フランス・ボルドーの赤ワイン「レ・ヴァンダンジュ(LES VENDANGES)2019」
ボルドー右岸のワイン商ジャン・ピエール・ムエックス社が自らが所有するシャトーの畑で育てたメルロを主体にカベルネ・フランをブレンド。
メルロのチャーミングさを余すところなく表現しているとかで、日本の女性が審査する国際的なワインコンペティション「サクラアワード2024」でゴールド受賞。
ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していたドイツ映画「クレッシェンド 音楽の架け橋」。
原題「CRESCENDO #makemusicnotwar」
2019年の作品。
監督・脚本ドロール・ザハヴィ、出演ペーター・シモニシェック、ダニエル・ドンスコイ、サブリナ・アマーリほか。
長く紛争の続くイスラエルとパレスチナから集った若者たちがオーケストラを結成し、コンサートに向けて対立を乗り越えていく姿を実在する楽団をモデルに描いたヒューマンドラマ。
世界的に名の知られる指揮者のエドゥアルト・スポルク(ペーター・シモニシェック)は、紛争中のイスラエルとパレスチナ・アラブの国々から若者たちを集めてオーケストラを編成し、平和を祈ってコンサートを開くというプロジェクトに参加する。
オーケストラには、オーディションを勝ち抜き、家族の反対やイスラエル軍の検問を乗り越え、音楽家になるチャンスをつかんだ20数人の若者たちが集まったが、彼らもまた、激しくぶつかり合ってしまう。
そこでスポルクは、コンサートまでの21日間、彼らをアルプスの南チロルでの合宿に連れ出す。寝食を共にし、互いの音に耳を傾け、経験を語り合うことで、少しずつ心をひとつにしていくオーケストラの若者たち。しかし、コンサート前日に事件が起こる・・・。
「クレッシェンド」とは音楽用語で「だんだん強く」の意味。音楽により生まれた小さな共振が、やがて世界に大きく響きわたっていく。
ロシア系ユダヤ人で現代屈指の巨匠指揮者、ピアニストのダニエル・バレンボイムが、パレスチナ系アメリカ人でコロンビア大学英文学・比較文学教授のエドワード・サイードととともに1999年に設立し、イスラエルと、対立するアラブ諸国から集まった若者たちで結成された「ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団」をモデルに描いた作品。
楽団名はゲーテの著作「西東詩集(West-östlicher Divan)」からとられたというが、「共存への架け橋」を理念に現在も世界中でツアーを行うなど活動を続けているという。
映画の最後、空港で若い楽団員たちが演奏するラヴェルの「ボレロ」が感動的だった。
それにしてもパレスチナ問題はどうしたら解決するのか?
かつてこの地にイスラエル人が住んでいたのは事実で、古代イスラエル王国も存在していた。しかし、ローマ帝国に国を滅ぼされ、以後、2000年にも及ぶ流浪の歳月を送らなければならなくなった。
その後に住んだのがパレスチナ人であり、彼らにとっても長い年月の間に住み慣れたこの地は今や自分たちの国になっている。
パレスチナ問題を解決するには、イスラエルとパレスチナが互いに主権を持つ国同士として、共存していく道を探るしかない。
少なくとも、今から30年前にイスラエルとパレスチナが結んだ「オスロ合意」があるのだから、最低限そこに立ち返ることが必要なのではないか。
オスロ合意は、イスラエル軍が占領地としたヨルダン川西岸やガザ地区から撤退し、パレスチナ側が暫定的な自治を始めることで合意している。
その合意が蹂躙されているのが現実であり、今、急務なのは、イスラエルが占領地から撤退することであり、パレスチナの民族自決権にもとづきパレスチナ独立国家樹立を図り、両者が互いを認め合って共存していくことだろう。
本作の最後に演奏された、繰り返される旋律が次第にクレッシェンドして激しく、大きくなっていく「ボレロ」は、それに向かって進もうとする若者たちの決意表明と思えてならなかった。
原題にあるハッシュタグ「#makemusicnotwar」は、今の中東やウクライナにも通じる言葉だ。
Make Music Not War 戦争ではなく音楽を!