善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「三姉妹」ほか

イタリア・トスカーナの赤ワイン「アルパ・キャンティ(ARPA CHIANTI)2021」

(写真はこのあと牛ステーキ)

イタリア・トスカーナで、ファッション・ブランドとして名高いフェラガモが手がけるワイナリー、イル・ボッロの赤ワイン。

ブドウ品種はトスカーナを中心に栽培されているサンジョヴェーゼ100%。

柔らかい飲み口で心地よい余韻を感じるワイン。

 

ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していた韓国映画「三姉妹」。

2020年の作品。

監督・脚本イ・スンウォン、出演ムン・ソリ、キム・ソニョン、チョン・ハンチョルほか。

韓国・ソウルに暮らす三姉妹を描くヒューマンドラマ。

長女ヒスク(キム・ソニョン)は別れた夫の借金を返しながら、しがない花屋を営んでいる。一人娘のボミは冴えないパンクバンドに入れあげ、反抗期真っ盛り。元夫からお金をせびられ、娘に疎まれても、“大丈夫なフリ”をして日々をやりすごす。

次女ミヨン(ムン・ソリ)は熱心に教会に通い、聖歌隊の指揮者も務める模範的な信徒。大学教授である夫(チョ・ハンチョル)と一男一女に恵まれ、高級マンションに引っ越したばかり。しかし、夫の裏切りが発覚し“完璧なフリ”をした日常がほころびを見せ始める。

三女ミオク(チャン・ユンジュ)はスランプ中の劇作家。食品卸業の夫(ヒョン・ボンシク)と、夫の連れ子である中学生の息子の3人で暮らしているが、自暴自棄になって昼夜問わず酒浸りの毎日。“酔ってないフリ”をして息子の保護者面談に乗り込んでしまう。

性格、仕事、生活スタイル、全てが異なる人生を送る三姉妹が、父の誕生日を祝うため久々に集まった。そこで、それまでフタをしていた幼少期の心の傷と向き合うことになり、それぞれもがき苦しみながらも、希望を見いだしていく。

 

エンディング曲の独特の響きに心が洗われ、この映画のテーマをいいあらわしているように思えた。

イ・ソラの「愛ではないといわないで」。

 

私の愛は愛ではないといわないでください

見えない道を歩もうとしている

無駄な努力だとは思わないでください

 

私の思いが無駄な希望だといわないでください

頂上のない山に登ろうとする

私の無謀さを笑わないでください

 

私はあなたの手を逃したので道に迷いました

でもやめられない

これが私の愛です

 

イ・ソラは1969年生まれ。1991年にジャズボーカルグループ「見知らぬ人々」のリードボーカルで歌手デビュー。95年にソロデビュー。韓国では大御所的シンガーとして知られるという。

彼女はずっと愛の喪失感を歌い続けているというが、悲しさの中の希望に癒される。

 

ついでにその前に観たのは、NHKBSのプレミアムシアターで放送されていたパリ・オペラ座バレエ「ベジャール・プロ」。

 

2022年5月のパリ・オペラ座(バスチーユ)の舞台映像で、2007年に亡くなったモーリス・ベジャール振付によるバレエ「火の鳥」「さすらう若者の歌」「ボレロ」のトリプル・ビル(3本立て公演)。

火の鳥」はストラヴィンスキー作曲、「さすらう若者の歌」はマーラー作曲、「ボレロ」はラヴェル作曲。

出演は「火の鳥」マチュー・ガニオ、フロリモン・ロリュー、「さすらう若者の歌」オードリック・ベザール、フロラン・メラック、「ボレロ」アマンディーヌ・アルビッソンほかパリ・オペラ座バレエ団。

管弦楽パリ・オペラ座管弦楽団、指揮パトリック・ランゲ。

 

モーリス・ベジャール振付の「火の鳥」は1970年オペラ座で初演。音楽はストラビンスキーだが、1945年につくられた20分あまりに編曲した曲が使われていて(原曲は約48分)、ベジャールは「オリジナルの音楽が正確に追っていた筋は無意味になり、純粋な、振付されることを意図された音楽だけが残った」と語っているという。

 

オーストリアバリトン、トーマス・タッツルの歌うマーラーの曲に乗って、青と赤の衣装の異なるパーソナリティの男性ソリスト2人が踊る「さすらう若者の歌」。

 

最後は円卓の上でソリストが一人踊る「ボレロ」。

ベジャール振付の「ボレロ」は、フランス映画「愛と哀しみのボレロ」(1981年、クロード・ルルーシュ監督)で、映画の最後にアルゼンチン出身のダンサー、ジョルジュ・ドンが踊るシーンを観ている。

ジョルジュ・ドンは赤い円卓の上でおよそ10分にも及ぶ「ボレロ」を踊り続けた。タイツ1つの半裸で、華やかな衣装も、豪華な舞台装置もなく、ただ肉体が躍動する姿が文句なしに美しかった。

今回のソリストパリ・オペラ座バレエ団のエトワール、アマンディーヌ・アルビッソン。

男性と違ったフォルムの美しさ、体の動きのしなやかさ・わらかさがあり、「ボレロ」は踊り手によってそれぞれに違う「ボレロ」があるとわかる。

彼女が踊る円卓のまわりを男性ダンサーたちが取り囲んでいて、彼らのエネルギーを取り込むようにして醸しだされる力強さが印象的だった。