六本木のサントリーホールで東京都交響楽団(都響)定期演奏会を聴く。
10月にサントリーホールでの阪田知樹のピアノコンサートを、普通の客席とは反対側、ステージのうしろの席で聴いた。いつものコンサートとは違った雰囲気を味わえて、今度はぜひともステージうしろの、指揮者が指揮するのが正面から見える位置でオーケストラを聴きたいなと思っていたところ、都響の定期演奏会でショスタコーヴィチの「交響曲第5番」を演奏すると知り、チケットを購入。しかも一曲目のラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」のピアノは、奇しくも阪田知樹だった。指揮は同楽団音楽監督の大野和士。
開演は午後7時。その前に東京ミッドタウン・ガレリア B1にある「伊吹うどん」で「いりこ醤油うどん」を食べて腹ごしらえ。
「伊吹いりこ」を使用した特製出汁とモッチリとコシのある讃岐うどんで人気の店。
「伊吹いりこ」は、香川県の西の端、瀬戸内海に浮かぶ伊吹島の沖合で漁獲されたカタクチイワシの煮干し。その煮干しの天ぷらがご馳走になる。゛
六本木の街はイルミネーションでクリスマス気分。
お客さんが続々と集まってくる。
入口付近のロビー上部には故宇治山哲平画伯による「響」をテーマにしたモザイク壁画。
サントリーホールは、日本で初のヴィンヤード(ブドウ畑)形式によるホール。
客席数は2006席だが、1階858席、2階1148席と2階席のほうが多い。
すべての席が段々になったブドウ畑のようにステージを向いていて、音の響きは真ん中のステージから太陽の光のようにすべての席に降り注ぐ仕組みという。
音響的にも視覚的にも演奏者と聴衆が一体となって互いに臨場感あふれる音楽体験を共有できる形だそうで、ステージうしろの席は真正面にこちらを向く指揮者がいて、まるで演奏者になった気分になれる。
今回座った席はステージの斜めうしろで、すぐ下は打楽器類が並んでいる。
客席から見た、キチンと置かれたトライアングル。
いつ使われるんだろうと思っていたら、ショスタコーヴィチの「5番」の最終章の最後の最後で活躍していた。
サントリーホールが誇る世界最大級のパイプオルガン。
見えているパイプはほんの一部で、5898本ものパイプで構成されているという。
天井の照明はブドウの葉がデザインされていて、音響板も吊るされている。
音響板はその日の演奏の内容に合わせて(オケなのか室内楽なのかなど)、吊るす高さを調整できるようになっているのだとか。
一曲目は阪田知樹のピアノで、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」。
阪田は、今年のエリザベート王妃国際音楽コンクール(チャイコフスキーコンクール、ショパンコンクールと並ぶ世界三大コンクールの1つ)で4位に入賞した逸材。
この曲は、技術的難易度の高い見せ場の多い曲として知られるが、ピアノとオーケストラが見事に融合。特に最後の第3楽章、腕をグルグル回してダイナミックな大野の指揮が躍動的だった。
オーケストラを聴いて発見したのは、管楽器や打楽器の音がものすごく響いていたこと。
いつも普通にステージの前の席で聴いているときは、ステージ前方に陣取る弦楽器のバリアがあるが、今回のステージ斜めうしろの席だとそのバリアがない。管楽器や打楽器の音が直接的に響いてくるのでそう感じたのだろうか。
ついでにいえばサントリーホールの1階席と2階席では、客が座るイスの形が違っていて、2階席のイスは背もたれが高くできている。その理由は、ステージから響く音をこの高い背もたれの部分で反射させ、客の耳に反射音を届けるためなのだそうだ。
何てゼイタクな音楽空間!
この日、阪田知樹が弾いてくれたアンコール曲はニールセンの「『楽しいクリスマス』の夢」。
聴いたことのあるメロディーだなと思ったら「清しこの夜」をモチーフにした曲で、透明な響きの美しいピアノ曲だった。
2曲目のショスタコーヴィチの「交響曲第5番」は名曲中の名曲。
ベートーヴェンの「5番」もいいが、ショスタコーヴィチの「5番」も負けてないよ、といえる曲。
ティンパニがドンデンドンデンと鳴り響くと、胸が熱くなって、目頭も熱くなってくる。
演奏が終わると、鳴りやまない拍手。
指揮者は何度も何度もステージに呼び戻され、楽団員たちが去っていってもまだ拍手は鳴りやまず、この日のコンサートマスターがステージに呼び戻され、また拍手。