善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「まわり道」「ストリート・オブ・ファイアー」ほか

きのうの、というよりここ最近飲んだワインと、ここ最近見た映画。

 

チリの赤ワイン「コルディエラ・カリニャン・ヴィーニョ(CORDILLERA CARIGNAN VIGNO)2018」

スペインワインを牽引するトーレスが欧州の伝統と技術を用いてチリで手がけるワイン。

チリ最古のワイン生産地の1つマウレ・ヴァレーで育つ樹齢60年以上の古樹のカリニャンを使用。濃縮した果実味、フルボディだが飲みやすい口当たりが印象的。

 

イタリア・プーリアの赤ワイン「フィキモリ(FICHIMORI)2022」

(写真はこのあと肉料理)

ワイナリーのトルマレスカは、アンティノリがプーリア州に設立したワイナリー。

ネグロアマーロとシラーをブレンド

夏には赤ワインを冷やして飲むという伝統がプーリア州にあり、それをヒントにつくられたワイン。

酷暑の夜、冷蔵庫で冷やしてから飲む。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していた西ドイツの映画「まわり道」(4Kレストア版)。

1975年の作品(日本初公開は1977年)。

原題「FALSCHE BEWEGUNG」

監督ビム・ベンダース、脚本ペーター・ハントケ、出演リュディガー・フォグラー、ハンナ・シグラナスターシャ・キンスキー、ハンス・クリスチャン・ブレヒほか。

 

今年(2023年)のカンヌ国際映画祭役所広司が最優秀男優賞を受賞した「PERFECT DAYS」(日本公開未定)の監督ヴィム・ヴェンダースが、「都会のアリス」に続いてつくった“ロードムービー3部作”の第2作。ゲーテの小説「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」を現代に翻案し、さまよえる若者の孤独を描く。

 

北海に近い街に母と2人で住むドイツ人青年ヴィルヘルム(リュディガー・フォグラー)。作家を志しながらも迷いを抱えてスランプに陥り、書くことができなくなった彼は、母親に勧められてボン(当時の西ドイツの首都)をめざしての旅に出る。

大道芸人の老人ラエルテス(ハンス・クリスチャン・ブレヒ)と、彼の孫娘で言葉を発することのない少女ミニョン(ナスターシャ・キンスキー)、美しい女優テレーゼ(ハンナ・シグラ)らと行動を共にすることになった彼は、さまざまなことを語らいながら旅を続け、テレーゼとは愛し合うようになる。

しかし、結局、彼らはいつしか別れを告げてバラバラに散っていき、ヴィルヘルムは再び一人になる。「まわり道」の果てに彼がたどり着いたのは・・・?

 

邦題は「まわり道」となっているが、原題の「FALSCHE BEWEGUNG」を直訳すれば「間違った動き」ということになる。

少女ミニョンを演じたのはナスターシャ・キンスキーで、彼女のデビュー作。

監督のヴェンダースはディスコで見つけた女の子が気に入ってスカウト。彼女の家に行くと、性格俳優として知られるクラウス・キンスキーの家だった。ヴェンダースは有名俳優の娘と知らずにスカウトしたのだった。しかも、はじめは18歳と聞かされたものの、いざ契約の段になるとナスターシャは13歳だった、という逸話が残っている。

 

民放のBSで放送していたアメリカ映画「ストリート・オブ・ファイアー」。

1984年の作品。

原題「STREETS OF FIRE」

監督ウォルター・ヒル、出演マイケル・パレダイアン・レインウィレム・デフォーエイミー・マディガンほか。

リーゼントに革ジャン姿のツッパリ、ロック音楽に派手なアクション、物語のスジは西部劇風の青春ヒーロー映画。40年近く前の映画だが、2018年7月にデジタルリマスター版でリバイバル公開されたときの映像なので、画像は鮮明。

 

とある街のロック歌手のエレン(ダイアン・レイン)が、レイブン(ウィレム・デフォー)率いるストリートギャングの「ボンバーズ」に誘拐された。それを知ったエレンの元恋人で流れ者のトム・コーディ(マイケル・パレ)が帰ってくる。

トムは女兵士マッコイ(エイミー・マディガン)とともにエレン救出に乗り出すことに。ショットガンを手にレイブンのアジトを急襲。無事、エレンを救出して街に戻るが、怒ったレイブンとトムの一対一の対決が始まる・・・。

 

何とウィレム・デフォーが街のチンピラ役。彼はこのとき29歳。まだ映画出演5作目で駆け出しの俳優だった。

歌姫役のダイアン・レインに至ってはまだ19歳だが、彼女は1979年、14歳のときに映画デビューしてローレンス・オリビエと共演して演技が絶賛され、人気が高かったという。

ダイアン・レインが歌う挿入歌がどれもすばらしい。

ただし、彼女自身は歌に意欲を見せていたものの、冒頭と終盤のコンサート・シーンで歌う2曲は別の歌手による吹き替えという。

また、ダイアン・レインがステージで歌う2曲についても、1人の音量ではボーカルの厚みが薄くなるとの理由で、2、3人のボーカリストがユニゾンで歌ったものを電子的に合成してつくった、とこの映画の音楽スーパーバイザーが述べている。

口パクは映画の常だから、ダイアン・レインの歌唱力、じゃない演技力をほめるべきだろう。

 

民放のBSで放送していたフランスのドキュメンタリー映画ダ・ヴィンチは誰に微笑む」。

2021年の作品。

原題「THE SAVIOR FOR SALE」

監督アントワーヌ・ビトキーヌ。

 

レオナルド・ダ・ビンチの最後の傑作とされ、“男性版モナリザ”とも評される「サルバトール・ムンディ」が史上最高額の510億円で落札された2017年の出来事をもとに、アート界の闇を暴いたドキュメンタリー。

 

1500年ごろに描かれたとされるこの作品は数奇な運命をたどる。

17世紀にイギリスの王家などの記録にそれらしき絵画が確認できるものの、いつしか所在不明となり、20世紀になって突然、ある美術収集家のコレクションに現れる。美術収集家にこの絵を売ったのは、ダ・ヴィンチの専門家であるイギリスの美術商。

美術商は1900年のクリスティーズ・ロンドンのオークションでこの絵を見つけて、おそらくダ・ヴィンチの弟子の絵であろうと鑑定し、6ポンド6セントで落札すると、それを美術収集家に120ポンドで転売したのだった。

作品は美術収集家のコレクションとして代々受け継がれたが、結局、財政難からすべて売却されることに。1958年のサザビーズ・ロンドンのオークションでアメリカ人コレクターに、わずか45ポンド(約4万5000円)で落札される。

その後、アメリカ人コレクターには子どもがいなかったため、彼の美術コレクションは甥に受け継がれ、2004年にその甥が亡くなったとき、遺産を相続した長男はコレクションをすべて処分することにする。クリスティーズの担当者を呼んで目ぼしいものを引き取ってもらったものの、「サルヴァトール・ムンディ」は価値がないというのでリストから漏れる。

長男はコレクションの残りを地元ニューオーリンズのギャラリーに頼んでオークションで売り出すと、2005年のこのオークションをオンライン・データベースで発見して、「サルヴァトール・ムンディ」を落札したのが、ニューヨークの美術商。落札額は1175ドル(約13万円)だった。

美術商がこの絵を落札したのは、手や衣装の襞に優れた筆触が認められてルネサンス時代のものであると感じたからというが、彼は実物を見ることなく、電話での入札でこの絵を手に入れた。彼は当初、実物を見ても本物のダ・ヴィンチの絵であるとは考えなかったようだが、次第に「値打ちものかもしれない」と考え始める。

ロンドンのナショナル・ギャラリーに接触すると、専門家の鑑定によりダ・ビンチの作品とのお墨付きを得る。すると群がってきたのが、投資目的の大財閥や、手数料を騙し取ろうとする仲介人、大衆を利用して絵の価値を釣り上げるマーケティングマンとそれに利用されるハリウッドスター、国際政治での暗躍が噂される某国の王子など、それぞれ思惑を抱えた人々だった。

そしてついに2017年、一般市場で流通している美術作品としては市場最高額となる日本円で510億円で落札される。

のちに購入者や大金の出所が明らかにされ、ルーブル美術館まで巻き込んだ新たなナゾへと発展していく・・・。

 

原題の「THE SAVIOR FOR SALE」とは日本語に訳せば「売りに出された救世主」となるが、いったい誰のための救世主なのか?