善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+METオペラ「椿姫」ほか

イタリア・プーリアの赤ワイン「フィキモリ(FICHIMORI)2021」

冷やしておいしい赤ワインというので、冷蔵庫で半日冷やして飲む。

ワイナリーのトルマレスカは、イタリア全土に10以上のワイナリーを所有するアンティノリがイタリア南部のプーリア州で手がけるワイナリー。

イタリア南部で古くから栽培されている黒ブドウのネグロアマーロを主体に、シラーをブレンド

「フィキモリ」とは「黒いイチジク」の意味だとかで、ラベルにも黒いイチジクが描かれている。その名の通り、フルーティーで軽やかな味わい。

 

 

ワインのあと観たのは、民放のBS(BS松竹)で放送していた「METライブビューイング《椿姫》」。

米国を代表するオペラハウス、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(MET)でのオペラ公演を映像と音響で収録し、映画館で上映したもの。

収録日は2012年4月14日。

「椿姫」はヴェルディが19世紀半ばに発表したオペラ。

ヒロインを演じるのは、フランスのリヨン生まれで、現代最高のソプラノのひとりといわれたナタリー・デセイ。出演はほかにマシュー・ポレンザーニ、ディミトリ・ホヴォロストフスキーなど。

指揮はファビオ・ルイージ、演出ヴィリー・デッカー。

指揮者のルイージは1959年イタリア・ジェノヴァ生まれ。今年9月から3年契約でNHK交響楽団の首席指揮者になることが決まっている。

 

19世紀半ばのパリ。高級娼婦ヴィオレッタ(ナタリー・デセイ)は、パトロンのお金で贅沢な暮らしを楽しむ一方で、自堕落な生活がたたり、結核を病んでいた。田舎出の青年アルフレード(マシュー・ポレンザーニ)は、そんな彼女に一途な愛を捧げ、夜の世界から足を洗うよう口説く。その情熱に負け、アルフレードと愛の生活に入るヴィオレッタ。だが、息子が娼婦に騙されていると思い込んだアルフレードの父ジェルモン(ディミトリ・ホヴォロストフスキー)は、黙って身を引くようヴィオレッタに迫るのだった・・・。

 

デセイが序曲の始まりとともに舞台に立ち、エンジン全開。迫真の演技で、むろん歌声もすばらしい。寝ころんだりしたままで歌っていて、よくもあんな姿勢からも美しいソプラノを響かせるものだと感心するばかり。

 

ただし、どうもこの日は本人によれば調子がよくなかったみたいで、幕間のインタビューで「高音が上がりきらなかったわ」といっていた。

実際、このときの公演でデセイは不調を訴えていて、何回かは韓国人のソプラノ歌手を代役に立ってもらっていて、ライブビューイングの撮影の日だけはと無理して出てきたようだ。

デセイはそれまでに何度かノドの手術をしていて、そのたびに変わる声質をうまく利用して新しい演目にチャレンジしてきたという。「椿姫」のヒロインは何度も演じてきたのだろう。不調など感じさせないぐらいのすばらしさで、高く響く高音でなくとも、まるでセリフをしゃべるような美しく味わいのある歌声が、観客の心に沁みていってるみたいだった。

 

このときデセイ47歳。しかし、やはり不調はホンモノだったようで、彼女は49歳のとき、オペラの舞台からは引退し、その後は歌も歌うけれど女優としても活躍しているという。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「キャッチ22」。

1971年の作品。

監督マイク・ニコルズ、出演アラン・アーキンマーティン・バルサムバック・ヘンリーリチャード・ベンジャミンジョン・ヴォイト、ポーラ・プレンティス、アーサー・ガーファンクル、アンソニー・パーキンスオーソン・ウェルズほか。

 

アメリカの現代小説家ジョセフ・ヘラーの1961年の同名小説の映画化。

第2次大戦中のイタリアのとある小島。米陸軍航空軍の爆撃部隊に配属されたヨサリアン(アラン・アーキン)は、自分は精神障害(=狂気)であることを理由に除隊を申し入れる。ところが、上官は「自分が精神障害だといえるのは、まだ精神障害ではない証拠だ」と取り合ってくれない。ヨサリアンのほかにも、部隊は上官も含め戦争の影響で精神に異常をきたした者ばかり。ヨサリアンは一日も早い除隊を求めて日々ドイツ軍人知に爆撃を繰り返すが、除隊に必要な爆撃回数は、到達するごとに増えていく・・・。

 

題名の「キャッチ22」とは、「キャッチ」は落とし穴や罠のことで、「22」は軍隊規則第22項を差していて、本作の原作小説が有名になって以来、日常会話の中で「どっちに転んでも勝算のない不合理な状況」「(どうもがいても)動きがとれない矛盾(した状況))をいうときに使われる言葉となっているという。

軍規22項によれば「精神に異常をきたした者は、自ら診断を願い出て異常と診断されれば除隊できる」となっている。ところが、先あげた上官によれば「自分が精神障害だといえるのは、まだ精神障害ではない証拠だ」というわけなので、たとえ部隊に精神異常者ばかりが集まっっていようと、全員が正常ということになって、勇んで出撃していかなければならないことになる。

これが「キャッチ22」というわけで、結局のところ何が何でも突き進んでいく、不条理で愚かしい戦争をパロディ化して描いたのが本作。

 

監督のマイク・ニコルズは「卒業」でアカデミー監督賞。

出演陣がなかなか充実している。主演のアラン・アーキン、脇役のマーティン・バルサムバック・ヘンリーなどのほか、ジョン・ヴォイトは「真夜中のカーボーイ」が鮮烈で、娘はアンジェリーナ・ジョリー。アーサー・ガーファンクルはサイモン&ガーファンクルの相方でシンガーソングライターでもある。アンソニー・パーキンスといえば「サイコ」、オーソン・ウェルズといえば「市民ケーン」「第三の男」。

 

映画では実物のB‐25爆撃機が登場している。メキシコで18機のB‐25を飛ばしてロケが行われたというが、なかなかリアルな迫力があった。

B‐25は第二次大戦中、アメリカ陸軍航空軍や海軍で運用され、日本本土に初空襲したのが1942年4月18日、B‐25爆撃機16機による東京、川崎、横須賀、名古屋、神戸などへの空爆だった。そして、より大型で長距離飛行が可能なB‐29戦略爆撃機による日本本土空襲は44年6月が最初だったという。