽団のソロ・コンサートマスターをつとめるが、そり込みを入れた短髪に色つきレンズの眼鏡という硬派な外見からは想像もつかない優雅な音色を響かせる異色のヴァイオリニストとして、カリスマ的人気を博している。

この日も本来は夜の1回公演の予定だったが、あまりの人気に昼の部が追加で加わり、そちらも全席完売。第1夜から最終夜まで、2000人近く入るミューザ川崎シンフォニーホールが会場だが、第5夜の2回を入れて7回公演すべて全席完売。その人気のほどがうかがえる。

きのうの第5夜「アンサンブル」に出演したのはそれぞれ異なる楽団に所属したり、フリーが活躍している13人の演奏家たち。

石田組は、石田の呼びかけにより2014年に結成された弦楽合奏団。プログラムによって様々な編成で演奏をするスタイルを取っていて、メンバーは“石田組長”が信頼を置いている首都圏の第一線で活躍するオーケストラメンバーを中心に公演ごとに“組員”が召集されている。

レパートリーはバロック音楽から映画音楽、プログレッシブ・ロックまで多岐にわたり、各々のスタイルをぶつけ合いながら織り成す演奏スタイルは弦楽アンサンブルの新しい世界を切り拓く存在として注目されている。

きのうの演目も、クラシックからロックまで実に多彩だった。

曲目は次の通り。

グリーグ:2つの悲しき旋律 op.34

チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 op.48

バーバー:弦楽のためのアダージョ

E.バーンスタイン(近藤和明編曲):荒野の七人

J.ウィリアムズ(松岡あさひ編曲):シンドラーのリスト

レッド・ツェッペリン(近藤和明編曲):移民の歌

レッド・ツェッペリン(近藤和明編曲):カシミール

キング・クリムゾン(近藤和明編曲):21世紀のスキッツォイド・マン

アンコール曲は、メンケン:美女と野獣布袋寅泰:BATTlE WITHOUT HONOR OR HUMANITY、オアシス:ホワットエヴァー。

 

ロックやポピュラー曲を美しくも見事な弦楽合奏曲にアレンジしているのは編曲者(近藤和明、松岡あさひ)の卓越した技量と感性によるところが大きいだろう。

きのうの演奏で、ワタシ的に特によかったのがレッド・ツェッペリンの「カシミール」。砂漠か草原を行くラクダの背に乗っている気分になり、夢見心地で聴いた。原曲以上にカシミール感があったような・・・。

 

当日配られたパンフレットに石田組の紹介があり、その中で、「2021年に3年ごとに行われる音楽の友誌クラシック音楽ベストテン、『あなたの好きな室内楽グループ』部門にて第4位(日本人グループ最高位)に選出された」との記述があって、へー、すごいなと思った。

3年に一度開催の「音楽の友」の人気企画で、読者アンケートの集計結果を発表するものだが、3年ごとというと2021年の次は今年のはずだというので調べてみたら、さらに驚くことがあった。

今年、つまり2024年の「あなたが選ぶクラシック・ベストテン」の結果が音楽の友9月号に掲載されていて、それによると、石田組は好きな室内楽グループの何と第1位になっていた。第1位の石田組が189票で、第2位の葵トリオが98票だからダントツ1位だ。

そればかりではない。

「好きなクラシック音楽家は?」でもベートーヴェンと並んで石田が第1位。

「好きなヴァイオリニストは?」でも樫本大進五嶋みどりらをおさえて石田が第1位。

「好きな日本人ヴァイオリニストは?」でも第1位が石田で、2位以下は五嶋みどり樫本大進諏訪内晶子庄司紗矢香の順。

何と、石田と石田組は人気投票の4冠を達成しちゃっているのだ。

石田には熱狂的ファンが多いゆえ、「最近はやりの“推し活”の結果ではないか?」との声も上がっているらしいが、これが「偉大な音楽家はだれ?」というならまだしも、「あなたの好きな・・・」という中で選ばれているのだから、それだけ石田に人気があるということなのだろう。

石田組は今年11月、念願だった日本武道館での公演を予定していて、こちらも完売に近い売れ行きらしい。演歌やポピュラー、ロックに熱狂する人がいるのだから、クラシック音楽に熱狂するのも、とてもいいことではないだろうか。