善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「人情紙風船」

フランス・アルザスの赤ワイン「ピノ・ノワール・レゼルヴ(PINOT NOIR RESERVE)2019」

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生産者のトリンバックは、1626年に創業し、4世紀13代に渡って歴史と伝統を育んできたアルザスきっての名門ワイナリーだとか。

白ワインのイメージが強いアルザスだが、ピノ・ノワールの栽培も盛んで、全体の約10%程を占めていたのがここ10年で栽培面積を増やし、今では約15%と広がりをみせているという。

品のある味わい。

 

ワインの友で観たのは民放のBSで放送していた日本映画「人情紙風船」。

1937年の作品。

監督・山中貞雄、出演は「前進座総出演」とクレジットにあり、河原崎長十郎中村翫右衛門、山岸しづ江、霧立のぼるほか。

 

歌舞伎の「髪結新三」を脚色した時代劇。監督の山中貞雄は当時28歳の若さ。太平洋戦争さなかで、封切り日に召集令状を受け取った山中は翌年、中国で戦病死。映画への志半ばにして本作が遺作となった。

前進座は、歌舞伎界の門閥制や封建的なしきたりに不満を持つ若手歌舞伎俳優らが独立し、民主的な劇団運営をしようと1931年に創立した劇団。前進座の気概に共鳴した山中監督が「河内山宗俊」に続いて前進座総出演で制作したのが本作。

 

江戸時代の深川が舞台。貧乏長屋に住む髪結いの新三(中村翫右衛門)は、同じ長屋に住む浪人が首吊り自殺したというので、通夜をやるからと大家から酒をせしめ、住民仲間とどんちゃん騒ぎ。新三は賭場を巡ってヤクザの親分と揉めており、借金を抱えているため髪結いの道具を質屋に持ち込もうとするが相手にしてもらえない。困った新三は質屋の店主の娘であるお駒(霧立のぼる)を誘拐し、長屋に連れ込んでしまう。

一方、新三の隣に住んでいるのが浪人海野(河原崎長十郎)。ひょんなことから新三と親しくなり、お駒の誘拐にも協力してしまうが、何とか元の武士に戻ろうと父の知人に士官の口を頼もうと日参するが叶わない。新三はヤクザの親分との決闘に向かい、海野は世をはかなんだ妻の無理心中により夫婦ともに命を落とす。

武士の世界の非道さ。それにひきかえ、たくましく生きる市井の人々。通夜の馬鹿騒ぎは、底辺で生きる庶民の明るさを活写していた。

 

中村翫右衛門河原崎長十郎がともに若い。役者たちの演技のうまいこと。

4Kデジタル修復版なのでとても80年以上前の映画とは思えない出来ばえで、日本映画不朽の名作の1つ。