善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「8番目の男」「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」

いつも晩酌では日本酒を飲んでいる。

今、飲んでいるのは広島の酒「華鳩 八反錦 純米吟醸」。

東京・神田にある日本酒の専門店「神田和泉屋」から送ってもらっている。

 

たまに飲むのがワインで、きのう飲んだのはアルゼンチンの赤ワイン「カイケン・ウルトラ・マルベック(KAIKEN ULTRA MALBEC)2020」

(写真はこのあとハンバーグ)

チリのモンテス社がアルゼンチンで手がけるワイン。

凝縮した果実味と穏やかなタンニンが織りなす力強い味わいのマルベック・・・。

マルベックはもともとフランスの南西地方に起源を持つが、170年ほど前にアルゼンチンに伝わり、気候風土がぴったりだったのか、今では世界の栽培面積の75%以上をアルゼンチンが占めているという。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していた韓国映画「8番目の男」。

2019年の作品。

原題「JUROR8」

監督・脚本ホン・スンワン、出演パク・ヒョンシク、ムン・ソリ、ペク・スジャン、キム・ミギョン、ソ・ジョンヨンほか。

2008年に韓国で導入された国民参与裁判での実際の事件をベースに、陪審員に選ばれた8人の一般市民たちを描いた法廷ドラマ。

 

韓国の歴史上初めて国民が参加する裁判が開かれる日がやってきた。全国民注目の中、年齢も職業も異なる8人の一般市民が陪審員団として選定された。

彼らが扱うこととなったのは、息子が母親を殺害したとして起訴された裁判で、すでに証拠、証言、自白が揃っていて有罪は明白だったが、被告人が最後の最後で否認に転じたため、陪審員たちは急きょ有罪か無罪の決断を迫られることになる。

陪審員8人のうち7人が「有罪」に手をあげる中、ただ一人、陪審員番号8号の男が疑問を提示して・・・。

 

一見簡単明瞭に思われたた裁判の行方が、8番目の男の言葉から次第に変化していく。

明らかにヘンリー・フォンダ主演のアメリカ映画「十二人の怒れる男」(1957年)をパクったというかリメイクした作品。

しかもリアリティーはまるでなく、裁判の途中、審理をおっぽり出して裁判官、検事、弁護人、陪審員が連れ立って現場検証に出かけていったり、現場検証した家から番号8の陪審員が判決の内容に関わる重要証拠を見つけてこっそりポケットに入れて持ち帰ったり、法廷で被告人に実際に凶器とされた金槌を振るわせたり(もし金槌で暴れたりしたらどうするんだろう。実際、斧が飛んできて裁判長がケガをしている。それでも裁判は続行)、陪審員が裁判所の庁舎内をウロウロ歩き回って被告と会って話したり、合議制のはずなのに裁判長が独断で判決を言い渡したり、こんな裁判ありえないというおとぎ話みたいな展開なんだが、どうせフィクションで虚構の世界を描いているんだからと割り切って観ていくと、なかなかおもしろい映画だった。

それは監督の映画づくりがうまかったからに違いない。

デタラメの世界を描いているのに、いや、デタラメの世界を描いているからこそかもしれないが、おかげで問題の本質が凝縮されてよくわかり、韓国で2008年から始まった国民参与裁判の持つ意義や問題点が浮きぼりになった気がした。

 

ついでにその前に観たのは、NHKBSで放送していたアメリカ映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」。

2011年の作品。

原題「EXTREMELY LOUD & INCREDIBLY CLOSE」

監督スティーブン・ダルドリー、出演トム・ハンクスサンドラ・ブロックトーマス・ホーンマックス・フォン・シドーほか。

大好きな父を2001年9月11日の同時多発テロで失った少年オスカー。1年後、父の死を受け入れられないで悲しみに暮れたままだった彼は、クローゼットで1本の鍵を見つける。

何の鍵かも製造元も分からないが、きっと父が残した自分へのメッセージと信じた彼は、カギの手がかりを探しに出ると、鍵業者が鍵の入った封筒に書かれた“ブラック”という文字に気づく。調べると“ブラック”が名前に入った人物はニューヨークに472人いた。

オスカーは、これが父の仕掛けた調査探検ゲームのひとつで、鍵穴を探し当てればメッセージが受け取れると思い、鍵穴を探そうとニューヨーク中を駆けめぐる・・・。

 

アメリカの小説家ジョナサン・サフラン・フォアの同名のベストセラー小説を原作に、9・11で最愛の父を失った少年の成長物語。

トム・ハンクスサンドラ・ブロックといったそうそうたる役者が出ているが、実質的な主役はオスカーを演じるトーマス・ホーン。この映画が公開されたとき14歳。オーディションで選ばれたというが、演技経験は小学校の寸劇だけという未熟さが、かえって純真無垢な少年を演じるのにプラスになっている。

声を出すことができず、筆談でしか会話できない間借り人の老人役のマックス・フォン・シドーが存在感のある演技。彼は2020年、90歳で亡くなっている。

ちょっとしか出ないがマンションのドアマン役のジョン・グッドマンもいい味出していた。