善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「騎兵隊」他

チリの赤ワイン「コルディラ・カリニャン・ヴィーニョ(CORDILLERA CARIGNAN VIGNO)2017」

(写真はこのあとメイン料理にデザート)f:id:macchi105:20210623171809j:plain

スペインのトーレスがヨーロッパの伝統と技術を用いてチリで手がけるワイン。

チリ最古のワイン生産地の1つマウレ・ヴァレーでとれたカリニャン種を使っている。

チリのプレミアムワインというのにふさわしい味わい。

 

ワインの友で観たのは民放のBSで放送していたアメリカ映画「騎兵隊」。

1959年の作品。

原題「THE HORSE SOLDIERS」

監督ジョン・フォード、出演ジョン・ウェインウィリアム・ホールデン、コンスタンス・タワーズほか。

 

南北戦争時の北軍の騎兵隊の活躍を描いた映画。

 

この映画について、意外なことを知った。北軍に反感を持つ家の黒人の女中役で出演していたアリシアギブソンは、黒人テニス選手の草分けとして活躍した人で、全豪・全仏・ウィンブルドン・全米の四大大会(グランドスラム)女子シングルスで通算5度の優勝をとげた伝説のプレーヤーだった(ダブルスでの優勝経験もある)。

映画の彼女は、ほとんどセリフはなかったものの、ヒロインといつも一緒にいる重要な役どころだったが、それにしても歴史に名を残すほどのテニス選手がなぜ、女中役で出ていたのか?

 

ギブソンは極貧の家庭に生まれ、マンハッタンのスラム街・ハーレムで育ったという。そこで黒人テニス選手の育成に尽力していた黒人医師と出会い、才能を開花していく。しかし、彼女が活躍し始めた1940年代後半から50年代にかけては、人種差別がとても激しい時代。特にテニスは「白人のスポーツ」とされ、黒人が活躍する場などなく、さらに女性となるとその道はほぼ閉ざされていたという。

並外れた実力でその壁を突き崩していったのがギブソンだった。それでも世界に手が届くまでには時間がかかり、最初のグランドスラム優勝は1956年の全仏で、彼女が29歳のときだった。その後、57年にウィンブルドンと全米、58年もウィンブルドンと全米で優勝している。

それでも彼女は貧しかった。今の大坂なおみなどとはえらい違いで、当時のグランドスラムはアマチュアの大会(1968年にプロ選手の出場を解禁しオープン化)であり、優勝を讃える名誉はあっても賞金がなかったので、生活が潤うことはなかった。

そこで、生計をたてるため58年の全米のあと彼女はプロに転向する。しかし、当時は女子プロテニスのための競技会もなく、プロで戦う同僚選手もほとんどいなかったという。

テニスがダメならゴルフでと、その後、プロゴルファーになるも、ゴルフ界もまた“男の世界”であり、ましてや黒人は、ツアーで全米を回りたくてもホテルが黒人の宿泊を拒否していたため、事実上参加が不可能だった。

 

世界の頂点に立つほどの才能がありながら、黒人であり、なおかつ女性であるがゆえに困窮を強いられる現実。映画「騎兵隊」のアメリカでの公開は1959年6月だから、58年の全米で優勝した直後に撮影された映画かもしれないが、映画出演で彼女は少しは生活にゆとりが持てたのだろうか。差別になんか負けず、自分の道を切り開くためには俳優だってやる。彼女の気概が伝わってくる。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたイギリス映画「荒野にて」。

2017年の作品。

原題は「LEAN ON PETE」

監督アンドリュー・ヘイ、出演チャーリー・プラマー、クロエ・セヴィニー、トラヴィス・フィメル、スティーヴ・ザーンほか。

 

幼いころに母親が家出し、ポートランドでその日暮らしの父親と2人で生活する15歳のチャーリーは、家計を助けるため厩舎で競走馬リーン・オン・ピートの世話をする仕事をしていた。しかし、そんなある日、父親が愛人の夫に殺されてしまう。さらに、試合に勝てなくなったピートの殺処分が決定したという知らせを受けたチャーリーは、ひとりピートを連れて逃げ出し、ワイオミングに住む唯一の親戚である叔母を探すため荒野へと一歩を踏み出す。

 

原題が「LEAN ON PETE」とあるので“ピートに頼る”物語かと思ったら、LEAN ON PETEは映画に出てくる競走馬の名前だった。

要するに「ピート、頼んだよ、1着になって金を稼がせてくれ」という意味を込めて馬主が名づけた名前なんだろう。

実際、映画では主人公のチャーリーはピートと一緒に旅をして頼っているのは確かなんだが、ピートは途中で死んでしまって、その後はチャーリーひとりで旅を続けることになるんだが。

 

民放のBSで放送していたアメリカ・イギリス合作の映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

2019年の作品。

監督クエンティン・タランティーノ、出演レオナルド・ディカプリオブラッド・ピットほか。

1969年にハリウッド女優シャロン・テートがカルト集団に殺害された事件をモチーフに、映画製作への郷愁を込めて描いた作品。落ち目ながら復活を期す俳優(レオナルド・ディカプリオ)と相棒のスタントマン(ブラッド・ピット)との友情のドラマに、映画や音楽など当時のカルチャーをぎっしり詰め込こんで観客を60年代の世界に誘う。

 

たしかに懐かしいシーンのオンパレードで、TVガイド誌の表紙とかマカロニウェスタンとか当時のテレビ番組の話、スティーブ・マックイーンブルース・リーが実名で登場している(それにしては、白人は強いんだぞといいたいのかブルース・リーが弱すぎるのは許せないが)。そして最後はバイオレンス・・・。