イタリア・トスカーナの赤ワイン「サンタ・クリスティーナ・ロッソ(SANTA CRISTINA ROSSO)2018」
写真はこのあと肉料理。
はるか14世紀よりワイン史に足跡を残すイタリアの名門アンティノリの赤ワイン。ブドウ品種はサンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シラー。
果実味、酸、タンニンのバランスがとれたソフトな印象。
ワインの友で観たのはNHKBSで放送していたアメリカ映画「愛情物語」。
1955年の作品。
原題は「Eddy Duchin Story」
監督ジョージ・シドニー、出演タイロン・パワー、キム・ノヴァク、ビクトリア・ショウ、ジェームズ・ウィットモア、レックス・トンプスンほか。
実在の人物で、当時は不治の病とされた急性骨髄性白血病のため41歳で亡くなった天才ピアニスト、エディ・デューチンの物語。
1930年代のアメリカ・ニューヨーク。エディ(タイロン・パワー)は音楽家を志してニューヨークにやってくるが、思うようにいかず、一人さびしくピアノを弾いている。それを聴いていたのが資産家の令嬢マージョリー(キム・ノヴァク)で、彼女の紹介で音楽の道が開かれ、エディはピアニストとして成功していく。2人は結婚、幸せな日々を送るが・・・。
マージョリーの心をとらえたのが「トゥ・ラブ・アゲイン」という曲で、映画の主題曲として随所に流れてくるが、ショパンの「夜想曲第二番」をエディがアレンジしたものだった。
この曲はポピュラー・ミュージックの名曲として今もときどき耳にする。
そしてナント、そのピアノ曲(それだけでなくほかのすべてのピアノ曲もそうだが)を軽やかに弾いているのがタイロン・パワー。
タイロン・パワーといえば1930年代後半から50年代にかけて一世を風靡した二枚目俳優として知られるが、おそらくピアノは素人のはず。なのに映画では指の動きも滑らかに見事なピアノ演奏を披露している。
普通、映画で役者がピアノを弾くシーンでは、上半身だけとか後ろ姿とか、弾いている格好だけ見せても実際に弾いている指先はホンモノのピアニストにすり変わっているものだ。ところがタイロン・パワーは間違いなく自分で弾いているのが映画を見ていてわかる。
もちろん、実際に映画で流れている音は“ピアノの詩人”と呼ばれたカーメン・キャバレロが弾いている。タイロン・パワーはおそらく“振り”だけをしていると思われるが、それでも相当ピアノの練習を積んだに違いなく、昔の俳優の役者根性のハンパなさに驚かされる。
もっともミュージカル映画だって、1961年の「ウエストサイド物語」でのマリア役のナタリー・ウッドにしてもトニー役のリチャード・ベイマーにしても、何ていい声なんだろうと思ったら口パクで、実際に歌っているのはホンモノの歌手だが。
しかし、口パクは簡単でも名曲を弾くピアノの手の演技は相当な鍛え方が必要だったろう。見ていてホレボレするほどで、タイロン・パワーのピアノのシーンだけでも映画を見る価値はある。
だがそのタイロン・パワーも、本作から2年後、「ソロモンとシバの女王」のロケ中に心臓発作を起こして倒れ、病院に運ばれる途中、亡くなっている。享年44。エディ・デューチンより3年長く生きただけだった。
ちなみに今年は、エディ・デューチンの名を高めた「トゥ・ラブ・アゲイン」の原曲「夜想曲第二番」を作曲したショパンの生誕210年。映画を見た日は、奇しくもショパンの命日の10月17日(没年は1849年)だった。