善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「ビッグ・アイズ」「われらが背きし者」

スペインの赤ワイン「クリアンサ(CRIANZA)2018」

ピレネー山脈の麓、フランスとの国境に近いスペイン北東部アラゴン州のソモンターノ地方でワインづくりをしているエテーナのワイン。

スペインの土着品種テンプラニーリョと国際品種カベルネ・ソーヴィニヨンブレンド

飲み応えのある1本。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「ビッグ・アイズ」。

2014年の作品。

原題「BIG EYES」

監督ティム・バートン、出演エイミー・アダムスクリストフ・ヴァルツダニー・ヒューストンテレンス・スタンプほか。

1960年代アメリカのポップアート界で人気を博した「ビッグ・アイズ」シリーズをめぐり、実在の画家マーガレット&ウォルター・キーン夫妻の間に起こった出来事を描いたドラマ。

 

1958年。幼いひとり娘を連れて夫と別れたマーガレット(エイミー・アダムス)は、サンフランシスコに移り住み、街角の似顔絵描きで生計を立てるようになる。

内気で優しすぎる彼女は、パリで絵の勉強をしたと称するウォルター(クリストフ・ヴァルツ)と出会うが、社交的で自信家のウォルターに惹かれ、2人は知り合って間もなく結婚。ウォルターは彼女が描く“ビッグ・アイズ”シリーズを、「女性が描いた絵では売れない」という理由で自分が描いた作品として売り出し、一躍注目を浴びて大金持ちとなり、次々とメディアに登場しセレブたちと派手に遊び歩くようになる。

一方のマーガレットは孤独に1日16時間も絵を描き続けるが、誰も彼女の画家としての才能を知る人はいない。ついにマーガレットは、娘にさえウソをつき続けることに心を痛め、このままでは自分自身を失ってしまうと、“ビッグ・アイズ”の本当の作者は自分だと明らかにし、「いや自分だ」といい張るウォルターとの争いは法廷に持ち込まれるが・・・。

 

観ていて、以前にも同じようなテーマの映画があったなーと思い出したのが、グレン・クローズ主演の「天才作家の妻 40年目の真実」(2017年)だった。

現代文学の巨匠”と呼ばれるアメリカの作家ジョゼフ(ジョナサン・プライス)にノーベル文学賞が授与されることになり、妻のジョーン(グレン・クローズ)とともにストックホルムにやってくるが、本当の作者は妻のジョーンでり、彼女は影となって夫の成功を支えてきたことが明らかとなる。

ビッグ・アイズ」で夫が自分の作品にしようとして妻を説得した理由は「女性の作品では売れないから」だったが、「天才作家の妻・・・」でも、女性蔑視の風潮の中、「女性作家の小説は売れない」と烙印を押されていて、失望したジョーンは作家になる夢を諦め、夫に自分の才能を捧げていたのだった。

「天才作家の妻・・・」はフィクションらしいが、「ビッグ・アイズ」は実話にもとづいている。

映画でも描かれているが、マーガレットは夫のウォルターと離婚したあと自分が真の作者であることを公表し、法廷で争う。

1986年にマーガレットが起こした名誉毀損裁判において、何が有力証拠となったかというと、2人が描く絵だった。判事は2人に「法廷内で“ビッグ・アイ”の絵を描いてください」と告げる。マーガレットは1時間足らずで作品を完成させるが、ウォルターはまったく筆が進まない。ついに肩の痛みを理由に描くのを拒否し、キャンバスは真っ白のままだった。

「動かぬ証拠」とはこのことだろう。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のCSで放送していたイギリス映画「われらが背きし者」。

2016年の作品。

原題「OUR KIND OF TRAITOR」

監督スザンナ・ホワイト、出演ユアン・マクレガーステラン・スカルスガルドダミアン・ルイスナオミ・ハリスほか。

元MI6(イギリス秘密情報部)という経歴を持つ作家ジョン・ル・カレの同名スパイ小説を映画化。

 

イギリス人の大学教授ペリー(ユアン・マクレガー)と妻のゲイル(ナオミ・ハリス)は、モロッコで休暇中、ディマ(ステラン・スカルスガルド)というロシア人と知り合い、意気投合する。

ところがある日、ディマは実は自分はマフィアのマネーロンダリング資金洗浄)に長年携わってきて、組織から足を洗おうとして家族を含め命の危険を感じていることをペリーに告白。イギリスへの亡命と保護を求めて、マネーロンダリングの機密情報を記録したUSBメモリをMI6に渡してほしいと懇願される。

仕方なくMI6との交渉役を引き受けるはめとなったペリー夫妻だったが、USBメモリにはロシアン・マフィアとイギリス政界の癒着を示す証拠が記されていて、ペリーは世界を股にかけた危険な亡命劇に巻き込まれていく・・・。

 

どこまで本当かわからないが、原作者のジョン・ル・カレは、作家になる前はMI5(保安局)やMI6に在籍していてスパイの経験もあるというのだから、内情には詳しい。

彼は50年代初頭、オクスフォード大学在学中にMI5にスカウトされて情報提供者、つまりはスパイになり、卒業後、教職を経てMI5の一員となったのは26歳のとき。その後、MI6に転じ、61年に二等書記官として西ドイツの首都ボンの英国大使館に勤務。63年からハンブルクの領事を務めている。

このときの経験が世界的なベストセラーとなった「寒い国から帰ってきたスパイ」の下敷きになっているという。

本作であぶり出されたのは、ロシアン・マフィアとイギリス政界との癒着だった。

映画では、ロシアン・マフィアが代替わりして、先代ボスの息子が市場を牛耳るようになってから、ロシア政府と結託して市場を牛耳るようになっただけでなく、汚れたカネをロンダリングするためイギリスに銀行を開設することを目論む。そのための人脈の中には元MI6で今は国会議員となっている者もいて、機密情報には甘い汁を吸おうとするイギリスの下院議員の名前がズラズラと出てくる。

天下国家を論じる裏ではワイロで私腹を肥やそうとするのはどこの国の政治家も同じなのだろうか。