善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「スタンピード」ほか

イタリア・トスカーナの赤ワイン「アルパ・シラー(ARPA SYRAH)2020」

(写真はこのあと牛薄切り香味野菜乗せ)

イタリアの老舗ブランド「サルヴァトーレ フェラガモ」がトスカーナ州で手がけるワイナリー、イル・ボッロの赤ワイン。

イル・ボッロの畑が位置するのはトスカーナの中心地、キャンティ・クラシコ地区。土壌は主に砂岩の岩盤に石灰質の堆積物で、約45haの畑ではメルロやシラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、サンジョヴェーゼ、プティ・ヴェルド、シャルドネを栽培している。

きのう飲んだワインはシラー100%。

さらっとした口当たりながらもしっかりとした余韻。

 

ワインの友で観たのは、NHKBSで放送していたアメリカ映画「スタンピード」。

1965年の作品。

原題「THE RARE BREED」

監督アンドリュー・V・マクラグレン、出演ジェームズ・スチュワートモーリン・オハラ、ブライアン・キースほか。

 

ジェームズ・スチュワートモーリン・オハラが共演した異色の西部劇。

南北戦争から20年がたった1884年、亡き夫の遺志を継いで、角のないイギリスのヘレフォード(Hereford)種の牛をアメリカに移入させようと、はるばるセントルイスの家畜売買会場へやって来たマーサ(モアリン・オハラ)と娘のヒラリー(ジュリエット・ミルズ)。

アメリカではロングホーン種という角の長い牛が主流で、角のない牛は牛同士の生存競争に負けて育たないとされていて、メス牛は乳牛として売られ、オスの牛1頭だけがテキサスの牧場に買い取られ、輸送を任されたのがサム(ジェームズ・スチュアート)だった。

サムはマーサたちとともにテキサスに向かい、ヘレフォード種の繁殖をめざす。しかし、行く手には牛の横取りを画策する悪人と、大自然の猛威が待ち構えていた・・・。

 

銃による対決もちょっとだけあるが(殴り合いはけっこう多い)、新種の牛を交配させて育てようとするカウボーイの執念の物語。

邦題は「スタンピード」。

原題のカタカナ版かと思ったらまるで違っていて、原題は「THE RARE BREED」

「スタンピード」とは牛の暴走とかの意味らしく、たしかにそういうシーンはあるが、そんなことはこの映画の瑣末なことでしかない。

「RARE BREED」つまり「希少品種」がこの映画のテーマだ。

 

あの映画の当時、肉用種として主流だったロングホーン種は、もともと17世紀後半にメキシコからテキサスに持ち込まれた牛が野生化したもので、バイソンなどの在来種を押しのけて繁殖を広げていった。南北戦争後はこの野生の牛が簡単に手に入るため家畜化され、人々の生活を支えるようになったという。

そこへ、イギリスから持ち込まれたのがヘレフォード種の牛。イングランド北西部のヘレフォード州原産で、耐暑性、耐病性が高く、放牧にも適しているというので広く普及するようになり、今ではアメリカ南部などでは肉牛の主流をなしているという。

つまり、ヘレフォード種の最初の繁殖をめぐる人々の不屈のたたかいを描いたのが本作というわけだ。

映画では、ビンジと名づけられたオス牛が出てくるが、頭全体と胸にかけてが真っ白で、なかなかカワイイ。娘のヒラリーが口笛でイギリス国歌(女王陛下万歳)を吹くとちゃんとついてくる。よく躾けられているのか、名演技?だった。

 

ちなみに日本にも昭和40年代を中心に年間250~1000頭、合計4000頭あまり輸入され、北海道、青森県岩手県熊本県に導入されたという。

今もどこかの牧場へ行けば、白い頭のヘレフォード種の牛と出会えるだろうか。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主」。

2013年の作品。

監督・脚本スティーブン・ソマーズ監督、出演アントン・イェルチン、アディソン・ティムリン、ウィレム・デフォーほか。

 

オッド・トーマス(アントン・イェルチン)はダイナーで働く20歳のコック。彼は“オッド(奇妙)”という名前の通り死者の魂(幽霊)を見ることができる特殊能力を持ち、幽霊の通報を受けて未解決殺人事件の犯人を捕まえて警察に引き渡す毎日だった。

だが、オッドの能力を知っているのは警察署長・ワイアット(ウィレム・デフォー)や、ショッピングモールのアイスクリーム屋で働く恋人・ストーミー(アディソン・ティムリン)を含むごく少数の人間に限られていた。

ある日、オッドは凄惨な殺人事件を予知して群がる怪物ボダッハ(オッドにしか見えない)が街に群がっていることから大量殺人が起きることを予知する。だが、犯人が誰なのか、皆目わからない・・・。

 

製作費を巡る訴訟が起きた影響でアメリカでは劇場公開されないままとなり、日本でも劇場上映は1週間だけの限定公開(それも関東・近畿地区のみ)というから、何だかかわいそうな映画。

しかも主役のアントン・イェルチンは、この映画から3年後の27歳のときに事故で亡くなっていて、死後、彼は嚢胞性線維症という根本的治療法のない難病を患っていたことが明らかとなっている。

警察署長役のウィレム・デフォーは、その風貌から悪役イメージが強かったが、本作ではなかなか頼れる署長役。実は彼は悪人も善人も、主役も脇役もこなし、大作からB級映画まで出演する“七変化”の役者らしい。

そういえば「永遠の門 ゴッホの見た未来」(2018年)では画家・ゴッホになりきっていた。