アルゼンチンの赤ワイン「カイケン・ウルトラ・マルベック(KAIKEN ULTRA MALBEC)2020」
チリのモンテス社がアルゼンチンで手がけるワイン。
今やアルゼンチンワインといえばマルベックなのだそうだ。
なぜなら、もともとフランスの南西地方に起源を持つブドウ品種のマルベックだが、170年ほど前にアルゼンチンに伝わり、現在では世界の栽培面積の75%以上をアルゼンチンが占めているのだとか。
フランスのマルベックとはまた違った味わいを楽しめる。
ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していたアメリカ映画「THE FORGER 天才贋作画家 最後のミッション」。
2014年の作品。
原題「THE FORGER」
監督フィリップ・マーティン、出演ジョン・トラボルタ、クリストファー・プラマー、タイ・シェリダン、アビゲイル・スペンサーほか。
贋作画家のレイ・カッター(ジョン・トラボルタ)は懲役5年の刑で刑務所暮らしをしていたが、出所まであと10カ月となったところで、暗黒街のボスに頼み込んで裁判所の判事をワイロで抱き込んでもらい、急きょ仮出所する。15歳の息子ウィル(タイ・シェルダン)がステージ4の脳のがんを患って余命わずかと宣告され、息子と少しでも一緒の時間をすごすためだった。
しかし、出所の条件として、ボスがレイに命じたのは、ボストン美術館に展示されるモネの贋作をつくり、本物とすり替える計画だった。
レイは、詐欺師としてならした父親のジョセフ(クリストファー・プラマー)とともに、大胆なモネ強奪計画を実行に移す・・・。
目つきがちょっといやらしかった若いころと違って、むしろ精悍な感じとなったジョン・トラボルタ。これも年の功か。
主役はトラボルタ演じる贋作作家レイだが、息子ウィルの存在も主人公に負けていない。
レイがウィルに「何でも願いを3つ叶えてあげよう」というと、ウィルがあげた1つ目の願いは「別れて暮している母親に会いたい」、2つ目は「セックスしたい」、3つ目は、レイがボストン美術館からモネの作品を盗むと知って「父さんの仕事を手伝いたい」というものだった。生きている彼の最後の「3つの願い」をめぐっての父と子、さらにはウィルの祖父のジョセフまでも加わって、サスペンスとともに家族の物語ともなっていく。
だが、気になったのが、ボストン美術館に展示されていて盗むターゲットになったのが「散歩、日傘をさす女性」(1875年)という作品だったことだ。
ボストン美術館が所蔵するモネの名画といえば「ラ・ジャポネーズ」(1876年)という作品であり、「散歩、日傘をさす女性」はボストン美術館ではなくてワシントンのナショナル・ギャラリーが所蔵している。
ボストン美術館でモネの展覧会が開かれていて、一時的に貸し出されていたということなのだろうが、それにしてもなぜボストン美術館の代名詞である「ラ・ジャポネーズ」ではなくて「散歩、日傘をさす女性」だったのか?
「散歩、日傘をさす女性」は1875年、モネが34歳のときに描かれた。描かれているのはモネの妻のカミーユと当時5歳の息子ジャン。散歩で丘の上にのぼった2人を後ろから呼び止め振り返った瞬間が描かれている。
光が巧みに表現されていて、「光の画家」といわれるモネらしい描き方で、なおかつ妻と子への愛情あふれた作品。しかし、この絵から4年後の1879年、カミーユは32歳で亡くなる。
モネはその後も「日傘をさす女性」の絵を描いていて、カミーユの死から6年後の1886年にも2つの「日傘をさす女性」を描いているが、最初の作品と違って顔の表情がはっきりしていない。
モネはその後、2番目の妻を迎えているが、亡くなったカミーユのことが忘れられず、彼女を思いながら描いたのではないかといわれている。
なぜモネはカミーユを忘れられなかったかというと、カミーユが生きているころまではモネの絵はなかなか売れなかった。だから彼女は貧乏な生活しか知らず、モネが大成功するのは彼女が亡くなったあとからだった。
生活費を捻出するためカミーユが大切にしていたペンダントを質屋に持っていくこともあり、モネは友人宛てに「どうしても亡き妻の首にかけてやりたいので出してほしい」と懇願する手紙が残っているという。
貧しくとも夢を失わず、苦楽を共にした仲だったからこそ、モネはカミーユのことを忘れられなかったに違いない。
本作の主人公であるレイにとって、妻(つまりは息子ウィルの母親)は愛し愛される仲だったろうが、薬物中毒になって2人を置いて家から出ていっていて、長い間音信不通だった。
映画の中で、レイが「散歩、日傘をさす女性」の本物そっくりの贋作を描くシーンがあるが、モネの絵をただ模写するのではなく、モネの当時の気持ちの中に入り込みながら描いていく、というようなセリフがあった。このとき彼の脳裏をよぎったのは、自分や息子を置いて家を出ていった妻のことだったのではないのか?
あくまでサスペンスアクションに徹したかったのか、妻との関係はその後どうしたのか、はっきりしないままで終わってしまったのは残念だった。
ついでにその前に観た映画。
民放のCSで放送していた日本・フランス・中国合作の映画「世界」。
2004年の作品。
原題「THE WORLD」
監督・脚本ジャ・ジャンクー、出演チャオ・タオ、チェン・タイシェン、ワン・ホンウェイ、ジン・ジュエ、チャン・チョンウェイ、シャン・ワンほか。
北京郊外にあるアミューズメント・パーク「世界公園」。エッフェル塔やピラミッド、 タージ・マハールや五重塔といった世界40カ国109カ所のモニュメントが10分の1に縮小、再現されている観光スポットだ。
この公園でダンサーとして働くタオ(チャオ・タオ)は、毎日あでやかな衣装を身にまとい舞台に立っている。職場では同僚たちから「姐さん」と慕われ、プライベートでは世界公園の警備主任として働くタイシェン(チェン・タイシェン)という恋人もいるが、観客に振りまく笑顔とは裏腹に、将来に対して漠然とした不安を抱えている。
より多くのお金を稼ぐために転職する友人、恋人との結婚が決まった同僚、女であること を利用してキャリアアップをはかろうとする後輩、そして年上の女性に心を動かされては じめたタイシェン。
憧れ、不安、嫉妬、失望、そしてささやかな喜び――さまざまな思いを抱えながら、ひたむきに踊り続けるタオ。北京の街も2008年のオリンピック開催を前に日々変わってゆく・・・。
北京郊外に実際にあるテーマパーク「世界公園」が舞台。北京にいながらにして世界を旅することができるという公園の中を行き来しながら、外に出られず世界に飛び立つことができないダンサーたちの物語。現代中国が抱える問題を若者たちの視点から描写した作品といえる。
ジャ・ジャンクー監督は、中国ニューウェーブ“第六世代”と呼ばれる監督だそうで、インタビューの中で「世界公園」を舞台にした理由を次のように語っている。
「世界公園は、まるで今の中国の社会を予言したかのような存在でした。パスポートもいらずにどこの世界にも行かれるけれど、実は閉じられた世界で、その空間の中に世界が集中しているんです。その雰囲気が、今の閉塞感あふれる中国の社会を描く時にぴったりだと思いました」
前作の「青い稲妻」(2002年)は中国政府の検閲を受けずに製作された“地下映画”だったが、カンヌ映画祭で賞賛を受けた。そうした国際的な“圧力”が功を奏したのか、初めて国内で劇場公開を許可された作品という。
民放の地上波で深夜に放送していたアメリカ映画「欲望のバージニア」。
2012年の作品。
原題「LAWLESS」
監督ジョン・ヒルコート、出演シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ジェイソン・クラーク、ガイ・ピアース、ジェシカ・チャスティン、ミア・ワシコウスカ、ゲイリー・オールドマン、ガイ・ピアーズほか。
アメリカ禁酒法時代の後期、ギャングや腐敗した警察がはびこるバージニア州を舞台に実際にあった復讐劇を映画化。
1931年、バージニア州。密造酒ビジネスで名を馳せた長男ハワード(ジェイソン・クラーク)を筆頭とするボンデュラント3兄弟の次男フォレスト(トム・ハーディ)は、シカゴから来た女性マギー(ジェシカ・チャスティン)に心を奪われ、三男ジャック(シャイア・ラブーフ)は牧師の娘バーサ(ミア・ワシコウスカ)に恋をしたことから、兄弟の力関係に変化が起こり始める。
一方、新しく着任した特別取調官レイクス(ガイ・ピアース)は高額の賄賂を要求するが、兄弟はこれを拒否。するとレイクスは、脅迫や暴力によって兄弟の愛する女性や仲間たちに危害を加えていく・・・。
クライマックスの銃撃戦がすさまじいが、相手の弾が当たって3兄弟はみんな死んじゃったかと思ったら、映画の最後に後日談か語られていて、みんなピンピン、元気にしていてびっくり。弾が1発あたっただけで死んでしまうのは映画だからで、実際には人間はなかなか死なないものなのかと感心したら、そもそも実在のボンデュラント3兄弟には驚くべき不死身伝説があるのだとか。
長男のハワードは第一次世界大戦で一個大隊が全員海に沈んだのに彼だけが生還し、次男フォレストは全米を襲ったスペイン風邪で両親が亡くなるも彼だけは無事だった。3人とも警察権力にもギャングにも屈しない、撃たれても死なないという強靱な団結力と精神力を持っていて、バージニアでは伝説の3兄弟として有名という。
原作は映画の邦題と同じ「欲望のバージニア」(原題THE WETTEST COUNTY IN THE WORLD、集英社文庫)という小説だが、作者のマット・ボンデュラントは三男のジャックの孫。アメリカの原風景を活写した作品というので話題となり、映画化につながった。
映画の中でときおり挿入される音楽もカントリーミュージックふうで味わい深い。
音楽は脚本も書いたシンガーソングライターで作家、俳優でもあるニック・ケイヴが担当。
90歳となった昨年、最新アルバムをリリースするなど現役で活躍するウィリー・ネルソンを始めカントリー・ミュージック界の重鎮たちが歌っていて、とくにエンディングの曲の渋い声にしびれる。