善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

今年一番泣ける映画「オーケストラ!」

イメージ 1

前から観たいと思っていた映画「オーケストラ!」を新宿の角川シネマ新宿で観る。
だいぶ前に封切られたからかなりのロングランだ。
まず結論。オススメの映画です!

ロシア人が主演のフランス映画。
かつてボリショイ交響楽団の天才指揮者といわれたアンドレ(アレクセイ・グシュコフ)は、30年前のソ連の時代、ユダヤ人排斥を拒絶したというのでクビになり、今はさえない劇場清掃員として働いていた。ある日、出演できなくなった楽団(LA交響楽団)の代わりに演奏してくれないかという、パリの劇場からボリショイ交響楽団にあてたFAXを目にした彼は、とんでもないことを思いつく。
それは、同じようにクビになって落ちぶれてしまったかつての仲間を集めて、ボリショイ交響楽団と偽ってパリのコンサートに出演するというものだった───。

全編、荒唐無稽な話で、B級映画といってしまえばそれまでだが、今年見た映画の中でいちばん泣いた作品。

最後の15分がすばらしい。ニセのボリショイ交響楽団は、アンドレソリストに指名した美人バイオリニスト(メラニー・ロラン)を迎えてチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」を演奏するが、最初はハチャメチャ(なにしろリハーサルなしでいきなり本番)、ところが、やがて奇跡が起きる。

チャイコフスキーの名曲にカットバックしながら、アンドレと美人バイオリニストをめぐるこの映画の核心が描かれるあたりは、野村芳太郎監督の日本映画の傑作の1つ「砂の器」の最後の部分とよく似ている。(「砂の器」では天才作曲家、和賀英良(加藤剛)の指揮で奏でる芥川也寸志の曲が流れる中、事件が解明されていく)

それはともかく、プロから見れば美人演奏家のバイオリンはおそらくへたっぴいなんだろうけど、その目の輝きがとてもよく、演奏に引き込まれていく。これぞ映画の魔術だろう。
そもそもニセのオーケストラがパリの大劇場で演奏するという話そのものが荒唐無稽なのだが、そんな話に違和感なく見入ってしまうのも、映画の魔術、すばらしさにほかならない。(もちろん、許せない荒唐無稽もあるが)

それと私的には、アンドレの妻役をやったイリーナ・フィリポア(いかにもロシアの女性らしくておおらかで、亭主の冒険を大喜びで後押しするところがイイ)、元ボリショイ支配人で、昔気質のボルシェビキ=頑固な共産党員役のイワン・ガヴリーロフ(あの鋭い眼光)がよかった。