イタリア・トスカーナの赤ワイン「サン・ポーロロッソ・ディ・モンタルチーノ(SAN POLO ROSSO DI MONTALCINO)2020」
(写真はこのあと牛のサーロインステーキ)
ヴェネト州のアレグリーニが2007年からトスカーナ州・モンタルチーノで手がけているワイナリー、サン・ポーロのワイン。
サンジョヴェーゼ・グロッソ100%で、品のよい味わい。
ワインの友で観たのは民放のCSで放送していたフランス・イタリア合作のアニメ映画「シチリアを征服したクマ王国の物語」。
2019年の作品。
原題「LA FAMEUSE INVASION DES OURS EN SICILE」
監督・グラフィックデザイン、ロレンツォ・マトッティ、脚本トマ・ビデガン、ジャン=リュック・フロマンタル、ロレンツォ・マトッティ、音楽ルネ・オーブリー、アニメ制作プリマ・リネア・プロダクションズ。
幻想的、不条理な作風からイタリアのカフカと称されることもあるイタリアの作家、画家、詩人でもあるディーノ・ブッツァーティが1945年に発表した名作児童文学「シチリアを征服したクマ王国の物語」(福音館書店刊)が原作のアニメ。
旅芸人のジェデオンと弟子のアルメリーナは、山越えの途中で吹雪に見舞われ、洞窟へ逃げ込むと、穴の奥からあらわれたのは老いたクマだった。クマに食べられては大変と、ジェデオンは古くから伝わるお話を語り始める。それは「シチリアを征服したクマ王国の物語」。
はるか昔、氷で閉ざされた高い山の奥に平和なクマの王国があった。ところがある日、クマの王レオンスの息子トニオがハンターに捕らえられてしまう。レオンス王はわが子を救うためクマたちを引き連れて山を降り、人間が住む平地をめざす。
クマたちの行く手には、残忍な大公や化け猫、人食い鬼、幽霊、魔法使いなど数々の難敵が待ち受けていた・・・。
今までのアニメでは見たことのない独特のタッチと造形、色使いが新鮮な作品だった。
グラフィックデザインも担当した監督のロレンツォ・マトッティは、大学で建築を学んだあと、新聞や雑誌でイラストを描き、82年にバンドデシネ(漫画)作家としてデビュー。絵本の世界からアニメへと活動の場を広げ、本作が初の長編アニメという。
ブッツァーティの原作は、ブッツァーティ自身がイラストを描き、ファンタジックなエピソードが次々と展開されていて、ヨーロッパで半世紀以上にわたって読み継がれているロングセラーの作品。アニメ化にあたってマトッティは次のように語っている。
「ブッツァーティの描いた挿絵に私自身の味つけをした。絵本やおとぎ話の雰囲気を大切にするため、現実的なものに見えないよう心がけた」
それであの独特の造形が生まれたのだろうか。
しかもこの作品、レオンスがシチリアにやってきて息子のトニオを救い出し、暴君であるシチリアの大公をやっつけて、代わってレオンスがシチリアの王となり、クマと人間の平和な時代が訪れて、めでたし、めでたし、で終わるかと思ったら、旅芸人が物語を終えようとするとジッと聴いていた老クマは「物語にはまだ続きがあるんじゃよ」と今度は老クマが語り出す。
実は本作は2段式ロケットみたいな構成になっていて、後編こそが本題で、息子への愛により暴政を終わらせたレオンスはじめクマたちは、自分たちがシチリアの支配者になると次第にその権力は腐敗していって、王宮には権謀術数が渦巻くようになっていく・・・。
つまり、どんなに始めは親子愛に満ちて高潔であっても、一度権力を握ると、そこには腐敗し堕落していく危険が常にあることをこの作品ではいっているようなのだ。
クマの物語かと思ったら、実は同じ過ちを繰り返してばかりいる人間社会への痛烈な風刺を込めた作品といえるかもしれない。
ついでにその前に観た映画。
民放のCSで放送していたイギリス・アメリカ合作の映画「GOAL!」。
2005年の作品。
監督ダニー・キャノン、出演クノ・ベッカー、スティーヴン・ディレイン、アンナ・フリエル、アレッサンドロ・ニヴォラ、マーセル・ユーレスほか。
プロのサッカー選手を夢見る少年の成長を描く3部作の第1作で、FIFA(国際サッカー連盟)が公認し制作を全面協力した映画。
メキシコの貧しい家庭に生まれた少年サンティアゴ(クノ・ベッカー)は、米ロサンゼルスに家族とともに不法移民でやってきて、父親の仕事を手伝いながらサッカーの才能を発揮していく。
20歳になった彼はスカウトの目にとまり、イギリスの名門チーム、ニューカッスル・ユナイテッドの入団試験を受けるチャンスを得る。
しかし、父親は大反対。イギリスに行くための旅費もないサンティアゴだったが、祖母は「お前にはこのチャンスをつかむ資格がある」と、父親には内緒で自分の貯金や大事なものを質に入れて旅費を工面してくれ、サンティアゴはイギリスに旅立つ。
しかし、彼にはさまざまな試練が待ち受けていた・・・。
この映画はFIFAが全面協力しているので、実際のサッカーの試合やチームの映像が使われているし、サンティアゴが所属することになるチーム名も実際のチーム、イングランドプレミア・リーグのニューカッスル・ユナイテッドだった。
ちょい役だけど、ベッカムやジダンなどのスター選手も実名で出ている。
映画が公開されたのは欧米では2005年9月で、ドイツで開催されたワールドカップのちょうど1年前。日本でも開催2カ月前の06年5月に公開されていて、ワールドカップを盛り上げるための“前宣伝映画”といえそう。
それでもFIFA公認だけにリアルさは十分で、サクセスストーリーとわかってはいても、ついつい見入ってしまう作品だった。