善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「リリーのすべて」他

フランス・ボルドーの赤ワイン「シャトー・ジレ・ルージュ(CH.GILLET ROUGE)2019」

(写真中央は牛挽き肉ステーキ、タマネギソース)

5世代に渡ってボルドーの地でワインを造る老舗シャトー、シャトー・ジレの赤ワイン。ふくよかな果実味となめらかな舌触りが魅力の、親しみやすい仕上がりの赤ワイン。

ブドウ品種はメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンカベルネ・フラン

 

ワインの友で観たのは、民放の地上波で放送していたイギリス映画「リリーのすべて」。

2015年の作品。

原題「THE DANISH GIRL」

監督トム・フーパー、出演エディ・レッドメインアリシア・ビカンダー、ベン・ウィショーほか。

 

世界で初めて性別適合手術(男性から女性)を受けたリリー・エルベの実話を描いた伝記ドラマ。

1926年、デンマーク。男性として生きてきた風景画家のアイナー・ベルナー(エディ・レッドメイン)は、肖像画家の妻ゲルダアリシア・ビカンダー)に頼まれて女性モデルの代役を務めたことをきっかけに、自身の内側に潜む女性の存在を意識する。

それ以来「リリー」という名の女性としてすごす時間が増えていくアイナーは、心と体が一致しない現実に葛藤する。ゲルダも当初はそんな夫の様子に戸惑うが、次第にリリーに対する理解を深めていく・・・。

 

原題の「THE DANISH GIRL」とは「デンマークの女性」という意味で、自分の心のまま生きようとした一人のデンマークの女性の物語、ということだろう。

 

デンマークの自然が美しく、よくできた作品。

主人公のアイナーは、故郷デンマークのヴァイレの風景を描き続けていた。映画の最後に、ゲルダがヴァレルにやってくるが、そこにはアイナーが描くそのままの風景が広がっていた。アイナーとゲルダの絆を結んだスカーフが飛んでいく。まるで2人の心が自由を得て天空に飛び立ったみたいだった。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアイルランイド・イギリス・アメリカ合作の映画「シング・ストリート 未来へのうた」。

2015年の作品。

監督ジョン・カーニー、出演フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ルーシー・ボイントン、ジャック・レイナーほか。

 

アイルランドの映画監督ジョン・カーニーの半自伝的作品で、好きな女の子を振り向かせるためにバンドを組んだ少年の恋と友情を1980年代ブリティッシュサウンドに乗せて描いた青春ドラマ。

 

大不況にあえぐ1985年のアイルランド、ダブリン。14歳の少年コナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は、父親が失業したために私立校から荒れた公立校に転校させられてしまう。さらに家では両親のケンカが絶えず、家庭は崩壊の危機に陥っていた。最悪な日々を送るコナーにとって唯一の楽しみは、音楽マニアの兄ブレンダン(ジャック・レイナー)と一緒に隣国ロンドンのミュージックビデオをテレビで見ること。

そんなある日、街で見かけた少女ラフィナ(ルーシー・ボイントン)の大人びた魅力に心を奪われたコナーは、自分のバンドのPVに出演しないかとラフィナを誘ってしまう。慌ててバンドを結成したコナーは、ロンドンの音楽シーンを驚かせるPVを作るべく、猛特訓を開始するが・・・。

 

題名の「シング・ストリート」とは主人公らが結成したバンド名「SING STREET」を指すが、ダブリンに実在する通りの名前「シング・ストリート」からとられている。

ただし、実在する方は「SYNGE STREET」で、SYNGEはもともと18世紀の歴史上の人物の名前に由来しているらしいが、映画は「SING STREET」でまさしく「歌うストリート」。

なおかつ彼らが通う学校名が、その通りにあるというので「SYNGE STREET CBS(シング・ストリート・クリスチャン・ブラザーズ・スクール)」。

ジョン・カーニー監督の出身校で、彼の思い出が詰まった映画となった。

 

民放のBSで放送していた中国・香港合作映画「追龍」。

2017年の作品。

監督バリー・ウォン、ジェイソン・クワン、出演ドニー・イェンアンディ・ラウ、ケント・チェンほか。

 

「イップ・マン」のドニー・イェンと「インファナル・アフェア」のアンディ・ラウというアジアの2大スターが共演したクライムドラマ。

1960年代の香港に実在した香港マフィアのボス、ン・サイホウと警察署長リー・ロックをモデルに、汚職が蔓延した警察と彼らとつながっていた黒社会との関係を描き出していく。

 

中国広東省東部の潮州から仕事を求めて香港にやってきたホウ(ドニー・イェン)は、ヤクザ同士の争いに助っ人で加わって警察に逮捕されるが、ホウの腕力に目を付けた警察署長のロック(アンディ・ラウ)に助けられる。

当時の香港は警察と黒社会が結託し汚職が横行していた時代。不思議な友情で結ばれた2人は手を組み、ホウは麻薬王として、ロックは警察上層部へと出世していくが・・・。

 

麻薬取引で富を築く成り上がり者の男と、汚職にまみれて甘い汁を吸う警察署長。いずれも許せない2人なのだが、映画はなぜか2人をヒーローのように描いている。

それには時代背景があって、1960年代といえば香港はイギリス領であり、1997年に中国に返還されるまではイギリスが香港を支配していた。だから、マフィアより汚職警官より、憎むべきは横暴をきわめるイギリス人であり、映画でもイギリス人警察幹部の傲慢ぶりが描かれている。

 

映画の冒頭からかつての香港の懐かしい風景が出てる。

建物の屋根スレスレを飛んでいくジェット旅客機。かつて香港の中心地のすぐそばに啓徳空港という国際空港があり、頭上をジャンボ機が飛ぶのはいわば“香港名物”だった(住んでる人にとっては危険極まりなかっただろうが)。

もうひとつの名物といえば九龍城砦。かつては城砦だったが、その跡地にビルが建てられ、どんどん“増殖”していって巨大なカオスのようなスラム街となった。悪の巣窟といわれて「中に入ると出てこれなくなる」などといわれたが、香港返還とともに取り壊され、現在は公園になっている。

映画では無法地帯と化した九龍城砦が出てくるが、きれいすぎていかにもセットっぽい感じがした。

その九龍城砦を闊歩するドニー・イェンが20代のときのホウを演じていたのがおかしかった(この映画のときドニー・イェンは54歳だったから、相当若づくりしている)。