善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

映画「セラヴィ!」+アート展「つかの間の漂泊者」

東京・銀座のミニシネマ「ル・ステュディオ」(銀座メゾンエルメス10階)でフランス映画「セラヴィ!」を観る。

2017年の作品。

原題「LE SENS DE LA FÊTE」

監督・脚本エリック・トレダノオリビエ・ナカシュ、出演ジャン=ピエール・バクリ、ジャン=ポール・ルーブ、ジル・ルルーシュ、バンサン・マケーニュ、スザンヌ・クレマンほか。

ウエディング・プランナーとして長年、結婚式をプロデュースしてきたマックス(ジャン=ピエール・バクリ)は、無理難題を押し付ける客の好みにあわせた仕事に疲れ、引退を考えていた。私生活では、部下のジョジアーヌ(スザンヌ・クレマン)と愛人関係にあったが、別居中の妻に離婚を切り出せずにいる。

次に扱う結婚式は、17世紀のお城を舞台にした豪華なパーティで、依頼人の新郎は少々気取った面倒な男。しかも、準備の段階で、従業員同士がもめごとを起こしたり、予定していたバンドがこなくなったり、食材が腐ってしまったりとハプニングが続く。

さらには、労働監査局ふうの男がパーティにやってきたため、無届けの日雇い外国人を雇っているマックスは青ざめる。果たして、マックス、そして結婚式はどうなるのか・・・。

 

最強のふたり」(2011年)のエリック・トレダノオリビエ・ナカシュ監督が再び手がけたコメディドラマ。

最強のふたり」は体が不自由な富豪と、その介護人となった貧困層の移民の若者との交流を描く作品で、富豪と貧乏移民との“ミスマッチ”が見事にマッチしていく物語だったが、本作も、違う国籍、人種、貧富の差を超えて、人と人がつながり合っていく多様性の物語。

 

セラヴィ!」はフランス語のタイトルなので原題も同じかと思ったら、「セラヴィ!」は邦題で、原題は「LE SENS DE LA FÊTE」。

原題は「パーティの行方」といった意味だそうで、フランス語の邦題の意味は「それが人生!」という意味だとか。「何が起こっても、それがお前の人生なんだからね!」ということか。

 

映画のあとは、同じビルの8階で開催中の「エコロジー:循環をめぐるダイアローグ2 『つかの間の停泊者』」展へ。
エルメス財団がアートにおけるエコロジーの実践を問う「エコロジー:循環をめぐるダイアローグ」展を個展とグループ展の2つのダイアローグ構成で開催していて、昨年10月から今年1月までのダイアローグ1「新たな生」崔在銀展に続く第2弾。

本展ではニコラ・フロック、ケイト・ニュービー、保良雄、ラファエル・ザルカの4人のアーティストを取り上げ、コンテンポラリー・アートというプラットフォームの中で生成される自然と人間のエネルギーの循環や対話の可能性を考察する。

おもしろかったのがニコラ・フロック(1970年~)の作品。

「La couleur de l’eau,Colonnes d’eau(水の色、水柱)」(2018~2020)。

最初、絵かと思ったら写真で構成された作品だった。

彼はフランス出身でパリを拠点にイラストレーションや写真、ビデオ、彫刻、パフォーマンスなどを媒体とするアーティスト。ダイバーとしての経験を生かしながら、2010年以降は海中の景観と生息環境、その生産的生態系の写真プロジェクトに取り組んでいる。

緑と青の色調が壁面に広がるこの作品は、マルセイユ近くの海岸の海の色を撮影したもので、水深と微生物の数による濃度の変化を水体(body of water)から「切り取った」ものという。65枚の写真の色からは、マルセイユ市が公園の中心部に排水を流失させてきたことによる影響が水の色から確認できるという。

 

ケイト・ニュービー「呼んでいる、読んでいる」(2023〜24)

ケイト・ニュービー「always always always」(2023〜24)

オークランドニュージーランド)出身のケイト・ニュービー(1979年~)は、滞在する土地や人々と関係を構築し、インスピレーションを受けながらサイトスペシフィックな作品を制作。

 

滋賀県出身でパリと千葉を拠点とする保良雄(1984年~)は、3つの相関する作品から構成したインスタレーションを展開。その1つ、「noise」(2024)

原発事故により帰還困難区域とされた福島・大熊町で栽培された稲わらを原料につくった和紙を用いた円柱状のドーム。

 

「cosmos」(2024)

氷河が溶けだした水、アンナプルナで採取した石、クスノキを蒸留した結晶。地球環境の変化に思いを寄せる作品か。

 

世界中にこれだけたくさんある幾何学的形態。

ラファエル・ザルカ(1977年~)は、幾何学形態の変遷について、芸術や科学技術のみならず、スケートボードといったポップ・カルチャーの側面からも学際的に探求しているという。