フランス・ブルゴーニュの赤ワイン「ブルゴーニュ・ピノ・ノワール(BOURGOGNE PINOT NOIR)2019」
ブルゴーニュの中心地、コート・ドールの南側、質の高い白ワインを多く産出するコート・ド・ボーヌに位置するピュリニー・モンラッシェ。そこに居を構えるドメーヌ兼ネゴシアンのオリヴィエ・ルフレーヴがつくるブルゴーニュ・ルージュ。
ブドウはすべて手摘みで収穫され、ブドウは潰れないように小さなケースで運ばれ手作業で選別されるという丁寧さ。完成したワインは優しく気品に満ちた味わい。
ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたインド映画「ラジュー出世する」。
1992年の作品。
原題「RAJU BAN GAYA GENTLEMAN」
監督アズィーズ・ミルザー、出演シャー・ルク・カーン、ジュヒー・チャーウラー、ナーナー・パーテーカル、アムリター・シンほか。
紅茶の産地として有名だが、インドでは田舎町のダージリン。ラジュー(シャー・ルク・カーン)は地元の大学を卒業し、建築技師として就職するのを夢見て西インドの大都市ボンベイ(現ムンバイ)へやってくる。
ところが、訪ねた知り合いは所在不明で途方に暮れていたところ、巧みな話術で人を集めて金を稼ぐ大道香具師(やし)ジャイ(ナーナー・パーテーカル)のところに下宿させてもらうことに。そこで下町の人々の人情に触れるうち、教師の娘レヌ(ジュヒー・チャーウラー)と親しくなる。
なかなか就職が決まらないラジューだったが、レヌが勤務する建設会社の面接試験に見事合格。ラジューは社長の娘サプナー(アムリター・シン)に気に入られてとんとん拍子に出世していくが、その先には大きな落とし穴が待ち構えていた・・・。
日本公開は1997年だったが、43年ぶりのロードショー公開となるインド娯楽映画というので話題になったという。インド映画というとアート作品である「大地のうた」(1955年)のような作品は上映されたりしていたが、インドの娯楽映画の上映は久しくなかったのだという。
「ラジュー出世する」の翌年に公開されて、歌って踊るエンタメてんこ盛りのインド映画ブームを巻き起こしたのが「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1995年)だったが、その先駆けとなったのが本作だった。
今から30年前の映画なので素朴感あふれて映像もシンプルだが、歌と踊りは素朴さゆえにインドの伝統音楽が息づいている感じがする。
大道芸人にして予言者でもあり、この映画の狂言回し的役割りをするジャイを演じたナーナー・パーテーカルが強く印象に残った。
彼は路上で人を集め、口からでまかせのセリフをまくしたてるだけで人々は大喜びし、次々とカネを出す。口先だけで金儲けするのだから、実に見事な口上師だ。
彼を取り巻く下町の住民たちも善良な感じで、ジャイの予言が百発百中なのでそのたびにみんな狂喜乱舞する。
映画の最後、出世したいばっかりに甘い汁を吸おうとする会社幹部らに加担してしまった主人公のラジュー。ついに間違いに気づいて弱い者の味方につくが、好きになった女性レヌにはフラれてしまったと思い、レヌに別れを告げて失意のうちに去っていくシーン。
「ほら、トボトボ去っていくラジューが振り向いて、レヌと目と目が合ったら、2人はきっと結ばれるよ」
ジャイがそう予言すると・・・。
ついでにその前に観た映画。
民放のBSで放送していたアメリカ映画「マイ・ライフ」。
1993年の作品。
監督・脚本ブルース・ジョエル・ルービン、出演マイケル・キートン、ニコール・キッドマン、ハイン・S・ニョール、クイーン・ラティファほか。
ロサンゼルスで広告代理店を経営するボブ(マイケル・キートン)は、医師から末期がんの宣告を受ける。彼は妻のゲイル(ニコール・キッドマン)と、彼女のおなかの中にいる子どもにメッセージを残そうと、ビデオカメラに自分の生い立ちなどを語り始め、残り少ない余生を一生懸命、生きようとする。
ニコール・キッドマンが若い。この映画公開のとき26歳。
彼女は映画初出演が1983年、16歳のときというから、かなり若いときから活躍していたようだが、本作はいわゆる型通りの若くて美人で夫に尽くす奥さんという感じの役どころ。
しかし、何がきっかけかはわからないが、やがてとても個性的演技で演技派女優と呼ばれるようになって変身していく。
民放のBSで放送していたフランス・ベルギー・ドイツ合作の映画「アンナの出会い」。
1978年の作品。
原題「LES RENDEZ-VOUS D’ANNA」
監督シャンタル・アケルマン、出演オーロール・クレマン、ヘルムート・グリーム、マガリ・ノエルほか。
映画監督のアンナは、最新作のプロモーション活動のためにヨーロッパの各地を旅して巡っている。
ドイツの地方都市を訪れたアンナは、小学校の男性教師と知り合い体を重ねるが、それ以上の深い関係にはならずそのまま別れる。
その後、アンナはベルギーのブリュッセルに住む母とその友人に会い、自らのレズビアン経験を告白して母を動揺させる。そして、現在暮らしているパリへと戻り、年上の恋人ダニエルとホテルで逢引きする・・・。
長回しと左右対称の構図を多用し、様式性を際立たせることで、登場人物の内面に深く入り込もうとしているように見える。それによって人間の孤独と空虚を浮かび上がらせるのがねらいなのか。
とても静謐で内省的な展開に、まるで小説を読んでるような雰囲気の映画。
今までに出会ったことのない映画手法につい引き込まれて、何だか不思議な気持ちで映画を見終わった。
シャンタル・アケルマン監督はベルギー出身の監督。1950年生まれというから今年73歳のはずだが、2015年に65歳で亡くなっている。
評伝によれば、ユダヤ人の両親を持ち、貧困の中で育った彼女の父親は12歳のころから働き、18歳で自らの工場を持つまでになる。母方の祖父母はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で亡くなり、彼女の母親は生き残ったという。
高校に進学したもの学校になじめず、映画館に入り浸りの生活を送る。15歳のとき、ジャン=リュック・ゴダールの「気狂いピエロ」を観たことが、映画監督を志すようになるきっかけになって、18歳のとき、自ら主演を務めた短編「街をぶっ飛ばせ」を初監督し、映画の道へ。
25歳のとき、平凡な主婦の日常を描いた3時間を超える「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」を発表、世界中に衝撃を与えたという。