善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「真実の瞬間(とき)」「グローリー」「悪のクロニクル」

チリの赤ワイン「モンテス・アウター・リミッツ・サンソー(MONTES OUTER LIMITS CINSAULT)2021」

(写真はこのあと豚のソテー甘夏マーマレード添え)

南北に長いチリの南にあるイタタ・ヴァレーはブドウ栽培の極限の地といわれ、そこでつくるおいしいワインというので「OUTER LIMITS=ぎりぎりの限界」。

地中海沿岸地域で主に栽培されてきた黒ブドウ品種サンソー100%。

サンソーならではのエレガントな果実味と高い酸味が調和した味わい。

 

ふだんは日本酒だが、たまに飲むワイン。

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「真実の瞬間(とき)」。

1991年の作品。

原題「GUILTY BY SUSPICION」

監督・脚本アーウィン・ウィンクラー、出演ロバート・デ・ニーロアネット・ベニング、パトリシア・ウェティッグ、クリス・クーパーマーティン・スコセッシほか。

ハリウッド映画史上の暗黒部分である「赤狩り」に巻き混まれた人々の姿を真正面から描いた社会派ドラマの力作。映画監督のマーティン・スコセッシも俳優として出演している。

 

1951年9月、売れっ子監督デイヴィッド・メリル(ロバート・デ・ニーロ)がフランスから帰国。仕事のしすぎで妻のルース(アネット・ベニング)とは別居しており、息子のポーリー(ルーク・エドワーズ)をまじえてときどき会う関係だった。

ところが、帰国パーティの席上、突然、友人で女優のドロシー・ノーラン(パトリシア・ウェティッグ)が夫のシナリオ・ライター、ラリー(クリス・クーパー)をなじり始めた。彼が共産主義者を取り締まる非活動委員会に友人を売ったというのだ。

翌日、20世紀フォックス社の社長から呼び出しを受けたデイヴィッドは、ブラック・リストに名前が挙がっているので、それから逃れるために誰かを売ることを勧められる。断固拒否して席を立ったデイヴィッドだったが、友人の監督ジョー・レッサー(マーティン・スコセッシ)は逮捕を予期してロンドンへ発った。

密告により仲間を売ることを拒んだデイヴィッドは仕事を奪われ、撮影所には出入り禁止。B級映画の仕事すらなくなり、求職のためニューヨークへ行くが、FBIの尾行がつき、行く先々でいやがらせの妨害にあう。力になってくれたのは別れて暮らす妻のルースだけだった。

やがて、デイヴィッドが審問会に喚問される日がきた。彼は胸を張って政治家たちの欺瞞に立ち向かうのだった。

 

映画公開当時、ハリウッドが自分たちの汚点である「赤狩り」を初めて真正面から取り上げた作品の1つとして注目された。

第二次世界大戦後の冷戦の時代、アメリカを吹き荒れた「赤狩り」では、政府が共産主義の拡大を恐れて人々の思想・信条の自由を奪い、政治的立場を理由に職場から追放したり、密告を強要したりした。ハリウッドでも多くの優れた監督・脚本家が転向させられるか、業界から追放されるかしたが、迫害を受けた映画人のほとんどは、共産党員でもない進歩的・良心的人たちだった。

支配者たちにとっては「共産主義」というレッテルを張ることによって、自分たちに都合の悪い思想や言論(それは自由や人権を訴えることなのだが)を排斥したいのだろう。

映画では、原水爆に反対する集会に参加したことも、ソ連に味方する非国民として取り締まりの対象となっていた。

しかもこうした「共産主義」のレッテル張りによる言論封殺は昔のことではなく、今もアメリカで大手を振っているから恐ろしい。

その代表が、自分の意に沿わない発言にはすべて「共産主義者」にしてしまうトランプ前大統領なのだから、アメリカってホントに民主主義の先進国なの?人権が守られてないって中国を批判できるの?と思ってしまう。

 

民放のBSで放送していたアメリカ映画「グローリー」。

1989年の作品。

原題「GLORY」

監督エドワード・ズウィック、出演マショー・ブロデリック、デンゼル・ワシントン、ケイリー・エルウィス、モーガン・フリーマンほか。

 

南北戦争を舞台に、実在したアメリカ史上初の黒人部隊を描いた戦争ドラマ。

アメリカが南北戦争に突入した1860年代初頭。若き北軍大尉ロバート・グールド・ショー(マショー・ブロデリック)は、北軍初の正規編成による黒人だけの部隊、第54連隊の指揮官に任命され、大佐に昇任する。

入隊志願者の多くは南部から逃れてきた元奴隷の人々で、戦闘経験こそないが士気は高い。しかし北軍内部にも根強い人種差別が蔓延しており、必要物資は支給されず、戦闘にも加わることができない。過酷な訓練を続ける中で、ショーは兵士たちとの間に厚い信頼関係を築いていく。

やがて、ショーの必死の訴えによりようやく戦闘に参加した彼らは・・・。

 

元奴隷の黒人兵を演じたデンゼル・ワシントンアカデミー賞助演男優賞を受賞。ほかに録音賞、撮影賞を受賞。

 

主人公のロバート・グールド・ショーは実在の人物で、父親は奴隷解放運動家だった。

評伝によれば、10代のころにヨーロッパに留学・旅行した経験があり、ハーバード大学で学んだ(卒業前に退学)。新設された全黒人連隊「第54マサチューセッツ歩兵連隊」の指揮をとるという話はもともと父親から持ちかけられたもので、最初は断ったが熟慮の末に引き受けたという。

黒人部隊を率いることに最初は疑問を持っていたが、部下たちの献身が彼に強い印象を与え、やがて彼らを素晴らしい兵士だと尊敬するようになっていった。

黒人兵士が白人兵士より少ない給与を受け取ることを知ったとき、彼はこの不平等が改善されるまでボイコットさせた。第54連隊と、やはり黒人だけでつくる姉妹部隊の第55連隊は、合衆国議会が黒人の給料を白人と同じ金額にするまで、給与の受け取りを拒否したという。

映画でも描かれているが、1863年7月、彼が率いる第54連隊は白人部隊とともに難攻不落の南軍の要塞、ワグナー要塞攻略の先頭部隊として突撃。南軍の砲撃の凄まじさに兵士たちが進軍を躊躇していると、「前進、第54連隊、前進」と叫んで先頭に立って進んだところを銃撃された。彼は心臓を撃たれ、ほぼ即死だったといわれる。25歳の若さだった。

この戦いは南軍の勝利に終わったが、戦いのあと、南軍は彼を部下である黒人兵らと一緒に集団墓地に埋葬した。それは侮辱を意図した行為だったそうだが、ショーの父親は「息子がそのような方法で埋葬されたことを誇りに思う」と語ったという。

 

題名の「グローリー(GLORY)」とは「栄光」とか「誉れ」という意味で、人の偉大さや功績の大きさなどを表現する際に使われるという。

そういえば公民権運動の指導者キング牧師を描いた映画も、原題は「SELMA(キング牧師らがデモ行進を始めた町の名前)」だったが、邦題は「グローリー/明日への行進」(2014年)だった。

 

民放のBSで放送していた韓国映画「悪のクロニクル」。

2015年の作品。

監督・脚本ペク・ウナク、出演ソン・ヒョンジュ、パク・ソジュン、マ・ドンソク、チェ・ダニエルほか。

 

警察内部の“闇”を描き、最後にどんでん返しの意外な展開が待ち受けるサスペンス映画。

名誉ある大統領賞を授与され、昇進を控える敏腕刑事のチェ(ソン・ヒョンジュ)。同僚たちによる祝宴の帰りに乗ったタクシーで眠っている間に、人けのない場所に連れていかれる。ナイフを手に襲いかかる運転手との乱闘の末、誤って殺してしまったチェは昇進に影響することを恐れ、証拠を隠滅しその場を去る。

ところが翌朝、チェが殺した運転手の死体が警察署の目の前にある工事現場のクレーンに吊るされた状態で発見される。

事件を担当することになったチェだが、事実を隠蔽するため画策する中、不可解な出来事が次々と起こり、チェは底知れぬ罠に巻き込まれていることに気がつく・・・。

 

なかなか見応えのある作品。

原題の日本語訳は「悪の年代記、あるいは編年史」。実は、警察内部には“悪”がはびこっていて、チェ1人ではないことを暗示しているが、邦題は英語の題名(THE CHRONICLES OF EVIL)をそのまま使って「悪のクロニクル」。

マ・ドンソクが主役のチェの部下の刑事役で出演していたが、筋肉モリモリで一クセも二クセもありそうな俳優だけにきっと何かあると思って見ていたのに、真面目な役柄に終わって意外だった。これはいわば逆どんでん返しか?