埼玉・所沢市に11月オープンしたばかりの「角川武蔵野ミュージアム」に行く。
図書館と美術館と博物館が融合した文化複合施設で、KADOKAWAと埼玉県所沢市がタイアップして建設した「ところざわサクラタウン」の一角にあり、ランドマーク的存在だそうだ。
それじゃあ乗り換えに不便なので、西武・所沢駅東口から東所沢駅行きの西武バスに乗り、安松中学校入口で下車。畑が点在するのどかな風景の中を歩いて約10分。
建物は、遠くから見るとまるで岩の塊。重量感がハンパない。
デザインしたのは新国立競技場の設計者としても知られる隈研吾で、1つ50kg~70kgの花崗岩を約2万枚使用して完成させたという。
まずは4・5階にある高さ8メートルの巨大本棚に囲まれた「本棚劇場」へ。
4階のエレベーターを降りると、本棚に囲まれた「ブックストリート」を歩き、その奥が本棚劇場。
館長の松岡正剛は「千夜千冊」の著書もある読書家であり、彼の監修による2万5000冊の本がズラリと並んでいる。
どれもおもしろそうな本ばかり。
分類の仕方も工夫していて、たとえば「むつかしい本たち」のコーナー。
なるほど難しそうな本が並んでいる。
本棚から気に入った本を引き抜いて、イスに座って読むこともできるみたいで、ここにいるだけでも1日がすぐにたってしまいそうだ。
「本棚劇場」にも約3万冊の本が並んでいて、最も奥に位置する壁では定期的に「本と遊び、本と交わる」をコンセプトとしたプロジェクションマッピングを上映しているが、KADOKAWAの本の宣伝臭が強すぎてあまりおもしろくなかった。
ただし、奥の壁の本棚はすべて森村誠一の本で埋めつくされていて、彼がいかにKADOKAWAからたくさんの本を出版していたか、その数の多さに驚かされる。
本日「角川武蔵野ミュージアム」に行ったもう1つの目的が、アートギャラリーでの「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」。
米谷健と米谷ジュリアは日本人とオーストラリア人によるアーティストユニットで、環境問題や社会問題などをテーマに入念なリサーチを行い、独自の手法で美しくも不気味で妖しげな作品を発表している。
今回の展覧会は2人の日本初の大規模個展という。
「クリスタルパレス」(部分)
妖しく光を放つシャンデリアのインスタレーション作品。
素材には原発ともイメージが重なるウランガラスが使われている。シャンデリアは全部で6つあり、1点1点に原発保有国の国名をつけ、その国の原発からつくり出される電力の総出力規模をシャンデリアのサイズに比例させたという。
「Dysbioticar」
「Dysbiotica」とは、腸内細菌のバランスの崩壊を意味する語「Dysbiosis」からの造語という。磁器土で作られた作品の表面を、微生物や珊瑚のようなパーツで覆い尽くしている。
「大蜘蛛伝説」
ウランの採掘が行われていた岡山・人形峠に伝わる伝承から着想を得た作品。
ここでもウランガラスが使われていて、ブラックライトの照射により光を発している。
「最後の晩餐」
オーストラリア南東部に広がるマレー・ダーリング盆地はオーストラリア国内の生鮮食品の9割を生産する食料生産地域という。しかし、大規模農業による過度の灌漑により塩分濃度の高い地下水が地表に上昇する塩害が進行し、気候変動の影響も重なって農業継続が困難になってきているという。
このため毎年55万トンの塩水を汲み上げて塩分濃度の高い地下水の増加を食い止めようとしていて、その塩水を精製した塩を用いてつくった「最後の晩餐」。
「3つの願い」
外見の愛らしさの中に原子力の脅威をはらませた作品。
原発事故により放射能汚染の影響を受けたチョウ(ヤマトシジミ)の翅を使用している。
福島県広野町で採取されたヤマトシジミの卵を飼育し、成虫となったチョウの剥製を使用。
翅の表側が黒いからメスであるのはたしかだ。
館内には、博物部門のディレクターを務める博物学者の荒俣宏の収集品も展示されている。
その1つ、ジンメン(人面)カメムシ。
学名は「Catacanthus incarnatus」。悪魔の顔という意味だそうで、アジアの熱帯地方にすみ、群棲することもあるという。
テングビワハゴロモ。
やはりカメムシの仲間。主に熱帯・亜熱帯地方に分布。頭部が天狗のように前に突き出ていて、形がビワに似ているというのでこの名がついたようだ。
武蔵野の魅力を発信するコーナーもあった。
文政13年(1830年)の「東都近郊図」という古地図には、毎日散歩している「善福寺池」も載っていた。
出口付近にあった「ウルトラブッダ」。
セラミックスに金箔貼り。米谷健+ジュリア作。
帰りはバスで西武・所沢駅下車。
そこから8分ほどのところにある「手打ちそば 弥兵衛」で昼食。
ビールとつまみのセットを頼んだら、つまみは残ってビールは飲んじゃったので、日本酒を1合注文。
続いて頼んだ鴨肉のコンフィがおいしくて、お酒をもう1合追加。
シメはもりそば。
新そばだから色鮮やかで、おいしかった。