善福寺公園めぐり

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きのうのワイン+映画「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」他

ニュージーランドの赤ワイン「セラー・セレクション・メルロ(CELLAR SELECTION MERLOT)2019」f:id:macchi105:20220309204342j:plain

ワイナリーはシレーニ・エステート。ニュージーランド北島、東寄りの海に近い都市ホークス・ベイに位置し、ワイナリー名はローマ神話に登場する酒の神であるバッカスの従者シレーニ神に由来しているという。

 

NHK総合で放送していたアメリカ映画「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」。

2017年の作品。

監督ジョナサン・デイトンヴァレリー・ファリス、出演エマ・ストーン、スティーブ・カレルほか。

 

ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンが実在のテニスの女王を演じ、1970年代に全世界がその行方を見守った世紀のテニスマッチ「Battle of the Sexes(性差を超えた戦い)」を映画化。

 

73年、女子テニスの世界チャンピオンであるビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)は、女子の優勝賞金が男子の8分の1であるなど男女格差の激しいテニス界の現状に異議を唱え、仲間とともにテニス協会を脱退して「女子テニス協会」を立ち上げる。そんな彼女に、元男子世界チャンピオンのボビー・リッグス(スティーブ・カレル)が男性優位主義の代表として挑戦状を叩きつける。

ギャンブル癖のせいで妻から別れを告げられたボビーは、この試合に人生の一発逆転をかけていた。一度は挑戦を拒否したビリー・ジーンだったが、ついに試合に臨むことを決意する・・・。

 

実話にもとづく物語なので、試合のシーンも実話通りのようだったが、男性対女性の試合といっても55歳の元チャンピオンと現役の世界女王との差は歴然としていて、3セット連取でビリー・ジーンが圧倒して終わっちゃったらしい。それでも、映画を見るとなかなか白熱した試合で見応えがあったのは、映画のつくり方がうまかったからだろう。

 

この映画を見ていて「そういえば」と思ったことがあった。

たしか、主人公のビリー・ジーン・キングは日本では「キング夫人」と呼ばれていた。もう一人有名なテニスプレーヤーにマーガレット・スミス・コートという人がいたが、「コート夫人」と呼ばれていた。

2人は結婚後、夫の姓を名乗り(マーガレットは両方の姓を併用)、フルネームで表記するにはやや長いから、キング氏、コート氏の奥さんというのでキング夫人、コート夫人と呼んだのだろうが、日本人の場合だったら“田村で金、谷で金、ママでも金”の柔道・谷亮子選手(旧姓は田村)を、谷夫人とは呼ばない。

テニス界ではなぜ「夫人」だったかというと、プロ・テニスは男性優位であり“紳士のスポーツ”という因習の名残かもしれないが、女性を男性の付属物と見た結果が「夫人」という呼び方だったといえるのかもしれない。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していた韓国映画「82年生まれ、キム・ジヨン」。

2019年の作品。

監督キム・ドヨン、出演チョン・ユミ、コン・ユ、キム・ミギョンほか。

 

平凡な女性の人生を通して韓国の現代女性にのしかかる重圧と生きづらさを描き、韓国で136万部を突破する大ベストセラーとなったチョ・ナムジュの小説を映画化。

キム・ジヨンというのは韓国における82年生まれに最も多い名前だというが、小説ではそんな彼女の誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児までの半生を克明に回顧していき、女性の人生に当たり前のようにひそむ家父長制の問題や性差などが淡々と描かれているという。そして、彼女はある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したように振る舞い始めるようになる。抑圧に耐えた彼女はついには精神を崩壊するまでに至ってしまうのだった。

本は大きな反響を呼び、韓国の国会議員が文在寅大統領の就任記念に「女性が平等な夢を見ることができる世界をつくってほしい」と手紙を添えてプレゼントしたというエピソードまであるという。

 

小説を読んでないので何ともいえないが、映画も小説の内容に沿って描かれているのだろう。

しかし、映画では、彼女が出産し、会社を辞めて専業主婦になり、子育てに追われるあまり人格崩壊を起こしたように描かれている(嫁姑問題も多少は描かれているが)。

彼女は本当は働いて、自分の才能を発揮したいし、社会の一員としての役割を果たしたいと思っているが、それができない。夫の協力を得るとか、保育所に子どもを通わせるとかすれば可能だと思うが、彼女はそれをしない。夫もはっきりした態度を示さず、優柔不断。

映画のラストも何だかあいまいなままで終わってしまった感があるのが残念。

彼女に味方し、娘を守ろうとする母親の描かれ方がとてもよく、そこに救われた。