善福寺公園めぐり

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ジャズっぽさとマーラーの熱狂交響曲 神奈川フィル演奏会

神奈川県民ホールで神奈川フィルハーモニー管弦楽団の第375回定期演奏会を聴く。

指揮はこの日を最後に同楽団の常任指揮者を退任する川瀬賢太郎。ピアノは小曽根真

曲はラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18」と、マーラーの「交響曲第1番ニ長調 巨人」。

当初、神奈川フィル50周年の記念公演としてマーラー交響曲第8番「千人の交響曲」を演奏する予定だった。この曲は千人を超える演奏者で初演されたためこのニックネームがついたというが、千人はいかないにしても舞台上に多数の演奏者を配置するのはコロナ禍の現状では困難というので曲目が変更された。

 

地元の人に愛されている楽団なのだろう、開演前に続々とお客さんがやってきていて、客席は満員。

ホールの入口には棟方志功の絵。f:id:macchi105:20220306141107j:plain

「宇宙讃(神奈雅和(かながわ)の柵)」と題する版画で、緞帳にするため棟方志功に制作を依頼したもの。1974年の作品というから、亡くなる1年前の晩年の作品。原画は館長室に展示されていたが、2017年、カラーコピーの偽物にすり替えられていたことが発覚し、ニュースになった(その後、どうなっただろう?)。

 

一曲目はラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18」。

ピアノの小曽根真はもともとジャズピアニストだが、2003年ごろからクラシックも弾くようになった。始めは譜面通りに弾いていたが、ジャズの血が騒ぐのか、最近は演奏中にアドリブを入れることも多くなってきたという。

この日も途中ジャズっぽい響きがあって、アンコール曲を弾く前、ジャズのアドリブを入れたと話していた。

アンコール曲は小曽根作曲の「 My Tomorrow」。

 

そして、マーラーの「巨人」。

1888年、28歳のときに書き上げた最初の交響曲

オーケストラはフル編成で、当日配られたメンバー表を勘定したら全部で92人。

28歳という若さゆえか、第1楽章から第4楽章まで飽きることのない展開。とくに最後の楽章は荒れ狂う嵐がごとしで、指揮の川瀬賢太郎は飛び跳ね、ティンパニーは打ち鳴らし、ホルンの8人は全員立ち上がり、ヴァイオリンは弦を目いっぱいかき鳴らして、まさに“爆演”といっていいほどの熱狂的な締めくくり。

日ごろの鬱屈した思いなんかすべて振り払い、気分爽快、オーケストラの醍醐味ここにあり、という演奏会だった。

 

指揮の川瀬賢太郎は今年38歳という若さで、これからが楽しみ(神奈川フィルの常任指揮者になったのは8年前というから29歳ぐらいのころだった)。

とても個性的に見えた首席ソロ・コンサートマスターの石田泰尚も気になった(一見するとヤクザ映画に出てきそうな風貌で、事実、硬派弦楽アンサンブル「石田組」の組長をしているというから、その見た目を本人も気に入ってるみたいだ)。