善福寺公園めぐり

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ホーチミン散歩3 漢字の国ベトナム

ホーチミンを旅したついでに、ベトナムの言語についてひとこといっておきたい。

ホーチミン散歩中とても助かったことがあった。それは名所旧跡とかレストラン、ショップを探すとき、通りの名前が分かればすぐ見つけられたことだ。ベトナムの文字はローマ字に似ているので読みやすい。おかげで何々通りかがすぐに分かった。

たとえば、一番の繁華街ドンコイ通りは、ベトナム語で「Dong khoi st.」と書く。パッと見てわかる。

そもそもベトナムの言葉は、日本語と似ていると思った。
それはベトナム言語が中国の漢字の影響を受けているからだろうと思う。

現在のベトナム語ラテン文字を使って表記する方法(かつてベトナムを植民地としていたフランスがそうさせたという)で「クオックグー」と呼ばれるが、もともとベトナム漢字文化圏であり、公式文書は漢字で書かれていた。公式に漢字使用が廃止されたのは1954年という。
今も辞書に載っている単語の7割は漢字語なんだとか。

そういえば「ベトナム」は漢字で「越南」と書く。「エツナン」→「ベトナム」となる。
「ドックラップ」という言葉がある。「独立」という意味で、日本語の発音の「ドクリツ」とそっくりだ。
下の写真は「戦争証跡博物館」にあったビラかなんかで、「Viet-Nam Doc-Lap」と書かれてある。
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実はこのブログの筆者が唯一知っているベトナム語がこの「Doc-Lap(独立)」で、ベトナム戦争真っ最中のころ高校生だった私は、友人たちと「Doc-Lap」という名のサークルをつくったのを思い出す。

「クオックグー」とはベトナムの「国語」をいうが、まさに「コクゴ」ではないか。
そんなことを知ると、ますます親近感を抱いてしまう。

ただし、このように個々の言葉は似通っていても、現地の人の会話を聞くとまるでわからない。
それは、日本語とベトナム語では発音の仕方がまるで違うからだろう。
世界の言語は「声調言語」と「アクセント言語」に大別されるのだそうで、日本語や英語はアクセント言語で、ベトナム語は声調言語だという。ちなみに声調言語の代表格は中国語だそうだ。

声調言語の特徴は、1つ1つの単語の意味が抑揚によって異なることだという。いわば、1つ1つの単語に節回しがついているといったら話は早いか。

ベトナム語には1つの単語に6つもの声調(節回し)があり、発音を間違えるとまるで違う意味になってしまう。

たとえば、「ma(マー)」という言葉。ベトナムでは「ma」は微妙に語尾を上げたり下げたり、丸めたり、止めたりするだけでまるで違う意味になり、「ma」という1文字だけで「悪魔」「しかし」「ほお」「墓」「馬」「苗」と6つの意味をもたせている。

日本語で読めば「マー」しかないが、声調言語だと、たった1文字でこれだけの豊富な語意がある。

その点、ベトナムの言葉は隣のカンボジアやタイの言葉と似ている。
以前、タイのチェンマイに滞在したとき、ホテルのコンシェルジュの男性の話す言葉がまるで音楽のように美しく響いて、うっとりとして聞いた。あれはまさしく声調言語の極致といえるものだろう。