善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「平原児」「トゥー・ウィークス・ノーティス」「ミッション・ポッシブル」

チリの赤ワイン「サンタ・ディグナ・メルロ・グラン・レゼルヴァ(SANTA DIGNA MERLOT GRAN RESERVA)2022」

スペインのトーレスがチリで手がけるワイン。

チリの中央部に位置するセントラル・ヴァレーの温暖な沿岸部から冷涼なアンデス山脈近くまでの、いくつかの異なる気候の畑で育ったメルロをブレンド

全体の70%をフレンチオークで6カ月間熟成させたのちに瓶詰めされたのだとか。

メルロらしくまろやかで、やさしい味。

 

ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していたアメリカ映画「平原児」。

1936年の作品。

原題「THE PLAINSMAN」

監督セシル・B・デミル、出演ゲイリー・クーパージーン・アーサー、ジェームズ・エリソン、チャールズ・ビックフォードほか。

今から87年前につくられたワイルド・ビル・ヒコック、バッファロー・ビル・コディ、カラミティ・ジェーンなど実在の伝説的人物が活躍する西部劇。モノクロだが、デジタル修復したらしく画像は鮮明。CGなんか使ってなくても戦闘シーンは迫力があり、ゲイリー・クーパージーン・アーサーもみんな若くて、特にハリウッド一の早撃ちといわれたクーパーのガン裁きがカッコイイ。

 

1865年、南北戦争が終わり、戦争で儲けていた武器商人は北軍・南軍に武器を売れなくなったものだから代わりに先住民(インディアン)にライフルを売ることを計画。密売人を送り込む。

一方、親友のバッファロー・ビル・コディ(ジェイムス・エリスン)とその妻ルイザ(ヘレン・バージェス)と会ったワイルド・ビル・ヒコック(ゲーリー・クーパー)は一緒にセントルイスへ。そこで駅馬車の馭者をしているカラミティ・ジェーン(ジーン・アーサー)と再会する。ジェーンは、いい寄る男どもに得意の鞭をくれてやるので「疫病神(カラミティ)」と呼ばれたが、ヒコックには恋心を抱いていた。

コディはカスター将軍(ジョン・ミルジャン)からの命令で弾薬輸送の道案内役となり、ヒコックは武装蜂起したシャイアン族酋長イエローハンド(ポール・ハーヴェイ)の追跡を引き受ける。

シャイアン族の部落で農機具の箱に入ったライフルを発見。武器商人たちが農機具の箱にライフルを入れて運んでいることを知ったヒコックは、密売人たちを追うが・・・。

 

映画は時代を映す鏡でもあるが、その思いをより強くしたのが本作だった。

製作された1936年といえば、前年にドイツがヒトラーのもとヴェルサイユ条約を破棄して再軍備を進め、日独伊防共協定が成立した年。ヨーロッパやアジアに戦雲がたれ込める中、困難にめげず活躍する西部の英雄を描くことで、アメリカ国民の愛国心を鼓舞することが意図されていて、映画の最後には勇ましいナレーションが流れていた。

先住民(インディアン)の描き方も旧時代そのままで、ヒコックらは武器商人が先住民に武器を密売するのを阻止しようとするのだが、その目的は、白人と先住民とがともに共存する平和のためなんかではなくて、武器が先住民に渡ればより狂暴化するというので、野蛮な集団としてしか先住民は描かれていない。

英雄はあくまで白人に限られている。

 

それでも、クーパーの早撃ちの速さには驚くばかり。

映画評論家の淀川長治さんの談によると、監督のデミルにクーパーが銃を抜いて見せたところ、「ワイルド・ビルがそんなに遅いわけない」といわれて発奮したクーパー。猛練習の結果、“0・3秒の世界一の早撃ち”と宣伝文句にいわれるほどの腕前になったんだとか。

その上クーパーは二丁拳銃で、右手で左、左手で右の銃を抜くリバースドローだから、抜くときのハンデがあるはずだが、ものともしない。「シェーン」(1953年)のアラン・ラッドも速いといわれたが、彼は0・4秒で、クーパーにはかなわなかったとか。

しかも、昔の映画人のプライドとして、スタントマンを使って早撃ちの手だけをアップにしたり、コマ送りにしたりとかの細工はしない。正真正銘クーパーのガン裁きだった。

始めのころ「遅いじゃないか」といった監督のデミルも、あまりに速いものだからトリックに見えるのではと心配して、「もっとゆっくり抜いてくれ」といったとかいわないとか。

 

映画の途中、ワンシーンだけアンソニー・クインが出ていた。

この映画のとき彼は20歳ぐらいの若さで、この年、映画デビューしたばかり。何でも監督のデビルの目にとまって抜擢されたらしくて、それだけでなく翌年にはデミルの娘と結婚している。

 

ラストのセリフが印象的だった。

銃の密売人たちを捕まえてハッピーエンドで終わるはずが、ヒコックは背後から撃たれ、ジェーンに抱きかかえられながら死んでいく。ジェーンは死んでしまったヒコックの唇にキスして、涙に暮れながらいう。

「もう唇を拭けないわね」

気の強い彼女だったが、ヒコックに恋心を抱いていて、実はヒコックも彼女に気があったらしいが、寡黙なガンマンらしく態度には見せない。

再会したときのあいさつのときとか、何度かキスするが、そのたびにヒコックは照れ隠しなのか、キスしたあとに唇を拭く。その度にジェーンは苛立った。しかし、死んだヒコックはもはやキスのあと唇を拭くことはなく、やっと本当のキスができたのだった。

映画の原語では「これが最後のキスね」で、最近のDVDの字幕もそうなっているらしいが、テレビで放送された劇場版の字幕では「もう唇を拭けないわね」となっていて、こっちのほうがよほど切なくて、胸にグッとくる。

日本語字幕をつくった人のセンスのよさに拍手を送りたい。

 

ちなみに、この映画では勝気な女性を演じたジーン・アーサーは、1953年の「シェーン」では、シェーンに惹かれる倹しい開拓農民の妻を演じ、これが彼女の映画出演の最後となった。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のCSで放送していたアメリカ映画「トゥー・ウィークス・ノーティス」。

2002年の作品。

原題「TWO WEEKS NOTICE」

監督・脚本マーク・ローレンス、製作サンドラ・ブロック、出演サンドラ・ブロックヒュー・グラントほか。

リベラル派の熱血女性弁護士と、土地開発をめぐり対立関係にあったハンサムだが優柔不断で女たらしの金持ちの次男坊が恋に落ちてしまうロマンティック・コメディ。

 

父も母もリベラル派で、その元に育って環境保護と歴史的建造物保存に情熱を傾けるハーバード大出の熱血弁護士ルーシー(サンドラ・ブロック)は、自分が住むニューヨークの歴史ある公民館の取り壊しに反対するため、そこにビルを建てようとする不動産会社のCEOであるジョージ(ヒュー・グラント)に直談判。

秘書を兼ねた優秀な弁護士を探していたジョージは、彼女の度胸を気に入り、公民館取り壊しを白紙にすることを条件に、彼女を秘書に採用する。ところが、優柔不断でいい加減な彼の性格にあきれ果てたルーシーは、「あと2週間で辞める」と宣言。後任の美人弁護士が採用され、いよいよ辞めることになるのだが・・・。

 

何しろルーシーは共和党が大嫌いらしく(それにしてはトランプ前共和党大統領がで実名でチョットだけ出演していたが、そのころはまさか彼が共和党から立候補して大統領になるなんて誰も、本人も思ってなかったのだろう)、今までに泣いたのはブッシュが大統領に当選したときだけ、というので、ブッシュは親子で大統領になっているから「泣いたのは2回だけ」という根っからのリベラル派。

そんな彼女がよくも大金持ちのお坊ちゃんに恋をするものだとも思うが、そこはアメリカ。最後は優柔不断のお坊ちゃんが地位も名誉も捨てて、彼女の元に走って一緒に貧乏生活を楽しむところでジ・エンド。

ラストのルーシーのセリフがいい。

今までは一人暮らしで、中華の店に電話で出前を頼むときも「箸は1つ」といってたのが、お坊ちゃんと一緒に暮らすようになって、「うーん、箸は2つ」。

それにしても、ハンサムだけど優柔不断で女たらし、という役にヒュー・グラントはピッタリなんだけど。

 

タイトルの「TWO WEEKS NOTICE」とは要するに「退職願」のこと。

アメリカでは退職希望ときは2週前に会社にその旨会社に伝えないといけないという習慣があるそうで、慣用句として使われているらしい。

では日本はどうかというと、労働者側からの退職は「退職の自由」にもとづいて事前の意思表示さえあれば時期に関係なく認められるのが原則。労働基準法にも、労働者側からの申し出の場合、退職までの期間を区切るような項目はない。一方、民法627条1項では、退職を申し出てから2週間が経過すれば自動的に雇用契約が終了すると定められていて、これにより意思表示から2週間がたつと、たとえ使用者が認めていなくても労働契約は終了することになる。

一方、使用者側からの解雇通告は労働基準法で厳しく制限されていて、少なくとも解雇の30日前に通知することになっている。

 

民法のCSで放送していた韓国映画「ミッション・ポッシブル」。

2021年の作品。

原題「MISSION:POSSIBLE」

監督・脚本キム・ヒョンジュ、出演キム・ヨングァン、イ・ソンビン、オ・デファン、キム・テフンほか。

不可能を可能にする、というわけで、トム・クルーズ主演の「ミッション・インポッシブル」ならぬ「ミッション・ポッシブル」。お調子者の探偵と秘密エージェントのヒロインという相性最悪のコンビが、大がかりな武器密輸事件に挑むアクションコメディ。

 

カネさえもらえれば何でもする探偵ウ・スハン(キム・ヨングァン)のもとに、任務に命を懸ける中国の秘密工作員ユ・ダヒ(イ・ソンビン)が現金1000万ウォンをもって現れ、武器密売事件の解決に協力を要請してくる。

価値観の全く異なる2人は口を開けばケンカをし、何かをするたびに事件が起こしてばかりで、1人でいるよりも2人でいるほうが余計に目立ってしまう始末。作戦を重ねるごとに事態は大ごとになり、誤解される手がかりをあちこちに残して、ついには指名手配になってしまう。

果たして2人は無事任務を遂行することができるのか?

 

中国の秘密工作員ユ・ダヒは、北京大学出の中国の情報機関であるMSS(中国国家安全部)のスパイ(ただし研修中)。これに対して、やる気のないお調子者の探偵がいかにも不釣り合いだが、実はこの男、韓国陸軍の特殊部隊である第707特別任務大隊の教官だった人物で、ある事情から除隊して街の探偵に転じていた。

お調子者の仮面を脱ぐと、ずば抜けた身体能力を発揮する“スーパー兵士”に変身、高難度アクションで敵をやっつけ、“不可能を可能にする”というオチ。