善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

晴天のもと 秋の木曽駒ヶ岳

大型台風の通過を待って、1泊2日で中央アルプス木曽駒ヶ岳登山に出かけた。

 

NHKBSの山の番組をたまに見ている影響か、無性に山登りがしたくなった。

それも、登りたいのは3000m級の山だ。ふだんはせいぜい公園1周するぐらいしかしてないのに、何でそんな高い山に登りたいのか。

ただひとこと、山の頂からの絶景を眺めたい、という、無茶で無謀な?動機からだった。

 

そのくらいの高さの山というと、9年前に立山連峰(主峰の雄山が3003m)を縦走したのが最後で、その後は東京のはずれの高尾山(599m)程度の山登りしかしてない。

その高尾山にしても、コロナ禍でなかなか行くチャンスがなく、去年4月にようやく登りにいったが、その後はさっぱり。

9年前に立山に行ったときは、せめて足腰を鍛えておこうと高尾山に2、3度登ったりしたが、今回は急に決まったこともあり事前の体力づくりは何もなし。せいぜい3、4日前から公園にある階段の昇り降りを1回から2回に増やした程度だった。

そんなことで高い山に登れるかというと、初心者向けのラクなコースなら大丈夫だろうと、最初は山頂近くまでシャトルバスで行ける乗鞍岳(3026m)に行こうかと思ったが、スカイラインが現在、通行止めというので断念。

それなら、ロープウェイで一気にふもとから2612mの千畳敷カールまで行けて、そこから山頂(2956m)まで片道2時間ぐらいという木曽駒ヶ岳に行くことにした。

 

連休中、九州に上陸したときは930ヘクトパスカルだった台風14号が日本列島を縦断し、太平洋に抜けていった火曜日、午前11時35分バスタ新宿発の高速バスで、長野県の駒ヶ根バスセンターへ。

途中まで台風の余韻が残っていたのか、激しく雨が降るところもあったが、甲府を抜けるあたりから雨もやみ、15時25分の到着時はいい天気。

駒ヶ根駅近くのホテルに泊まり、翌日早朝に山に登る予定で、ホテルにチェックイン後は周辺を散策。

駒ヶ根市は、ソースカツ丼で街おこしをしているそうで、あちこちにのぼりや看板が立っている。

夜は、街を歩いていて見つけた居酒屋でイッパイ。

「かっぱ厨亭」という店で、海のない長野県でも新鮮な海鮮料理を楽しんでもらおうと、鮮度にこだわって毎日静岡の駿河港から魚を仕入れているのだとか。

まずは生ビール、その後は日本酒。お通しのアンキモぽん酢。

 

特大サンマの刺し身。

東京でまだ食べてないのに、初サンマは山の中の駒ヶ根で。

 

大ぶりの徳島産岩ガキ。

 

さきほどのサンマの骨の唐揚げ。

 

地元中沢産のアスパラの天ぷら。

 

ナスの揚げおろし。

 

最後は、せっかく「ソースカツ丼の町」にきたからと、ソースカツ。

 

翌朝は、バスに乗るためJR東海飯田線駒ヶ根駅前へ。

まだ早朝だからか駅前は至って静かだ。

 

8時のロープウェイ始発に乗るため、7時発のバスに乗る。

しかし、客は全部でたった3人。

台風がすぎたばかりで、山に登る人は少ないのかな?と思いつつ、ゆられるうち、途中、菅の台バスセンターに到着すると登山客がわんさか待っていて、バスはたちまち満員に。

実は、待っていたのはマイカーできた人たち。マイカー規制のため一般の車が入れるのはここまでで、みんなバスに乗り換えないといけない。

ということは電車できた人はごくわずかということになり、これじゃあ鉄道が赤字になるはずだ。

 

途中、バスの窓から見た見事な滝。

つづら折りの山岳道路をクネクネと走っていって、ロープウェイの山麓駅・しらび平に到着。

駒ヶ根駅からしらび平まで約45分。すでに標高1662mもある。

ちなみにしらび平の地名の由来は、この山岳道路が葉先の白いモミの木に似た「シラソビ」という木が生える原生林を切り開いてつくられたことに由来するという。

8時始発のロープウェイで千畳敷カールへ。

このロープウェイ、日本一の高低差を誇っているそうで、高低差950mを7分30秒で一気に2612mまで到達する。

ところで、話は横道にそれるが、駒ヶ根駅からしらび平までのバスルートの途中、「女体入口(にょたいいりぐち)」というドキッとするような名前の停留所があった。

地名の由来はわからないが、たしかに「女体」という地域名があり、その入口ということのようだった。

 

ロープウェイで一気に登ると、下界は曇り空だったが、千畳敷カールは真っ青な空が広がっていた。

峨々とした山々が連なっている。

標高2612mの中央アルプス千畳敷は、今から約2万年前に、氷河のゆったりとした流れにより浸食されて形成されたカール(半円形の窪地)で、畳を1000枚敷き詰めたほどの広さがあるというので「千畳敷カール」と呼ばれているのだとか。

 

駒ヶ岳神社にお参りしてから登り始める。

 

下界はモヤがかかっている。


次々と登山客が登っていく。

 

ところが、登り始めたはいいが、千畳敷から八丁坂ぐらいまでは何とかラクして歩けても、そこから急登が待ち受けていて、時間にして20~30分ぐらいなのだが辛いこと辛いこと。

何しろこの山、土の道というのがない。ほとんどすべて岩でできている山という感じで、大きな岩もあれば小さな石もゴロゴロしいて、とにかく大小の岩や石の上を、それも坂道を、黙々と歩いていく。

 

振り返ると、ロープウェイの乗り場でもあるホテル千畳敷が小さく見える。

 

東に目を向けると、遠くに富士山。

まだ雪を頂いてない。

 

乗越浄土、宝剣山荘をへて、中岳(2925m)、木曽駒ヶ岳(2956m)。

晴天にめぐまれて、その眺めのすばらしいこと。

この瞬間を味わうために、なんだ坂、こんな坂と乗ってきたんだった。

 

今回、木曽駒ヶ岳を登って発見したことがあった。

登り始めてから下山するまで、見つめ、考えたのは山のことだけだった。

仕事のこととか遊びのこととか、日ごろ考えるようなことは一切、頭になく、ただ山のことだけを考え、ときおり振り返って景色を眺めたり、道端の花に見とれたりしながらも、きょうはよくぞ晴れてくれましたね、あとどれくらい歩けばラクになれますか?と、山と対話していた。

そして、自分とも対話した。フーフー、ハーハーいいながら、動かない足を叱りつけ、もっとガンバレと励まし、自分の体とも対話した。

山とは大自然そのものである。人間なんて、何とちっぽけなものか。そんなちっぽけな人間でも、フーフー、ハーハーいいながら歩くことで、大自然と会話ができる。

そして山は、自然はそんな人間を、あったかく(そう思ってるのは人間だけで実は冷静に?)迎えてくれる。

 

この日見た生きもの。

岩山にとまっていたのはイワヒバリだった。

ヨーロッパ南部のアルプスなどやヒマラヤ山脈などの高山にすんでいて、日本では本州中部の高山のハイマツ帯より上部で繁殖し、岩の隙間などに巣をつくるという。

 

ナナカマドの赤い実。

 

だいぶ翅がボロボロになっていたが、クジャクチョウ。

鮮やかな赤色をしていて、クジャク(孔雀)の羽模様に似た大きな眼状紋があるタテハチョウ。
北海道では山地・平地で広く見られ、本州では山地で見られるが、近畿地方以西には分布していない。

 

紅葉は、ようやく少しずつはじまったところだ。

 

イワツメクサ(岩爪草)。

花びらは10枚あるように見えるが、中央が深く裂けている5弁花。

枚数を多く見せて、花粉媒介のために訪れる虫たちに目立つようにしているのか。

 

ヤマハハコ(山母子)に虫がやってきていた。

 春の七草の1つであるオギョウ(別名ハハコグサ)に似ていることから、山に咲くハハコグサで「ヤマハハコ」と名づけられたといわれている。

 

下山後はホテル千畳敷のレストランで遅い昼食。星空ビーフカレー

ホテルに泊まると夜は満天の星が楽しめるのだとか。

 

ロープウェイで下界へ。

 

しらび平発のバスに乗り菅の台で途中下車。

バス停目の前にある「早太郎温泉 こまくさの湯」で疲れた体を癒す。

今から約700年前、駒ヶ根高原名刹光前寺に飼われていた「霊犬早太郎」が、遠州見付神社において怪物を退治し人々を救った、という伝説にあやかって名づけられたのが「早太郎温泉」。

無色透明のアルカリ性単純泉

風呂から上がったあとは、地ビールの生(南信州ビール ゴールデンエール)。追加でアサヒスーパードライの生をもう1杯。

う、うまい! 実はこのために山に登ったのかも。

つまみは、うま!コロッケ、枝豆、冷や奴、野沢菜おやき。

夕方5時発の高速バスで、一路、新宿へ。