善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「青いパパイヤの香り」「ミラクル・ニール!」

チリの赤ワイン「モンテス・リミテッド・セレクション・カベルネ・カルメネール(MONTES LIMITED SELECTION CABERNET CARMENERE)2021」

1988年設立のチリのワイナリー、モンテスが最も得意とするカベルネ・ソーヴィニヨンと、チリを代表する品種カルメネールをブレンド

優しい口当たりで飲みやすいワイン。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたフランス・ベトナム合作の映画「青いパパイヤの香り」。

1993年の作品。

原題「L'ODEUR DE LA PAPAYE VERTE」

監督トラン・アン・ユン、出演リュ・マン・サン、トラン・ヌー・イェン・ケー、ヴォン・ホア・ホイ、トルゥオン・チー・ロック、トラン・ゴック・トゥルン、グエン・アン・ホアほか。

1951年、ベトナム。10歳の少女ムイ(リュ・マン・サン、成人後はトラン・ヌー・イェン・ケー)が、サイゴンで暮らす一家のもとへ奉公にやって来る。その家には、琵琶ばかり弾いて何もしない父と、布地屋を営む働き者の母、社会人の長男と2人の弟、そして祖母が暮らしていた。一家にはかつて幼い娘がいたが、父が家出している間に病に侵され、そのまま死んでしまった。

ムイは先輩の奉公人から仕事を教わり、朝から晩まで懸命に家事をこなしていく。そんなムイに、一家の母は亡き娘の姿を重ね合わせるのだった。ある晩、長男の友人クェンが一家を訪れ、ムイは彼に密かな憧れを抱く・・・。

 

観ていて思ったのは、日本映画に似ている、ということで、やがて「この映画は溝口健二の『雨月物語』だ!」と確信した。もちろん「雨月物語」は日本の戦国時代の戦乱の中で欲望に翻弄される男女を描いていて内容はまるで違うのだが、カメラワークは溝口健二の「雨月物語」だった。

見終わったあと改めて調べると、監督のトラン・アン・ユンは溝口健二にリスペクトの気持ちを抱いていて、彼からカメラワークの影響を受けたと語っていた。

2018年10月に来日したときのトラン・アン・ユンの発言。

「カメラワークは映画を作るうえで非常に重要で、非常にゆっくりカメラを動かしていく手法は溝口健二監督から影響を受けて取り入れました。これ以前の作品では短いショットをつなぎ合わせて作っていたけれど、うまくいかなかった。世界中の監督たちがさまざまなカメラワークで撮影していると思いますが、リアルタイムでずっと長く撮り、ほとんどカットせずにつぎはぎしないで映画をつくっていくのは溝口監督のおかげです」

そんなことを知らずに映画を観ていても、溝口健二の「雨月物語」をすぐに連想するぐらいだから、トラン・アン・ユンはよほど「雨月物語」を何度も何度も繰り返し観て、撮影手法を学んだのだろう。

新進監督はこうして先輩監督から貪欲に技術を学び、やがて自分の世界をつくっていくのだろう。

 

1993年の第46回カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞。

監督のトラン・アン・ユンはベトナムで生まれダナンで育ったが、ベトナム戦争アメリカ軍が全面撤退に追いやられサイゴンが陥落した1975年、12歳のときにベトナムから逃れる両親とともにフランスに亡命。リヨンの映画学校を卒業して、本作が監督デビュー作品。

パリ郊外にセットをつくって撮影した本作では、ほとんどの俳優がフランス在住のベトナム人で、映画初出演だったという。

子ども時代のムイを演じたリュ・マン・サン(Lu Man San)がまさしく“青いパパイヤ” みたいで初々しく、自然な演技に好感がもてた。

彼女も映画は素人だったみたいで、1980年12月、フランス生まれ、映画出演は本作のみ、ということぐらしいかわからない。ということはこの映画のとき12歳ぐらい。

真っ直ぐに見つめる彼女の瞳が印象的だった。

映画はムイが10歳のときの1951年からその10年後までを描いているが、そのころのベトナムは、フランス(その後はアメリカ)の植民地支配から脱するための独立戦争の最中だった。しかし、当時、南ベトナムの首都だったサイゴンは、フランスやアメリカに守られて、人々は何事もなかったように暮している。

映画の後半になって、上空を飛ぶ軍用機の爆音が聞こえるようになったが、登場人物たちはいっときの「平和」を慈しんでいるようだった。

 

ついでにその前に観た映画。

NHKBSで放送していたイギリス映画「ミラクル・ニール!」

2015年の作品。

原題「ABSOLUTELY ANYTHING」

監督・脚本テリー・ジョーンズ、出演サイモン・ペッグケイト・ベッキンセイルロビン・ウィリアムス(声の出演)ほか。

地球外生命体を求めて打ち上げられた探査船が、遠い宇宙の果てにいるエイリアンたちの「評議会」のもとに届く。彼らは地球人の無能さに呆れ、地球を消滅させることにするが、1度は機会を与えるべきだとする銀河法の規定により適当に1人の地球人を選んで、全知全能の力を授けると決める。

選ばれたのは冴えない中学校教師ニール(サイモン・ペッグ)。当初は自分が力を得たことに気付いていなかったが、同僚の理科教師との会話で口にした「自分のクラスが宇宙船に襲われて消滅すればいい」との言葉が現実になってしまう。

全知全能の自分の力に気付いたニールはやがて、理想の体を手に入れたり、愛犬デニス(声:ロビン・ウィリアムズ)に喋れる能力と理性的な思考回路を授けたりと、彼の使い道はどれもしょうもないものばかりで・・・。

 

ひょんなことから宇宙人に地球の命運を託され、何でも願いがかなう全知全能の力を与えられてしまった平凡な中年男が、さまざまなトラブルを巻き起こすSFコメディー。

監督はイギリスの伝説的コメディー集団“モンティ・パイソン”のテリー・ジョーンズ。映画監督でもあるテリー・ギリアムらパイソンのメンバーが宇宙人たちの声、2014年に亡くなったロビン・ウィリアムスがニールの愛犬の声を務めて話題となった。

 

原題の「ABSOLUTELY ANYTHING」とは、直訳すれば「絶対に何でも」、要するに「全知全能」という意味。

邦題の「ミラクル・ニール!」もなかなか考えたタイトルといえるが。

 

ところで、映画とはまるで関係ないが、世界の天文学者は「宇宙人は必ずいるはず」と探していて、40年前、日本の科学者が宇宙のどこかにいるかもしれない「地球外知的生命」に届けたいと、七夕のひこ星(アルタイル)に向けて電波にのせてメッセージを発信。「ひょっとして返事がきているかもしれない」と、返信の観測に挑むプロジェクトがこの夏、本格的に始動した、というニュースがあった。

だいぶ昔、国立天文台の教授をしておられた天文学者渡部潤一さんの話を聞く機会があったが、「宇宙人(地球外生命体)はいますか?」と質問したら「そりゃ、いますよ」と答えてくれた。世界の天文学者は、宇宙人の存在をほぼ確信しているのだという。

「宇宙人はすでに地球にきている」と発言する人もいて、その人はスタンフォード大学医学部の現役の教授。

とすると、本作のような映画があってもおかしくないのかもしれない。