ふだんは日本酒だが、たまに飲むワイン。
イタリア・トスカーナの赤ワイン「ヴィラ・アンティノリ・ロッソ(VILLA ANTINORI ROSSO)2018」
1385年からの歴史を誇るイタリア最古のワイナリー、アンティノリの赤ワイン。
トスカーナ地方原産のサンジョヴェーゼを主体に、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、プティ・ヴェルドなどをブレンド。
タンニンに加えて果実味とスパイシーさがほどよく交じり合いバランスのとれた味わい。
ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ・イギリス合作の映画「633爆撃隊」。
1964年の作品。
原題「633 SQUADRON」
監督ウォルター・グローマン、出演クリフ・ロバートソン、ジョージ・チャキリス、マリア・パーシー、ハリー・アンドリュース、ドナルド・ヒューストンほか。
フレデリック・E・スミスの原作を「大脱走」のジェームズ・クラベルと「カサブランカ」のハワード・W・コッチが共同で脚色した戦争ドラマ。
第二次世界大戦末期の戦局が大詰めとなった1944年。イギリス空軍はノルマンディ上陸作戦に先駆けて制空権を握るため、ドイツ軍の燃料工場の破壊が急務だった。特命を受けた633爆撃隊だが、そこはノルウェーのフィヨルドの奥にあり、巨大な断崖に守られた難攻不落の地であった・・・。
「ウエスト・サイド物語」(1961年)でプエルトリコ系の不良の役をしたジョージ・チャキリスが、本作ではノルウェーのレジスタンスの役で出ていた。(本人はギリシャ系のアメリカ人)。
見ているうちに、本番の爆撃に備えて、攻撃目標がノルウェーのフィヨルドの奥の奥に隠された場所にあるため、爆撃機が谷間を縫って攻撃するための猛特訓が描かれていて、どこかで見たことあるなーと思ったら去年の暮れ公開されたトム・クルーズ主演の「トップガン マーヴェリック」とそっくりだった。
本作は、凝った特撮で知られる映画で、クライマックスの場面はジョージ・ルーカスに影響を与え、「スター・ウォーズ」にも参考にされたという。「トップガン マーヴェリック」も、「633爆撃隊」のアイデアを拝借してつくられたのは間違いない。
その意味で本作は映画史に残る伝説の映画だった。
映画の“主役”となる爆撃機は、デ・ハビランド社というイギリスの航空機メーカーが開発した「モスキート」と呼ばれる双発の爆撃機で、何と「木製」の飛行機だったという。
1930年代に新型の高速双発爆撃機として開発され、主にイギリス空軍で運用されたが、エンジンやプロペラなどを除き、燃料タンクも含めてほとんどの部位に木材が使われた。
木材のほうが表面を平滑にできるため、金属製より空気抵抗を軽減できる上、木製ゆえにレーダーに察知されにくいという利点もあったという。ステルス機のハシリみたいな飛行機だったようだ。
木製で軽くてスピードがあって、レーダーをもすり抜けるというので「モスキート(蚊)」という名前だったのだろうか。
実は木製の「モスキート」が活躍しているという情報は日本にも届き、第二次大戦末期、日本の海軍も艦上爆撃機の木製化を計画した。軍の要請を受けて木製機づくりに取り組んだのが松下幸之助の「松下飛行機」だった。7機の試作機を完成させ、「明星」という名前で試験飛行に漕ぎ着けたものの、1機が空中分解するなどして結局、実用化にはほど遠いまま終戦を迎えたという。
ついでにその前に観た映画。
民放のBSで放送していたイタリア映画「ほんとうのピノッキオ」。
2019年の作品。
原題「PINOCCHIO」
監督マッテオ・ガローネ、出演フェデリコ・エラピ、ロベルト・ベニーニ、ジジ・プロイエッティ、ロッコ・パパレオ、マッシモ・チェッケリーニ、マリーヌ・ヴァクトほか。
ディズニーのアニメ「ピノキオ」は子ども向けの冒険ファンタジーだが、原作の児童文学「ピノッキオの冒険」に近い形で映画化したダークファンタジー。
貧しい木工職人のジェペット(ロベルト・ベニーニ)が丸太から作った人形が、命を吹き込まれたようにしゃべり始める。ピノッキオ(フェデリコ・エラピ)と名づけられたそのやんちゃな人形は、ジェペットのもとを飛び出し、森の奥深くへと分け入っていく。
「人間になりたい」と願うピノッキオは、道中で出会ったターコイズブルーの髪を持つ心優しい妖精(マリーヌ・ヴァクト)のいいつけも、おしゃべりコオロギの忠告にも耳を貸さず、ひたすら命がけの冒険を続けるが・・・。
原作はイタリアの作家カルロ・コッローディ(1826-1890年)が1881年に執筆した児童文学の傑作「ピノッキオの冒険」。原作では貧困や人間の醜さ、欲望の罪深さを示す描写がふんだんに盛り込まれているが、1940年にディズニーによってつくられたアニメ「ピノキオ」は、社会風刺の部分は削ぎ落とされ、ピノキオは無邪気な性格に変更されて夢と希望にあふれた冒険物語につくりかえられた。
原作により近い描き方をしているのが本作で、ジェペットにピノッキオと名づけられかわいがられるも、束縛は嫌だとばかりに逃げ出してしまう。自由を得たものの自らの欲望に赴くまま、悪人には騙され、そのたびに善意ある人に助けられるものの、何度も欲望に負けて、とうとう一匹のロバになってしまう。
また、ジェペットの描き方も、ディズニーアニメでは質素ながらも善良な木工職人となっているが、本作ではジェッペットは、仕事もなく誰からも相手にされず、1片のパンにもありつけないような貧困の中であえぐ様子が描かれている。
おもしろかったのが、ピノッキオが捕らえられて裁判にかけられるときのゴリラ裁判官の描き方だ。ゴリラ裁判官はいかにも偽善者ふうで、「悪いことはしてません」というと罪になり、「ぼくは悪者です」というと「それならよろしい」と無罪放免にしてしまう。
詐欺師や抜け目のない連中から成り立っている現実の社会を揶揄するように描いている。
原作ではピノッキオを騙すキツネとネコが出てくるが、本作ではそれが人間として登場し、人間ゆえの欲望の罪深さや醜さが際立っていて、2人の役者が好演していた。
NHKBSで放送していたフランス映画「地下鉄のザジ」。
1960年の作品。
原題「ZAZIE DANS LE MÉTRO」
監督ルイ・マル、出演カトリーヌ・ドモンジョ、フィリップ・ノワレ、カルラ・マルリエ、ビットリオ・カプリオーリほか。
大昔に観てるはずだが、どんな映画だったかまるで忘れていた。あらためて観ると、60年以上も前の映画なのに何てシュールで斬新で型破りな映画。
オレンジのセーターにおかっぱ頭のおてんば少女ザジと大人たちが巻き起こす大騒動を、風刺を効かせて描くドタバタ喜劇。
母親に連れられ叔父のいるパリに遊びに来た10歳の少女ザジ(カトリーヌ・ドモンジョ)。母親がパリに来た目的は恋人に会うためで、ザジを弟(つまりザジの叔父さん)であるガブリエル(フィリップ・ノワレ)に預けると、「じゃ、あさっての朝ね」と手を振って恋人とともにいなくなってしまう。
ザジはパリで地下鉄に乗るのを楽しみにしていたのだが、あいにく地下鉄はストライキ中。仕方なくザジはパリの街を見物に出かけるが・・・。
コマ落としやカットバック、早回し、ロングショットなどさまざまな手法を駆使した斬新な映像が楽しい。
監督のルイ・マルは25歳のときにモーリス・ロネ、ジャンヌ・モロー共演の「死刑台のエレベーター」(1958年)をつくった。「死刑台のエレベーター」はジャズの帝王ことマイルス・デイビスが初めて映画音楽を手がけたことでも知られるが、マイルスはジャズファンでもあったルイ・マルの当時のアシスタントの紹介でマルと出会い、映像を見ながら即興で音楽をつくったという。
「死刑台のエレベーター」の2年後につくられたのが「地下鉄のザジ」だったから、マルは当時まだ27歳の若さだった。
若さゆえにできたシュールで斬新な映画だったのかもしれない。
ザジ役のカトリーヌ・ドモンジョは本作が映画デビューで、300人の応募者の中から選ばれて出演。当時12歳だったという。映画は大ヒットしていきなりスターになるが、その後、数本の作品に出演するも1967年、19歳で映画を引退。教師になる道に進んだという。