善福寺公園めぐり

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ヴィオラの魅力全開!SDA48コンサート

3連休の最終日、ヴィオラだけの演奏会が東京・四谷の紀尾井ホールであるというので出かけていく。

ヴィオラ演奏集団SDA48によるコンサートで、10人のヴィオラ奏者によるアンサンブル。

ヴァイオリンとヴィオラ、チェロによる四重奏とか、ヴァイオリンやチェロの独奏は聴いたことがあるが、ヴィオラだけ、それもヴィオラのアンサンブルなんて初めてのこと。

興味津々で開幕を待ち、10人のメンバーがヴィオラを奏ではじめる。すると、その第1音からして美しく、たちまち虜になってしまった。

 

この日の演奏曲目は、ロッシーニ(飯田香編曲)「ウィリアムテル序曲」、G・ジェイコブ「8つのヴィオラのための組曲」、ビゼー(飯田香編曲)「アルルの女第2組曲」、ヒンデミット無伴奏ソナタ Op.25-1より」、メタリカ(荒井英治、須田祥子編曲)「Master of  Puppets」、YOSHIKI(飯田香編曲)「紅」、草野華余子(飯田香編曲)「紅蓮華」、J・ウィリアムズ(イアン・アンダーソン編曲)「スター・ウォーズ」メドレー、ほか。

 

ヴィオラというと、ヴァイオリンより一回り大きめで“中庸の音を出す楽器”というイメージしかなく、オーケストラの演奏会などでも地味な印象しかなかったが、10人の演奏者たちのアンサンブルの、何と力強くてダイナミックで、そして、やさしく温かみのある響きであることか!

しかも、力強さダイナミックさとやさしさ温かさが同じ楽器から醸し出されるところが、ヴィオラの魅力なのでは、と思ったのだった。

あっという間の2時間あまりで、もっといつまでも聴いていたいと思ったのは私だけではあるまい。

それほど居心地がよく、ときにノリノリで、癒されるコンサートだったのだ。

 

XJAPAN・YOSHIKI作曲の「紅」は、YOSHIKIが歌っているように聞こえた。

実はヴィオラという楽器は人間の声に最も近い楽器なのだという。

そもそも楽器の起源とは、人間の声から始まっているだろう。人々は声を出すことで意思を伝え合い、コミュニケーションをはかり、さらには声は歌になり、声だけでは足らずに石や木を叩き、笛を鳴らし、さまざま楽器がつくられていった。

弦楽器もルーツをたどれば、もともとはヴィオラから始まったといわれる。

人間の声に代わって感情をぶつけ合い歌い上げる楽器が、ヴィオラなのではないか。

 

ヴィオラ演奏集団SDA48というグループの存在もなかなか興味深い。

主宰者であるヴィオラ奏者の須田祥子(さちこ)さんは、もちろん演奏の技量もすばらしいが(ヒンデミット無伴奏ソナタ Op.25-1より」なんか圧巻だった)、人間的にもおもしろい人らしい。

彼女を知ったのは去年8月にサントリーホールで開かれた石田泰尚率いる弦楽合奏団「石田組」のコンサートだった。その風貌から硬派のイメージがある石田“組長”ゆえか、演奏メンバーは男の“組員”ばかりだったのが、初めて女“組員”として参加したのが彼女で、ほかのメンバーから“姐御”と呼ばれて一目置かれていた。

このときの演奏がすばらしくて、もう一度聴きたいと思っていて今回のコンサートになったのだが、彼女が主宰するヴィオラ演奏集団SDA48の設立の経緯もちょっと変わっている。

今から11年前の2013年、第一線のヴィオラ奏者であるとともに洗足学園音楽大学で講師をしていた須田さんに、大学構内に新しい建物がオープンするので「オープニング企画として先生も何かやりませんか?」と大学側から声がかかった。それなら楽しいヴィオラアンサンブルをやろうということになり、学内の書類審査を通過するためインパクトのある名前にしようと思いついたのが、須田さんの名前にちなみ、当時人気だったAKB48をもじってSDA48。といってもヴィオラの奏者が48人もいるわけではなくて、あくまでシャレ。

オープニングコンサートに出演して好評だったので再演を頼まれ、名前を変えるわけにもいかないので2回目も同じ名前でやり、やがて世間に知られるようになってますます名前を変えられなくなり、今日に至っているのだとか。

 

今回のコンサートには神奈川フィルの首席ヴィオラ奏者など国内外のオーケストラの首席奏者やオーケストラに所属している若手演奏家などが参加し、独特の温もりに満ちたアンサンブルを聞かせてくれたが、メンバーの紹介の中で、ほとんどの人が始めはヴァイオリンで、途中からヴィオラを弾くようになったという話が印象的だった。

音楽が好きで、弦楽器が好きで、何か楽器を始めようというとき、最初はとにかくヴァイオリンから始める。しかし、そのうちにヴァイオリンでは飽き足らず、あるいは限界を感じて、もっと新しい音を求めてヴィオラに転向した人が多いようで、それだけにみなさん個性的で、ヴィオラへの思い入れも強い感じだった。

ひとりだけ、14歳から楽器を始めたという遅咲きの人がいて、最初からヴィオラだった。やはりヴィオラの魅力は、ある年齢に達するとわかるのだろうか。

 

来年(2025年)は2月2日(日)に同じ紀尾井ホールでSDA48のコンサートを開催することが決まったと会場で発表があった。

待ち遠しいなー。