土曜日の午後は、東京・銀座のシャネル銀座ビル4階にあるネクサス・ホールで八木大輔のピアノリサイタル。
シャネルは、才能あふれた若手音楽家を毎年数名ずつ選び、1年を通じてそれぞれに演奏機会を提供する「シャネル・ピグマリオン・デイズ」という音楽プログラムを開催している。
2020/21年はコロナ禍で講演中止が続いたため、一昨年選出の5人のアーティストは22年も継続して活動し、22年の参加アーチストとして新たに3人が加わり、総勢8人がリサイタルを行っている。
きのうは2020/21年に選出されたアーティストの一人、八木大輔のリサイタル。
2003年生まれというから、今年19歳の新鋭。経歴も異色で、音楽系の学校ではなく、今春、慶応高校を卒業し、現在は慶応大学の1年生。
個人レッスンを受けてメキメキ腕を上げているのだろう、世界各地のコンクールに挑戦し、13歳で入賞したのをはじめとして、次々と1位(しかも、どこでも史上最年少)を獲得している。
本日の曲目はオール・ショパン。
プレリュード 嬰ハ短調 作品45
「シャネル・ピグマリオン・デイズ」のリサイタルでは、演奏の合間にアーティストがマイクを持って聴衆に話す機会があり(これも魅力のひとつ)、そこで本人が語るところによると「ショパンはこれまではあまり好きじゃなかった」という。
その理由は2つあって、ひとつはショパンの曲は練習が必要だからという。ショパン独特の奏法があって、それを習得しないといけないのでなかなか手が出なかったみたいだ。
もうひとつの理由は、ショパンの曲はどこか病的なところを感じるからという。
ところが、100年前のラフマニノフの演奏を聴き、また、今年8月下旬、イタリア出身のピアニスト、アレクサンダー・ガジェヴのレッスンを受けて考えを改めたという。
八木はガジェヴの前でショパンの舟歌を弾き、さらにガジェヴによるレッスンの中で、舟歌についての音色やさまざまな演奏技法について対話しながら、どんな面白い世界ができるのかを実験したという。
おかげでこの1カ月ほどはショパンに浸りきっているのだとか。
八木の弾くショパンの曲は、若さゆえか、とてもみずみずしくて力強く、病的なところなどまるで感じない思いのこもった演奏だった。
アンコール曲はエチュード「木枯らし」(作品25第11番)
コンサートのあと外に出ると、銀座は歩行者天国。
ピアノの余韻に浸りながら銀ブラして帰る。