NHK交響楽団の第113回 オーチャード定期を聴く。
土曜日の午後3時半開演というのでJR渋谷駅を降りると、予想以上にたくさんの人出。
緊急事態宣言下で、こんなにたくさん人がいていいのかとちょっぴり不安になるが・・。
演目は、ベートーヴェン「プロメテウスの創造物 序曲」、ブラームス「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77」、同じくブラームス「交響曲 第4番 ホ短調 作品98」。
オーチャードホールは、天井が高く、垂直の両側壁、浅いバルコニーを持つ、いわゆるシューボックス(靴箱)型ホール。シューボックス型を採用した国内最大規模のホールという。
天井は高さ約20m。垂直で大きな側壁に音が何度も繰り返し反射して重厚で豊かな音を生み出すのだとか。
可動式の音響シェルターも特徴で、白い壁が3重に連なった音響シェルターを前後に動かすことにより、クラシックコンサート、オペラ、バレエ、ミュージカルなどそれぞれの用途にあった舞台空間と良質な音を作り出せるという。
天井からはライト兄弟の飛行機みたいな反響板がぶら下がっていた。
本日の指揮の下野竜也は1969年生まれ。2001年ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝、2006年に読売日本交響楽団正指揮者に就任。現在、広島交響楽団音楽総監督で、N響ともしばしば共演。ブラームスの曲はウィーンで学んだ彼にとって最も重要なレパートリーの1つという。
三浦文彰は1993年生まれの若手ヴァイオリニスト。2009年、ハノーファー国際ヴァイオリン・コンクールで史上最年少の16歳で優勝し、国際的に注目されている逸材という。
1曲目はベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲。
プロメテウスの創造物とは人間のこと。ベートーヴェンは生涯でバレエ音楽を2作つくっていて、これはその1つ。全曲は1時間くらいかかるが、現在はもっぱら序曲のみが演奏されているという。
初演は1801年、ベートーヴェンが30歳をすぎたばかりのころで、初演のその年に14回、翌年も13回上演されたというから、当時はなかなか好評だったようだ。
続いてブラームスの2曲。
「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77」は三浦文彰のヴァイオリン。休憩のあと「交響曲 第4番 ホ短調 作品98」。
何とこの2曲、4年前の2017年5月~6月に北イタリアを旅したとき、ミラノのスカラ座で聴いたのと全く同じ2曲だった。
あのときは北イタリアを半月ほど旅をして、まずミラノに着いてスカラ座でモーツアルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」(指揮パーヴォ・ヤルヴィー、ドン・ジョバンニはトーマス・ハンプソン)を観て、それから北イタリアをぐるっと回って再びミラノに戻って、旅の最終日の夜にスカラ座で聴いた、思い出深いブラームスの2曲だった。
演奏はスカラ座フィルハーモニー管弦楽団、指揮はリッカルド・シャイー、ヴァイオリンはアンネ=ゾフィー・ムッター。
オペラのときは平土間で見たが、コンサートは2階のボックス席最前列だった。
しかし、4年もたって、何を聴いたかはすっかり忘れていた。
今回、オーチャードホールでN響を聴くにあたり、「そういえば去年あたりもN響を聴いたはずだが、曲目は何だったかな」と昔の自分のブログをチェックしてみたら(こういうときブログをやっていると助かる)、このとき聴いたのはチャイコフスキーで、ブラームスは4年前にミラノで聴いていたことがわかった。
偶然にも、数あるN響のコンサートの中で(2月だけでほかにもNHKホール、サントリーホール、東京芸術劇場でそれぞれ別のプログラムがある)、同じ2曲のコンサートを選ぶとは。やっぱり自分はブラームスが好きなんだなあと、あらためて思ったのだった。
交響曲第4番第1楽章冒頭の、「ため息」主題ともいわれる8小節の主題が忘れられない。
演奏会からの帰り、口ずさみながら渋谷の街を歩く。