イタリア・ピエモンテの赤ワイン「バルベラ・ダルバ(BARBERA D’ALBA)2021」
イタリア北西部、アルプスの山々に囲まれたピエモンテ州でワインづくりを行っている老舗ワイナリー、プルノットの赤ワイン。
バルベラ100%。
バルベラはピエモンテ州を代表するブドウ品種のひとつで、ピエモンテ州のブドウ作付面積の約35%をバルベラが占めているという。
軽やかでピュアな果実味のあるワイン。
ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していたアメリカ映画「ディナー・ラッシュ」。
2001年の作品。
監督ボブ・ジラルディ、出演ダニー・アイエロ、アドアルド・バレリーニ、カーク・アセヴェド、ビーアン・ウー、サマー・フェニックスほか。
ニューヨークの人気レストランを舞台に繰り広げられる一夜の出来事を描いた群像ドラマ。
ニューヨークの有名四つ星レストラン「ジジーノ」のオーナーのルイス(ダニー・アイエロ)は、裏でやっていたノミ屋家業の古くからの仲間で親友のエンリケを、敵対するギャングに殺される。
一方、彼は息子とも対立していた。彼がオーナーの「ジジーノ」はもともと伝統的な家庭料理の店だったのだが、イタリア帰りの息子ウード(アドアルド・バレリーニ)はオシャレな店に変え、今をときめくスターシェフとなり大評判の店になっていて、経営権を自分に譲れと迫る。しかし、かつての“お袋の味”の店にこだわる昔気質のルイスは首を縦に振らないでいる。
そして夜になり、ディナータイムを迎えた「ジジーノ」には客が次々とやってきて、調理場は戦場のような忙しさとなる。腕は確かだがギャンブル依存でギャングから大金の返済を迫られている副シェフのダンカン(カーク・アセヴェド)、大勢の客を巧みに裁くレセプション担当のニコーレ(ビーアン・ウー)、店に客としてやってきて経営に参画しろと迫るエンリコを殺した2人のギャング、カウンターに陣取るナゾの男、ニューヨークの高名な画商や有名料理評論家の女性と、さまざまな人物模様が描かれるうち・・・。
それなりにおもしろい映画だったが、親友のエンリケは無残にも殺され、彼の娘も孫娘も悲嘆に暮れているのに、同じ裏社会の仲間でレストラン・オーナーのルイスは何の危険にも遭わず、血を見ることもなく、悠然としているのには違和感を感じた。
実はこの映画の舞台となったのはニューヨークに実在する店であり、しかも監督のボブ・ジラルディは同店のオーナーという。店のイメージの上からもオーナーがひどい目に遭うような映画にはしたくなかったのだろうか。
そう考えると、この映画の主役は、つくられる料理だったのかもしれない。
映画に登場するイタリアン・レストラン「ジジーノ」は、ニューヨークのトライベッカ街に実在する店。ロケもここで行われたという。
おそらく実際に「ジジーノ」でつくられたであろう料理が次々に出てきたが、どんな料理かというと――。
前菜で出てきたのが「パネッラ 山羊のチーズ、タルティーボ添え」。
パネッラはシチリアを代表するストリートフードで、ひよこ豆の粉を使った揚げ物のことだが、これに山羊のチーズにタルティーボというチコリの仲間を添えた一品。
パスタは「キタッラ 仔羊のミートボールのトマトソース」。
キタッラは弦切りパスタとも呼ばれ、イタリア中部アブルッツオ地方伝統の手打ち生パスタ。 ギターの弦のように針金を機枠に張って生地を押し切りしてつくる。 断面が四角なので噛み応え十分、むっちりクニュクニュの味わいだとか。
豪華だったのが「オマール海老のシャンパン・ソース・バニラ風味」。
有名料理評論家から「バター抜き、シーフードで、パスタで遊んでちょうだい」との注文を受けてつくった料理。
ゆでたオマール海老にシャンパンベースのクリームソースをかけ、味つけはバニラビーンズ、エシャロット、ライム、それにイクラとワサビをトッピング、揚げたパスタで飾ったもの。
オマールとバニラを合わせた意外感に加え、甘い風味の中にワサビで清涼感を演出。
ステーキは「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」。
フィレンツェ風Tボーンステーキのこと。ボリューム満点の骨付き特大ステーキで、仔牛の肩ロースを使用していて、その名の通りアルファベットのT字型をした大きな骨の左右にそれぞれフィレ肉とロース肉がついている。
伝統的にはトスカーナ州のブランド牛であるキアニーナ牛を使うそうだが、ニューヨークでは何の肉?
カウンターにいる飲んべえの客が一人黙々と飲んでいたのが「バーボン・ソーダ」。
そこへ女性が隣に座って、男が飲んでいるのがバーボンと知って「年寄りみたい」というセリフに、見ているバーボン好きとしてはギャフン。ひょっとしてニューヨークのオジサンの間ではバーボン・ソーダが人気なのか?
日本ではハイボールとして昔から飲まれてるんだが、元祖はニューヨークだったりして。
ついでにその前に観た映画。
2014年の作品。
原題「STILL ALICE」
監督・脚色リチャード・グラッツァー&ウォッシュ・ウェストモアラン、出演ジュリアン・ムーア、アレック・ボールドウィン、ケイト・ボスワース、クリスティン・スチュワートほか。
若年性アルツハイマーの女性アリスが記憶を失っていく日々をつづった全米ベストセラー小説「静かなるアリス」を映画化し、アリス役を演じたジュリアン・ムーアが第87回アカデミー賞で主演女優賞を受賞したドラマ。
ニューヨークのコロンビア大学で教鞭をとる50歳の言語学者アリス(ジュリアン・ムーア)は、講義中に言葉が思い出せなくなったり、ジョギング中に自宅までの道がわからなくなるといった事態が続く。やがて若年性アルツハイマー症と診断され、家族の介護もむなしく、アリスの記憶や知識は日々薄れていく。
そんなある日、アリスは記憶が薄れる前に自らパソコンに残したビデオメッセージを発見し、自分が自分でいられるために、画面の中の自分が語ることを実行しようとするが・・・。
監督のリチャード・グラッツァーは、映画の企画段階から徐々に体中の筋肉が衰えていく難病のALS(筋委縮性側索硬化症)に苦しんでいて、パートナーでもあるウォッシュ・ウェストモアランのサポートを得て撮影に臨んだ。容体が悪化しても撮影を休むことはなく、右足の親指でiPadを叩いてコミュニケーションをとっていたという。翌年2月のアカデミー賞授賞式の2日前、呼吸不全で病院に運ばれたが、ウェストモアランとともに病室で授賞式を観て、その約3週間後に亡くなった。
家の中でトイレに行きたくなったアリスが、トイレの所在がわからなくなり夫の目の前で失禁してしまう姿が何とも痛ましかった。
この作品は、若年性アルツハイマー病となった50歳の女性が、自分であることを失ってしまう「喪失」の物語であるとともに、自分であり続けることを願う「尊厳」の物語でもあるといえるだろう。
監督のリチャード・グラッツァーもALSという難病と闘っていて、彼もまた「アリス」だったのではないだろうか。
原作は日本でも「静かなアリス」という邦題で2009年に講談社から出版された(訳・古屋美登里)。
著者のリサ・ジェノヴァはハーバード大学で神経科学の博士号を取得した神経科学者で、米国アルツハイマー協会のコラムニストでもあり、認知症患者たちとの対話から生まれた作品という。
原作にもあるが、映画ではアリスが医師による診察を受けたとき、認知症かどうかを疑うための簡単なテストが行われる。
日本では認知症のスクリーニング検査として、長谷川和夫医師によって作成された「長谷川式」と呼ばれる簡易検査法があるが、アメリカにもMMSEと略称で呼ばれる「ミニメンタルステート検査」という検査法があるという。
映画では、医師はまず、次の名前と住所をアリスに告げる。
「ジョン・ブラック」「ウェスト・ストリート42番地」
そのあと、「WARTER」を逆にいってとか、いろんな簡単な質問をしていって、最後にもう一度、最初に告げた名前と住所は何だったかと質問してくる。
答えられないアリス。
ひょっとして見ている自分もちゃんと答えられただろうか?
映画を見ていて、フトそう思ってしまった。
民放のCSで放送していたアメリカ映画「スペース・ボール」。
1987年の作品。
製作・監督・脚本・出演メル・ブルックス、ほかに出演ジョン・キャンディ、リック・モラニス、ビル・プルマン、ダフネ・ズニーガほか。
宇宙の平和を乱す帝国に立ち向かう流れ者の活躍を描く「スター・ウォーズ」のパロディ版コメディ。
昔、昔、ワープした昔。遠い銀河系のかなたにスペースボール星人という恐ろしい宇宙人がいた――「スター・ウォーズ」そのくりの字幕とともに映画はスタート。
自分の星の大気を使い果たしたスペースボール星のスクルーブ大統領(メル・ブルックス)以下悪しき指導者たちは、平和を愛する近くのドルイデア星から大気を奪おうと陰謀を画策。レイア姫似のヴェスパ姫(ダフニ・ズーニガ)を誘拐して、父親のローランド王を脅迫して大気を奪うコード番号を聞き出そうと計画する。
アクビ王子との結婚式からC-3PO似の侍女ロボットと一緒に逃げ出したヴェスパ姫は、スクルーブの命令を受けたダース・ベイダー似のダーク・ヘルメット(リック・モラニス)にねらわれる。
姫を助けようとしたのは、ハン・ソロ似のイーグル5号船長ローン・スター(ビル・プルマン)と、チューバッカ似の半人半犬バーフ(ジョン・キャンディ)。ローン・スターらと姫はダーク・ヘルメットらの追跡をかわし、ベガ星に着陸。姫との間に愛もめばえたローン・スターは、寺院の中でヨーダ似の聖者ヨーグルト(メル・ブルックス)に霊力を伝授されるが・・・。
大半は「スター・ウォーズ」のパロディだが、途中の砂漠では「アラビアのロレンス」、海岸のシーンでは「猿の惑星」が出てきたりして、大いに笑わせてくれた。
ほかにも「スタートレック」とか「2001年宇宙の旅」「ピザハット」「オズの魔法使い」「エイリアン」などパロディのオンパレードだった。
製作・監督・脚本・出演のメル・ブルックスは、アカデミー賞、エミー賞、グラミー賞、トニー賞という映画、テレビ、音楽、演劇部門の4つの賞すべての受賞経験がある数少ない人物の一人。本作の映画化にあたっては、「スター・ウォーズ」の監督ジョージ・ルーカスがブルックスのファンだったためパロディ化を快諾してもらったんだとか。
映画は友情とリスペクトによってつくられる。