イタリア・トスカーナの赤ワイン「ピアン・ディ・ノヴァ(PIAN DI NOVA)2018」
(写真はこのあとサーロインステーキ)
イタリア中部に位置するトスカーナ州で、イタリアを代表するファッションブランド「サルヴァトーレ・フェラガモ」が、中世の佇まいを残す村と周囲の広大な敷地を丸ごと購入してワインづくりを行っていて、その1本。
シラー75%、サンジョヴェーゼ25%。
時間がたつうちにやわらかくなっていく。上品な味わい。
ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「オールウェイズ」。
1989年の作品。
製作・監督スティーヴン・スピルバーグ、リチャード・ドレイファス、ホリー・ハンター、ジョン・グッドマン、オードリー・ヘップバーンほか。
仕事中に死んだ森林火災の消火にあたるパイロットが、なおも恋人を見守り続ける姿を描くファンタジー。
無茶な飛行でいつも周囲をはらはらさせている森林火災の空中消火隊員ピート(リチャード・ドレイファス)。恋人のドリンダ(ポリー・ハンター)は、誕生日にピートからドレスとハイヒールをプレゼントされた夜、現役の飛行機乗りはそろそろ引退して、パイロット養成学校の教官になるよう頼む。
死と背中合わせの仕事を続けるピートを心配したドリンダの心を察した彼は、それを約束する。ところが非番の日に起きた山火事の出動を命じられたピートは、エンジンに火のついた仲間の飛行機を助けようとして逆に爆死してしまう。
天国でハップ(オードリー・ヘップバーン)という天使と出会ったピーターは・・・。
切ないけれど納得のいく終わり方。
ヴィクター・フレミング監督、スペンサー・トレイシー主演の「ジョーと呼ばれた男」(1943年)のリメイク作品。監督のスティーヴン・スピルバーグは彼が選んだ「好きな映画ベスト10」の1つに「ジョーと呼ばれた男」をあげていて、そのリメイクが長年の夢だったという。
本作はオードリー・ヘップバーンの映画出演最後の作品でもある。
彼女は「ニューヨークの恋人たち」(81)が最後の主演映画で、その後は映画業界からは距離を置き、ユニセフ親善大使として活躍していた。スピルバーグからのオファーを受け、出演料として約100万ドルを受け取り、その金をユニセフに寄付したという。
ヘップバーンの名を世界に知らせた最初の主演映画は1953年の「ローマの休日」だが、脚本はダルトン・トランボ。そして、彼女の生涯最後となる映画の原作「ジョーと呼ばれた男」の脚本もダルトン・トランボだった。
スピルバーグがアメリカの古きよき時代の映画を愛していることがわかるシーンがあった。
若い男がヒロインのドリンダに昔の映画スターの声色(こわいろ)を聞かせる。「さて、だれでしょう?」。彼女の答えは、「ジェームズ・スチュワート。それともヘンリー・フォンダ?」。若い男がまねしたのはジョン・ウェインの声だった。
劇中に流れる「煙が目にしみる」のシーンがいい。
死んだピートが好きだったのがこの曲だった。ピートの死後、若い男がドリンダに恋して、彼女の家を訪れる。2人でレコードを聴きながらダンスを踊っているうち、いい気分になって2人がキスをしようとすると、流れてきたのが「煙が目にしみる」。その途端、彼女はピートを思い出して動きを止め、若い男を帰らせてしまう。
歌の威力のスゴサ。
この映画を見るまで、「煙が目にしみる」の煙はタバコの煙で、「タバコの煙が目にしみるぜ」とバーのカウンターかなんかで歌うシブい男の歌かと思っていたが、実はもともと失恋した女性が歌う曲だったという。
オリジナルの曲は、戦前のミュージカル映画「ロバータ」(1933年)で女優のアイリーン・ダン(「ジョーと呼ばれた男」のヒロインでもあった)が歌っていて、最初のレコーディングも女性歌手によるものだった。
戦後の1946年にナット・キング・コールがカバーし、1958年にはザ・プラターズによってリバイバル・ヒットし、以後は男性が歌う曲になったようだ。
原題は「Smoke Gets In Your Eyes」。
歌詞の終わりの部分はこんなふうだ。
So I smile and say when a lovely flame dies,
Smoke gets in your eyes.
だから私は微笑んでいうの。ステキな(愛の)炎が消えたら、
あなたも煙が目にしみるでしょうよ。
死んだ恋人が生きている恋人を守る話としては、デミ・ムーア主演の「ゴースト/ニューヨークの幻」が有名だが、「ゴースト・・・」は90年の映画で、「オールウェイズ」のほうが1年ほど早い。
ついでにその前に観た映画。
民放のBSで放送していたフランス映画「スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話」
2019年の作品。
原題「HORS NORMES」
監督・脚本エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ、出演ヴァンサン・カッセル、レダ・カテブほか。
映画「最強のふたり」のエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督の最新作。障害を抱える若者たちと、彼らに寄り添って救おうとする人々の困難な戦いを描いた、実話にもとづく映画。
フランス語の原題は「例外的」とか「規範を逸脱した」という意味らしい。
自閉症児をケアする施設「正義の声」を経営するブリュノ(ヴァンサン・カッセル)。他の施設などで見放された子どもたちも断らずに受け入れる彼の施設には、さまざまな問題を抱えた子どもたちであふれていた。
この施設では、ブリュノの友人のマリク(レダ・カテブ)に教育されたドロップアウトした若者たちが働いている。
社会からはじかれた子どもたちを救おうとしていたブリュノとマリクだったが、無認可、無資格の支援員を働かせている怪しげな団体とみなされ、当局から閉鎖命令が出される危機に・・・。
フランスでは200万人以上の観客を動員し大ヒットになったという。
無許可で運営されている施設に当局は「特別扱いはできない」というが、それに対するブリュノの反論がいい。
「どの子だってみんな特別なんだ!」
1972年の作品。
監督バリー・シアー、出演アンソニー・クイン、ヤフェット・コットー、アンソニー・フランシオーサ、ポール・ベンジャミンほか。
複数のマフィアが利権を巡って対立するニューヨークのハーレムで、イタリア系マフィアの資金洗浄用の私設銀行を黒人グループが襲って現金を強奪。報復のためマフィアが血眼になって犯人を捜す一方、警察はマフィアに殺される前に犯人を逮捕すべく、大卒のエリート黒人警部ポープ(ヤフェット・コットー)を捜査主任に任命する。だが、人種差別的な考えを持つベテラン警部マテリ(アンソニー・クイン)はポープへの敵意を隠さず、ポープもマテリに対して嫌悪感を示す・・・。
110番街はニューヨークのセントラルパーク北端を東西に走る通り。そこから北は黒人が住むハーレムで、南は白人街であり、かつてこの通りは黒人社会と白人社会を隔てる境界線だったという。
アンソニー・クインが、てっきりイタリア・マフィアのボス役で出てくるかと思ったら、たたき上げで定年退職を迫られるようになった50代の刑事役だった。
かねてより原作の小説を読んで映画化を熱望していたというクインが製作総指揮にも名を連ねている。