善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「花様年華」

イタリア・トスカーナの赤ワイン「シギロ・ロッソ・キャンティ(SIGILLO ROSSO CHIANTI)D.O.C.G」

(写真中央はジャンボマッシュルーム・ベビーベラ(ブラウンとホワイト)の肉詰め。左上はサバの燻製)

 

トスカーナを代表する老舗ワイナリー、ピッチーニの赤ワイン。

キャンティは、トスカーナ州シエナを中心とする幅広い地域で造られている赤ワイン。トスカーナ地方原産のブドウ品種サンジョヴェーゼを主体とにしていて、「D.O.C.G (原産地呼称保証付き統制ワイン)キャンティ」は使用できるブドウ品種がサンジョヴェーゼ最低70%以上、その他黒ブドウは15%までとなっていて、最低熟成期間は収穫年の翌年2月末までと細かい規定がある。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していた香港映画「花様年華(かようねんか)」。

2000年の作品。

原題「花様年華/IN THE MOOD FOR LOVE」

監督ウォン・カーウァイ、出演トニー・レオンマギー・チャンほか。

 

それぞれ家庭を持つ男女の不倫の愛を描いた恋愛ドラマ。
1962年、香港。新聞編集者のチャウ(トニー・レオン)と商社で秘書として働くチャン(マギー・チャン)は、同じ日に同じアパートに引っ越してきて隣人になる。

やがて2人は、互いのパートナーが不倫していることを知る。ともに裏切られた者同士、2人はたちまち親しくなり、逢瀬を重ねていく。

最初は戸惑いながらも、時間を共有するうち強く惹かれ合っていく2人。小説家を志望しているチャウは、チャン夫人に執筆の手伝いを頼み、やがて2人はホテルで密会を始めるのだったが・・・。

 

タイトルの「花様年華」の「花様」とは「花のよう(に美しい)」といった意味で、「年華」は「時代」「月日」を意味するという。したがって「花様年華」とは「花のように美しい月日」といった意味か。「花様」は「若さ」や「青春」を意味する言葉でもあるそうで、ヒネった見方をすれば「戻ることのない美しい月日」というニュアンスもあるかも。

 

ノスタルジックで美しい映像、音楽もそれに合わせていて、日本の梅林茂の「夢二のテーマ」(鈴木清順監督が1991年につくった映画「夢二」のテーマ曲)、ナット・キング・コールの「キサス・キサス・キサス」、それに「ブンガワン・ソロ」なんかも流れていた。

 

不倫を描く映画なんだけれど、2人はその一歩手前で揺れ動いている。

2人のそれぞれのパートナーも不倫をしていて、ともに裏切られた傷を持っているから2人は近づき、静かに燃え上がっていのだが、互いのパートナーについては「今、出張中」とか「東京にいる」とか話題にはのぼるものの映画には出てこない。

結局2人は一線を越えたかどうかよくわからないまま話は進むから、曖昧模糊としていて、官能的ではあるもののどこか禁欲的な映画。英語のタイトル「IN THE MOOD FOR LOVE」にあるように「MOOD(気分)」だけで終わっちゃったのか。

消え去っていく古きよき時代を懐かしんでいるようにも見えた。

 

映画における物語は1962年に始まり66年に終わっているが、66年といえば中国の「文化大革命毛沢東派が専制支配をねらった中国共産党内の権力闘争)」が始まった年。当時、香港はイギリスからの返還前だったが、本土での文化大革命は香港にもさまざまな影響を与えただろう。そして、映画の最後、チャウはカンボジアにいて、カンボジアを訪れたフランスのドゴール大統領を国家元首シアヌーク殿下が出迎えるニュース映像がテレビで映し出されるシーンがある。当時はベトナム戦争の真っ最中であり、前年にカンボジアアメリカと国交を断絶。ドゴールもアメリカを批判していた。

そんな移りゆく時代の中での映画だといいたかったのか、こんな言葉が流れる。

「男は過ぎ去った年月を思い起こす。埃で汚れたガラス越しに見るかのように。過去は見るだけで、触れることはできない。見える物はすべて幻のようにぼんやりと・・・」

 

チャイナドレス姿のマギー・チャンが美しい。

日本のかつての名女優の誰かに似てるなーと思いつつ、ウットリしながら見ていたが、結局誰に似てたかは・・・?