善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「シャンドライの恋」ほか

スペインの赤ワイン「アルトス・イベリコ・クリアンサ(ALTOS IBERICOS CRIANZA)2017」

(写真はこのあと牛のサーロインステーキ)

フランスとの国境に近いバルセロナの近郊、ペネデス地方でワインを造り続けて140年以上のトーレスの赤ワイン。

ブドウ品種はスペインの土着品種テンプラニーリョ。品種名はスペイン語の「temprano」(早生の、早熟な)に由来し、日本の天ぷらの語源とも共通しているので何となく親しみを感じる。まろやかな口当たりのワイン。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたイタリア映画「シャンドライの恋」。

1998年の作品。

原題「BESIEGED」

監督ベルナルド・ベルトルッチ、出演デヴィッド・シューリス、タンディー・ニュートンほか。

 

ローマを舞台に、住みこみの黒人女性に恋した英国人音楽家の愛を綴った映画。

 

軍事政権下のアフリカ某国。シャンドライ(タンディ・ニュートン)は教師だった夫が政治犯として逮捕されてしまい、イタリアに亡命する。彼女は医師をめざして勉強する一方、キンスキー(デヴィッド・シューリス)というイギリス人のピアニストの家に住み込みで働くようになる。

キンスキーは、叔母から相続した家に住んで、子どもたちにピアノを教える孤独な青年だった。2人の間にほとんど会話らしい会話はなく、何となく暗げなキンスキーにシャンドライは不気味さを感じるほどだったが、キンスキーは突然、シャンドライに「愛している。結婚してほしい」と告白する。怒ったシャンドライ。「私には夫がいるのよ。そんなこというなら捕まっている夫を刑務所から出して!」と怒鳴りつけてしまう。

驚いたのはキンスキー。彼女に謝罪する一方、それ以降、彼はシャンドライへの愛は一切口にしなくなる。しかし、このことがあって以後、なぜか日を追うごとに屋敷の中の調度品が消えていき、ついには彼にとって最も大切なはずのピアノまで売られていく・・・

 

ベルトルッチらしい凝った映像。もの静かな男と強いまなざしの女、静かなクラシックの旋律と躍動的なアフリカ音楽、街の喧騒と静まり返った屋敷の中の螺旋階段、動と静の対比が、ほとんどセリフのない映画に深みを与えていく。

原題の「BESIEGED」とは「囲まれる」といった意味らしい。

キンスキーの愛は、やがて無償の愛へと変わっていく。いや、最初からキンスキーの愛はプラトニックなものだったのかもしれない。そんな純粋な愛に「囲まれ」て、シャンドライは・・・?

愛について考える映画。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「ウォーク・トゥ・リメンバー」。

2002年の作品。

監督アダム・シャンクマン、出演マンディ・ムーア、シェーン・ウェスト、ダリル・ハンナほか。

 

両親の離婚で母親と二人暮らしの高校生ランドン(シェーン・ウェスト)は、不良グループと仲よくして投げやりな日々を送っていた。彼はふとしたきっかけで、純粋で優しく、強い信念をもっている牧師の娘ジェイミー(マンディ・ムーア)と出会う。

全く別の世界で生きてきた2人は、やがて互いに引き寄せられ、恋に落ちる。しかし、それが本物の愛に変わったとき、ジェイミーは秘密にしていたことを彼に伝えなければならなかった。実は彼女は白血病のため余命わずかと宣告されていたのだった・・・。

 

「ウォーク・トゥ・リメンバー」は原題の通りだが、意訳すると「その歩みを決して忘れない」といった意味か。

同じテーマを扱った映画としては吉永小百合主演の「愛と死をみつめて」(1964年)、アメリカ映画では1970年の「ある愛の詩」がある。

見終わっていつも思うのは、青年はその後どんな人生を歩んでいくのだろうか?ということだった。

 

NHKBSで放送していたアメリカ映画「シェラマドレの決斗」。

1966年の作品。

原題「THE APPALOOSA」

監督シドニー・J・フューリー、出演マーロン・ブランド、アンジャネット・カマー、ジョン・サクソン、エミリオ・フェルナンディスほか。

 

名優マーロン・ブランド主演の西部劇。

1870年代のメキシコとの国境近くの貧しい家。そこへメキシコとアメリカのハーフのマテオ(マーロン・ブランド)がやってくる。彼は孤児だったが、義兄弟のパコの父親にひろわれ、実の息子のように育てられた。成長した彼は、南北戦争と放浪に疲れ、アパルーサ種の名馬を種馬に牧場を始めようと、故郷へ帰ってきたところだった。ところが、土地の強盗団の首領チューイ(ジョン・サクソン)にアパルーサ馬を奪われてしまう。マテオは馬を取り戻すためチューイに戦いを挑むが・・・。

 

異色の西部劇。主人公のマテオは、早撃ちのガンマンとかではなく、故郷に帰って家族と共に牧場経営をやりたいという実直な男。映画でも、馬を奪われて取り返そうとするが、やられてばかりで、最後の最後に少しだけガンマンらしいところを見せてくれる。

マーロン・ブランドといえば「欲望という名の電車」(1951年)に始まり、「革命児サパタ」(52年)、「波止場」(54年、アカデミー主演男優賞受賞)、「ゴッドファーザー」(71年、2度目のアカデミー主演男優賞受賞)、「ラストタンゴ・イン・パリ」(72年)、「地獄の黙示録」(79年)などに出演。世界一ギャラの高い俳優としても知られ、78年の「スーパーマン」では、冒頭わずか約20分の出演で1400万ドル(1ドル100円としても14億円)という破格のギャラを手にしている。

とても個性的な人物らしく、若いころから自分が気に入った映画にしか出ないことで知られていて、「欲望という名の電車」「革命児サパタ」「波止場」ともに監督はエリア・カザンだったが、同監督から「エデンの東」の主役のオファーを受けたとき、カザン監督が変節したというので断っている(代わって当時無名だったジェーズズ・ディーンが主役に抜擢され、スターとなった)。

しかし、父親の投資の失敗から現金が必要となり、60年代には気に入らない作品にも多数出ていたというから、本作もその1つだろうか。

 

話はずれるが、今日のTシャツ文化の先駆けとなったのがマーロン・ブランドといわれる。かつてTシャツはアンダーウェア、つまり下着がわりだった。それがファッションとして1枚で着るのが爆発的に広まるきっかけとなったのが映画「欲望という名の電車」だった。スタンリー役で出演したマーロン・ブランドはTシャツ1枚の姿で登場し、反抗精神を示すようなその姿があまりにも刺激的だったためTシャツがブームになり、今日に至っているという。