毎年11月3日(文化の日)から23日(勤労感謝の日)まで、都立善福寺公園の上池を主会場に開催される国際野外アート展「トロールの森」(主催・実行委員会、後援・東京都東部公園緑地事務所、杉並区、杉並区教育委員会)が始まった。
今年のテーマは「深く息をする」。
公園内に展示された空間表現の作品は全部で30点。去年より数が多い。
ほかに舞台の上での身体表現や公園の外でのアート作品やパフォーマンスもあるが、毎日散歩している公園内で出会った作品のいくつかを紹介しよう。以下、順不同です。
田附希恵(たつき・きえ)「Drawing:energy」
鉄でできたオブジェ。大きいのと、小さいのもある。
善福寺公園で生まれたエネルギーがつくる形を表現しているのだとか。
作者は金属彫刻家で、金属の棒を用いて空間に線を引いて造形している。 空間に絵を描く方法を模索中という。
宮嵜浩(ボムライ ウエスト)(みやざき・ひろし)「God Bless You」
いくつもの竹が地面に突き立っている。
最初見たときは墓標が並んでるのかと思ったら、自然に吹く風によって音を鳴らすエオリアンハープだという。
風が吹くと音楽を奏でるのだろうか。
KK「Boats on the pond」
折り紙のボートを浮かべた瓶が池のほとりに点在している。
よく見ると折り紙の素材はチラシかなんか?
作者は、「意識」(人工物、都市社会、現代社会、人間関係)と「無意識」(自然、花鳥風月、ただ在ること)をテーマに、自分の存在や身の回りの日常・環境への視野を広げるための装置を制作しているという。
竹厚桂子(たけこ・けいこ)「To The Sky」
キラキラと光る反射素材が風に揺れていて、美しい。ミクストメディアというらしいが、呼吸する樹木の息を光で表現したものなのか。
22 永林香穂「ちゅーリップ」
赤、白、黄色の3つの「ちゅーリップ」。
作者は「頭の中で生まれた、枯れない植物」をつくっていて、「体のパーツ」から植物を考えているという。
唇から連想したのがチューリップで、「lip(リップ・唇)」で「ちゅー」の形をしているから「ちゅーリップ」なのか?
ちなみにこの作品をつくるために見た唇のモデルは作者自身だそうだ。
作者にお会いしたい!
中川彩萠(なかがわ・さいほ)「バブルリングのつくりかた」
籐でつくったバブルリングが樹木を取り巻くようにして浮いている。
一見するとイルカがつくるバブルリングみたいだが、地球の呼吸をバブルリングとして表現しているという。
草月流の生け花みたいに見えると思ったら、作者は大学で日本画を学んでいるとき草月流に入門したとか。やっぱり。
丹尾敏(にお・びん)「みちしるべ」
鉄でできたまるいわっか。
「みちしるべ」というからには、このわっかを吹き抜ける風が、進むべき道を教えてくれるのだろうか。
池の反対側にも小さいわっか作品がある。
2つのわっかで水面を挟んだ風の通り道をつくったという。
作者は、大学で美術を学んだあと、鍛冶屋修行をして知多半島・常滑市に移住してアート作品をつくりながら鍛冶屋仕事も行っているという。
落合有紀「感情ボックス」(喜 怒 哀 楽)
本来は消火器を収納する赤い格納庫を開けると、中に喜怒哀楽を表現するものが入っている。
「怒」の箱を開けると、中にあったのはパンチで怒りを吐き出すグローブだった。
喜、哀、楽のほかの箱の中は?
1日にひとつずつ開けていこう。
桃四コミュニティスクール「おでかけトロール」
杉並区立桃井第四小学校の児童たちがつくった「トロール」たちが公園の中でかくれんぼ。
栗田昇「リズム」
水車のアート作品。
水車がまわると音を奏でる。
三石玄「柱への変転」
石灰や砂、土、顔料などを用いたフレスコによるインスタレーション。木を柱にたとえて装飾し、建築、芸術の成り立ちを思考する作品という。
小野真由「スーハー」
今年の「トロールの森」のテーマからひらめいた「スーハー」という文字を、桃井第四小学校2年生たちとともにつくった作品。
杉本憲一「ゆらめく暖簾」
巨大な暖簾が揺らめくことにより、風の存在を感じる作品。
作者は絵本作家でもあるという。
中西晴世「みんなつながっているよ!」
和紙でつくった不思議な形の物体が、木から木に結ばれた赤い紐にぶら下がっている。
等間隔に離れてのソーシャルディスタンス? それとも人と人と赤い糸でのつながりを表現しているのか?
中尾紫香(なかお・しこう)「自然的膜」
公園内で人々が佇み休む場所としての「パーゴラ」を、竹による薄い膜で包むインスタレーション。
これも草月流だ。
飯島祐奈(いいじま・ゆな)「私空間」
公園というパブリックな空間に、私のパーソナルスペースをつくることで、輪の線の内と外で全く違う世界を体験する試みという。