善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「タップ」「アメリ」ほか

チリの赤ワイン「エミスフェリオ・カベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルヴァ(HEMISFERIO CABERNET SAUVIGNON)2019」

メインの料理は分厚い牛サーロインステーキ(写真は調理前)

スペインのトーレスがチリで手がけるワイン。

「エミスフェリオ」とは「半球」を意味し、南半球に位置するチリのワインであることを表している。カベルネ・ソーヴィニヨン100%。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「タップ」。

1989年の作品。

監督・脚本ニック・キャッスル、出演グレゴリー・ハインズ、サミー・デイヴィスJr、スザンヌ・ダグラス、ジョー・モートン、アンソニー・ウィリアムスほか。

 

刑務所帰りの落ちぶれたタップ・ダンサーが、かつての友人・恋人・師匠らの助力を得て再びダンサーとしてカムバックするまでの物語。

天才タップダンサーの父のもとで子どものころからタップを仕込まれたマックス(グレゴリー・ハインズ)だったが、裏社会に足を踏み入れてしまい、刑務所へ送られる。服役中に再びタップへの情熱を取り戻した彼は、出所して再び古巣のNYへ。

かつての知人や恋人たちの支えの中、新しいタップを生み出してゆくが・・・。

 

あらゆる音がタップの源泉だった。

夜間の道路工事のダダダダと鳴り響く音は騒音に非ず。その音はリズムを刻み、マックスのリードで人々がいっせいにタップを始めるシーンが圧巻だった。

ブロードウェイの演出家から理不尽なことをいわれ、自棄っぱちになって再び泥棒家業に手を染めようとしたそのとき、水道の蛇口からポタッポタッと落ちる音。それはタップの音で、正気を取り戻すマックス。

最後のタップがこれまた度肝を抜く。

今まで観たタップの映画で最高だったのはジーン・ケリーだったが、グレゴリー・ハインズのタップも実に見事だった。

 

タップはもともと、奴隷だったアメリカの黒人たちのコミュニケーションの手段だったという。アフリカから奴隷船で連れてこられた彼らは、楽器を使った演奏や、自由な会話も許されなかった。足を踏みならすことで自分の気持ちを相手に伝えていたのだという。

そういえば、以前、アイルランドを旅したとき、ダブリンでリバーダンスの公演を観たが、体幹や腕を使わず足の動きだけで踊るアイリッシュダンスの一種だった。なぜ足だけで踊るかというと、当時、イギリスの支配下にあったアイルランドでは、教会からのお達しで、両手を自由に使って踊ることは公序良俗に反するとかで、御法度になっていたという。そこで人々が編み出したのが、上半身は動かず足だけで踊るアイリッシュダンスだったという。

権力者への抵抗のあかしとしてのダンスというわけで、アメリカのタップの起源とどこか似ているところがある。

音楽とは、その人にとっての自己表現のひとつなのだから、いかに抑圧されようと、いや抑圧されればされるほど、ジッとしてはいられないのだろう。

 

サミー・デイヴィスJrが元気な姿を見せていた。

彼も20世紀のアメリカを代表するタップダンサーであり、歌手であり俳優であり、ミスター・エンターティナーと呼ばれた人だった。

しかし、この映画のときすでにサミーはがんに冒されていた。それも歌手の命ともいえるのどのがん、喉頭がんだった。がんを宣告されたとき、のどの一部を摘出する手術を受けると声が出なくなってしまうので,化学療法と放射線療法でのどを温存したが、翌年5月に亡くなった。64歳だったという。

映画「タップ」はとサミーの遺作となった。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたフランス映画「アメリ」。

2001年の作品。

原題「LE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN」

監督・脚本ジャン=ピエール・ジュネ、出演オドレイ・トトゥマチュー・カソヴィッツ

リュファス、ロレーラ・クラヴォッタほか。

 

少女時代のアメリは、学校に行くことなく家庭で教育を受けた。それはわが子の体を心配するあまりの父親の配慮からだったが、そのため彼女はまわりに友だちがいないまま育つ。やがて母親を事故で亡くし、孤独の中で、想像力の豊かな、しかし周囲と満足なコミュニケーションがとれない不器用な女性に育っていった。

22歳となったアメリは実家を出てアパートに住み、モンマルトルにある元サーカス団員経営のカフェ「カフェ・デ・ドゥ・ムーラン」で働き始める。

自分の住むアパートで偶然発見した宝箱。それ持ち主に返したことをきっかけに、アメリは誰かを少しだけ幸せにすることに喜びを見出すようになるが・・・。

 

原題の「LE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN」とは「アメリ・プーランの素晴らしい運命」という意味らしい。

 

レトロなパリの雰囲気がとてもよく描かれているが、デジタル処理により彩色した結果という。

とくに、最後の方で、アメリが恋人となった青年と一緒にバイク(自転車にエンジンを取り付けたようなモペット)に乗ってパリの街を走る様子は、まるでおとぎ話の世界のようだったが、あれもデジタル技術のなせるワザだろう。

監督のジャン=ピエール・ジュネは「エイリアン4」の監督でもあり、「エイリアン」のおどろおどろしい特殊技術をおとぎ話ふうに応用するなんて、結局、技術は使い方次第なんだね。

 

民放のBSで放送していたアメリカ映画「マン・オン・ザ・ムーン」。

1999年の作品。

監督ミロス・フォアマン、出演ジム・キャリーダニー・デヴィートコートニー・ラヴポール・ジアマッティほか。

 

伝説のコメディアン、アンディ・カフマンの生涯を描いたコメディ・ドラマ。

さいころから外で駆け回って遊ぶことより、自分の部屋でたくさんの観客を想像しながらお気に入りのぬいぐるみとショーを繰り広げるのが大好きだったアンディ(ジム・キャリー)。大人になり、夢をあきらめきれずに売れないコメディアンとしてライブハウスを転々としていたが、ある日、観客席が爆笑の渦に。

それが有名なプロモーター、シャピロ(ダニー・デヴィート)の目に留まり、人気TV番組「サタデー・ナイト・ライブ」にゲスト出演する。彼の芸風は度を越しただましや、からかい、悪ふざけが多く、それが人気になり珍芸・奇芸で注目を集めるようになるものの、やがてアンディは自分ががんに侵されていることを知る・・・。

 

アンディ・カフマンは実在の人物で、1984年、がんのため35歳の若さで亡くなるが、亡くなる直前まで病名を明かさずに舞台や番組に出ていたため、突然の死に対しても“彼一流の悪趣味なギャグ”と考えて信じなかった人も多かったという。

映画のタイトル「マン・オン・ザ・ムーン」は、アメリカのバンドR.E.M.が1992年に発表したアンディ・カフマンを歌った曲の題名からとられた。

世間をだますことでファンから喝采を浴びたアンディ・カフマンと、「アポロ11号は本当に月面着陸したのか?」という世の疑いをダブらせたような歌になっている。

何にでも疑いを持つ、それは大事なことなんだが、アメリカでは今も、アポロ11号による月面着陸は米ソの宇宙競争に勝つために捏造されたウソと考える人が多くいるという。科学を否定する「陰謀論」が広まっている国でもあり、月面着陸にも疑いの目で見る人が多いのだろうか。