善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「ラビング 愛という名前のふたり」ほか

南アフリカの赤ワイン「ルックアウト・ケープ・レオパード・マウンテン・レッド(LOOKOUT CAPE LEOPARD MOUNTAIN RED)2020」

ワイナリーはレオパーズ・リープ。

大手企業グループが所有するワイナリーが多い南アフリカの中でも、家族経営で良質なワインを造り続けているのだとか。

生産地は西ケープ州最大の地区スワトーランド。

ブドウ品種はシラー、サムソ、ピノタージュ。

レオパードとは西ケープ州をすみかとするケープ・マウンテン・レオパード(山ヒョウ)のことで、ラベルにも描かれている。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたイギリス・アメリカ合作の映画「ラビング 愛という名前のふたり」。               

2016年の作品。

原題「LOVING」

監督ジェフ・ニコルズ、出演ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガほか。

 

愛を貫き通すべくたたかった、その名もラビング(LOVING)夫妻の実話を映画化したヒューマンラブストーリー。

 

1958年のアメリカ南部バージニア州。大工で白人のリチャード・ラビング(ジョエル・エドガートン)は、恋人で黒人のミルドレッド(ルース・ネッガ)から妊娠したと告げられ、大喜びで結婚を申し込む。

当時、バージニア州では異人種間の結婚は法律で禁止されていた。だが、子どものころに出会って育んだ友情が、愛情へと変わっていったリチャードとミルドレッドにとって、別れるなどあり得ないことだった。

このとき、新婦は18歳、新郎は24歳。2人は、法律で許されるワシントンDCで結婚し、地元に戻る。ところが、夜中に突然現れた保安官に逮捕されてしまう。

離婚か、生まれ故郷を捨てるか、2つに1つの選択を迫られる。しかし、愛を貫きたい2人は隠れ家で一緒に暮らし、やがて3人の子どもに恵まれ、ついに行動に出る。

そのころのアメリカは民主党ケネディ大統領の時代となっていた。きっかけは、妻のミルドレッドが1963年、ケネディ大統領の弟であるロバート・ケネディ司法長官に書いた1通の手紙だった。そこには、愛する夫と生まれ故郷で夫婦として暮らしたいという、ごく当たり前の願いが綴られていた。

手紙は、自由権の擁護を目的に活動するNGO団体「アメリカ自由人権協会(ACLU)」にゆだねられ、裁判となって最高裁に持ち込まれることになる・・・。

 

結局2人はバージニア州を相手に裁判で訴え、1967年、最高裁判所は全員一致で異人種間結婚を禁じる法律を無効にした。それ以降、異人種同士の結婚は合法となっている。

それにしてもアメリカでは、今からわずか60年ぐらい前まで、州によっては白人と黒人など異人種間の結婚が法律で禁じられていたというのだから驚きだ。アパルトヘイト下だった南アフリカでも、ナチス政権当時のドイツでもなく、ほとんど現代といっていいアメリカの、それが現実だった。

異人種間の結婚を禁じる理由は、キリスト教の教えに反するからだという。

 

アメリカにおける異人種婚禁止の歴史は1691年に始まるといわれている。イギリスの植民地だった地域で、黒人や白人と黒人の混血、インディアンが白人との間で同衾することによって増加するかもしれない忌まわしい混交と邪悪な出生を防ぐことを目的に、異人種間の結婚は罰せられ、領地から永遠に退去させられると定められた。

この法律は、アメリカがイギリスから独立して合衆国になったあとも存続した。

1800年代後半までに、全米の38州で異人種間結婚を禁止する法律が制定された。当初は黒人などが対象だったが、やがてアジア系も付け加えられていったという。

植民地時代から始まって300年近くもたって、アメリカの国民はようやく自由な婚姻を勝ち取ることになったわけだが、人種差別の意識はいまだに根強く残っているようだ。

アラバマ州では、最高裁の判決後も異人種間結婚を禁じる法律が残っていて、公式に合法化されたのはようやく2000年になってからだった。

2019年9月には、「同性婚や異人種間の結婚はキリスト教の信仰に反する」として、ミシシッピ州の結婚式場のオーナーが黒人男性と白人女性の結婚式を拒否する事件が起こっている。

信仰によって「正しいこと」と信じてしまっているとしたら、その考えを改めるのはかなり大変な努力が必要なのかもしれない。

しかし、そんな現実に、諦め、我慢するのではなく、「そんなのおかしい」と声を上げる人がいるからこそ、自由も得られるのだろう。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「ディボースショウ」。

2003年の作品。

原題「INTOLERABLE CRUELTY」

監督・脚本・製作コーエン兄弟、出演ジョージ・クルーニーキャサリン・ゼタ・ジョーンズほか。

 

凄腕でいささか倫理観欠乏気味の離婚訴訟専門弁護士マイルズ(ジョージ・クルーニー)は、離婚して財産と自由を手にしようとするマリリン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)に勝訴する。彼女は、美貌で男たちを手玉にとり、金持ちと結婚するやすぐに離婚して相手の金をむしりとるという悪女だった。そんな彼女が裁判に負けてそのまま引き下がるはずはなく、リベンジに燃えてマイルズに近づいていく・・・。

 

アメリカには「プリナップ」と呼ばれる「婚前契約」の制度がある。

普通、夫婦が離婚すると財産は折半されるものだが、金持ちの夫たちはそんなことなったら大損だというわけで、離婚したら財産分与はここまで、と決めておく婚前契約書を作成するのだとか(今では金持ちだけでなく一般の人も婚前契約書をかわすケースが増えているらしいが)。

訴訟大国であり、契約社会でもあるアメリカならではの話で、その契約書作成と離婚訴訟でセレブなクライアントを多数抱える弁護士と財産ねらいの美女との、熾烈なバトルと恋の物語。

 

原題の「INTOLERABLE CRUELTY」とは、直訳すれば「耐えられない残酷(無慈悲)」といった意味だろうが、CRUELTYには法律用語で「(離婚事由となる)配偶者虐待」という意味もあるという。

それじゃ日本人にはわからん、というのでつけられた邦題が「ディボース・ショウ」。ラストに出てくる離婚を扱った番組名をちゃっかり映画の題名にしちゃってる。